トップ冒険者の付与師、「もう不要」と言われ解雇。トップ2のパーティーに入り現実を知った。

29話

「任せてください」


ミリアがそう言うと、52階層のボス【キング・スコーピオン】の攻撃を防いでいる【大剣使いのクイナ】の元へ向かった。


ーーガンッッッッッ


「くっ・・・
やっぱり重い・・・」


クイナが右手のハサミによる攻撃を防いでいる間に、ミリアが左手の攻撃を防ぐ。


軽々と防ぐクイナに対して、ミリアは多少無理をしながら防いでいる感じになる。


「ありがとうございます、ミリアさん」


ミリアが盾役に加わってくれたおかげで、【キング・スコーピオン】の動きが止まる。


「あまり長くは続かないから、早くお願い・・・」


「わかりました」


ミリアの言葉通り、【付与師ふよしのライド】はこの機会を逃すまいと、急いで『付与ふよ』を行なう。


今回ライドが行なうのは、【キング・スコーピオン】に対して『ステータス低下デバフ』で能力を下げていく。


まずは、身体能力を下げる。


続けて、強力な攻撃力の低下、硬い防御力の低下。


「ーーこれって・・・」


ミリアは、ライドの『付与』で【キング・スコーピオン】の攻撃力が下がり、受け止めることに精一杯だったはずが力が弱まって逆に押し返していけるようになった。


もちろんクイナも同じで、2人がかりで【キング・スコーピオン】の攻撃を弾き返す。


そこで大きな隙が生まれた。


「いくよ！」


「うん！」


そのチャンスを待っていたように、【双剣使いのアル】、【双剣使いのルア】が飛び出した。


2人の攻撃は、怯む【キング・スコーピオン】の硬い甲殻をものともせずに切り裂いていく。


「すごい・・・」


それを可能にしているのもライドの『付与』のおかげで、甲殻の防御力を下げているからだ。


ギィィィィィッ・・・


そこからの戦闘はあっという間だった。


アル達の攻撃に加え、クイナとミリアも防御を捨てて攻撃に転じた。


【パレード】メンバーの攻撃力がライドを通して強くなっているから攻撃が通じるのはわかる。


しかし、何の効果も受けていないミリアも【キング・スコーピオン】の甲殻をものともしないで攻撃できたのだ。


4人の手に掛かれば、すぐに倒すことができた。


「・・・」


そこでミリアは考える・・・。


【付与師】の力は、『ステータス上昇バフ』によって強化する力も脅威だが、『ステータス低下デバフ』による能力の低下も脅威であると・・・。


同時に両方の力を使われるボス戦は、今のようにあっという間にボスを倒してしまってもおかしくはない。


トップ2冒険者パーティー【パレード】による最速攻略を一緒に行なったミリアは、改めて【付与師のライド】の力を知ったのだった。