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13話

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「ーーやるしかない」


鑑定士かんていし】トビは作戦が決まったということで、追うのに夢中になっている一体のウルフに近付く。


「はぁっ!」


トビはウルフの横から飛び出し、両手で短剣を持って振り下ろす。


ーーギャンッ


短剣は見事にウルフの体に突き刺さった。


突然現れたトビの存在にウルフはパニックになっている。


トビはそれを利用して、ウルフに馬乗りになり動きを止めることに成功した。


「よしっ!」


「っ!?」


トビが作戦通りに成功した事に喜んでいると、助けを求めていた人も急に現れたトビの存在に驚いていた。


「加勢します、早く逃げてください。
そのまま真っ直ぐ行けば泉があるので、そこまで行けば安全です」


「あ、ありがとう、助かる」


トビが早口で状況を説明すると、理解したようにその人は走っていった。


残り二匹のウルフもトビには目もくれず追っていたのでもう大丈夫だろう。


ーーガルルルルルッ


「逃がさないよ」


そして、その場に取り残されたのはトビと一頭のウルフだけだ。


ウルフは暴れてトビの拘束から抜け出そうとしてる。


だけど、トビもより一層力を込めて逃がさないようにした。


「すまないが、討伐させてもらうよ・・・」


実際の所、ウルフはトビの討伐対象ではないので討伐する意味はない。


しかし、ここで逃がせば逆にトビが襲われる可能性があるので討伐するしかなかった。


ーーガルルルルルッ


吠えるウルフの体から短剣を抜き、もう一度構える。


「ごめんね・・・」


ーーパキンッ


相手は魔物まものとはいえ、無駄な殺生をすることに躊躇ためらいがある。


せめて気持ちだけでもと、もう一度謝った。


そして、ウルフの額にある核を短剣で破壊した。


「ーーさて、街に戻ろうかな・・・」


その後、人を助けるために必要だったウルフの討伐を終え、密かに恩返しができたことに満足しながら帰路につくのだった。


◇◇◇


「ーーそ、そんなことがあったんですか!?」


街に戻ってきてから、トビの所属する冒険者ギルド【平和ピース】で、受付嬢に今日の出来事を話した。


あの後一応、泉の周辺を周回し、助けた人の姿やウルフの姿を探したが見当たらなかったので無事逃げ切れたと思う。


無事な姿が見えなかったのは残念だけど、同じこの街に暮らしているのだからいずれまた会う機会があるだろう。


「無事助けれてよかったです」


「トビさんは大丈夫ですか!?」


トビは人助けたをしたことは話したが、ウルフを討伐したことは話していなくて、追い払ったということにした。


ウルフは元々知らない魔物で、トビの冒険者ランクで相手できる魔物じゃないから心配をかけたくなかったのだ。


「僕は大丈夫です」


「よかったです。
トビさんも気を付けてくださいね。
弱い魔物でも複数出てくると危険ですから」


受付嬢の言う通り、複数の魔物に襲われる危険があるのはトビも同じである。


特に1人で活動している冒険者は気を付けないといけない。


今回助けた人も1人だったし、たまたまトビが助けに行けたからよかったものの、あのままだと危なかったと思う。


冒険者にはと呼ばれる冒険者同士でチームを組んでクエストをやっていくやり方もある。


パーティーを組めば複数の魔物に襲われても平気だ。


しかし、それができるのは冒険者が多いギルドで、トビには無理だった。


トビは危険を承知で、一人でクエストをやっていくしかないのだ。

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