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56話

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「本当にこの奴隷でよろしいのですか?」


奴隷どれい商人である男性が、怪我を負い、弱り切っている奴隷ーー【暗殺者】カナタを本当に雇うのかと聞いてくる。


「はい、手続きをお願いします」


鑑定士かんていし】トビは、カナタを今の状況から救ってあげたいと思ってしまったのだ。


「わかりました。
では一度、受付の方に戻りましょう。
そこで奴隷契約を行ないます」


「はい」


トビは男性の指示に従い、一度この場所から出ることになった。


◇◇◇


「ーー手続きの前に、奴隷契約の説明をしますね」


受付まで戻ると男性がそう話した。


「お願いします」


トビは奴隷を雇うのは初めてで、奴隷契約のやり方などは全く知らない。


「では・・・ーー」


奴隷契約とは、雇い主と奴隷の間で結ばれる契約で、奴隷が雇い主に逆らえないようにするためのもの。


その契約は、首輪型の特殊なを奴隷に付けることで行なわれ、奴隷が逆らえばその首輪が罰を与える。


これによって、いくら恐ろしい奴隷であっても直接雇い主を傷付けることができないのだ。


奴隷を雇う上で必要な契約となる。


「わかりました」


自分自身を守るために必要となれば仕方がないことである。


「それで、契約料と奴隷の値段になりますが、今回雇われる奴隷は本来商品として出せる状態ではないので、奴隷としての価値はありません。
なので契約料だけになります。」


男性の言う通り、カナタは治らない怪我を負っていて動けない状態なのだから戦闘奴隷としての価値はないだろう。


そもそもトビが雇わなければ誰にも雇われていないと思う。


もしかすると、カナタを奴隷に売った者はそれを望んでいた可能性もある。


「わかりました」


「彼女を雇うのでしたら、入用が多くあると思うのでそちらに利用してください」


契約料だけで済むのは、これから掛かる薬などの費用を考慮されている。


ーーガチャッ


説明が終わったところで、男性とは違う奴隷商人がカナタを連れてきた。


他にも従業員がいたようで、契約の説明をしている間に雇う準備をしてくれていたようだ。


「では、奴隷契約を始めますね」


男性がそう言うと、魔法アイテムであるーー【奴隷の首輪】を用意していた。


奴隷契約は、その魔法アイテムに描かれている魔法陣に持ち主の血を垂らし認識させてから、奴隷の首に嵌めるだけだ。


「これでいいですか?」


トビは直ぐに少しだけ指を切り、血を垂らす。


そして、その首輪をカナタの首に嵌めた。


「はい、これで奴隷契約成立です。
これで彼女はあなたのモノです」


「ありがとうございました」


トビはそのまま、カナタを引き取ると料金を払い、奴隷商会を後にした。

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