トップギルド職員の【鑑定士】、不当解雇されたので冒険者として成り上がります。

58話

「ーー【聖水せいすい】とは、大量の魔素まそを含む水のこと・・・」


【鑑定士かんていし】トビが【聖水】について鑑定すると、この説明があった。


「大量の魔素を含む水なら、この街でも手に入りますよ」


トビが【聖水】について話すと、受付嬢がそう言う。


トビにも心当たりがある。


「泉の水ですね」


そう、魔物まものを寄せ付けないようになっている泉には、大量の魔素を含む水がある。


それも自然にできたものだ。


「その通りです。
あの水があれば呪いも解けるはずです」


まさか【聖水】が泉の水と同じ効果を持っているとは思わなかった。


「すぐに取ってきます」


「わかりました。
私は、その間に回復薬と解毒薬を用意しますね」


【暗殺者】カナタが既に危険な状態なのはわかってるので、トビはすぐに行動を起こす。


留守の間、カナタを受付嬢が面倒を見てくれる。


ーー泉に向かう間にトビは考える。


（【聖水】と同じ効果の水があってよかった・・・）


多分、カナタがこの街の奴隷として売られたのは、この街に教会がなく【聖水】が手に入らないことを知っていたからだと思う。


仮に呪いに気付いた者がいたとしても救えなかった。


カナタを売った者は完全に治させる気はなかったはずだ。


「ここだね」


考え事をしていると、泉に着いた。


トビはこれまで泉の周辺はよく探索していたが、泉自体を詳しく見たことがないのを思い出す。


泉の水は透き通るように綺麗だ。


大量の魔素が含まれるために水の中に生き物なども存在していない。


「待っててください、カナタさん」


トビは用意していたビンに泉の水を汲み、すぐにギルドへと引き返した。


◇◇◇


「ーー泉の水を持ってきました」


「こちらも用意できていますよ」


トビが泉の水を持ってギルドに戻ってくると、受付嬢も回復薬と解毒薬を用意してくれていた。


呪いが解けた後、すぐに怪我と毒の治療をするためだ。


「では、この水を飲ませますね」


「はい」


泉の水は【聖水】と効果が同じはずだから、大量の魔素を体内に取り込むことで呪いを打ち消し、解除する。


「カナタさん、この水を飲んでください。
そうすれば、苦しめている呪いが解けます」


トビは苦しそうなカナタに精一杯介抱しながら水を飲ませる。


「ゴクッ・・・」


すると、なんとか水を飲みこんでくれた。


「これで直に呪いが解けますね」


「はい」


魔素が体内を循環すれば、呪いも消えるはずだ。


トビは鑑定スキルでカナタの様子を見守る。


ーーシュゥゥゥゥゥッ


しばらくすると、カナタの中から黒いオーラが消えていく。


「呪いがなくなったみたいです」


呪いが消えた証拠だ。


鑑定スキルでカナタの能力値ステータスを見ると、呪いの文字も消えていた。


「では、早速処置をしましょう」


呪いが無くなったことで、すぐに怪我と毒の治療をする。