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サイクロプスは拳でぶちのめす事こそが脳筋よね!(完)
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リリさんに約束の報酬を渡しその場で別れた。そしてわたくしはギルドを出た時ね。ちょうど扉を抜けた出口でとあるPTと出会いましたの。その方達は、以前一度PTを組んだ、エミール、シオン、ガイストの3人。
「あら……、貴方達は確かエミールとその他二人でしたわね」
「君はミリアさんじゃないか。こんな所で会うなんて奇遇だね」
「その他って私達の印象ってそんな薄かったのね……」
補助魔法使いのシオンは少し悲しそうに項垂れたが、エミールはわたくしに用事があるようで、
「ちょっと実はミリアさんにもう一度助っ人に入って欲しいんだ」
「またモンスター討伐依頼ですの? でも今はお金に困ってなくて当分遊んで暮らすつもりなのよ」
そう、先ほどキマイラを狩ったばかりで、懐がほくほくなのよね、わたくし。
「まぁそう言わずにさ。これはギルドからの緊急依頼で、ちょっと面倒なモンスターなんだ」
そう聞かされてわたくしの動きが止まった。ギルドからの緊急依頼? 一体どんなモンスターなのかしら。
「あら、一体それはどんなモンスターですの?」
エミールに訊ねると、少し渋い顔をして言ってきた。
「巨人サイクロプスです」
巨人サイクロプス。単眼で軽く10メートルは超える巨体に、棍棒を振り回す怪物だ。確か昔7英雄に討伐されたと聞いたのだけど、まだ他にもいたのかしらね?
「へー、サイクロプス。面白そうな相手ね」
「今そのサイクロプスが、ここからそう遠くない街で暴れているのです。しかしこれほどの相手と戦えるのが今我々と、ミリアさんだけなのです」
わたくしと、彼らだけ。意外とじゃあこのエミールのPTは強い事になるのね。知らなかったわ。以前の戦闘は全く連携なんて取らなかったわけだし、知るよしもなかったから、当然と言えば当然ね。でもまぁ、今回は戦いがいのある相手。私は引き受ける事にした。
「良いわよ。そのサイクロプスの討伐やってあげても良いわ。で、討伐成功時のわたくしへの報酬はどれほどになるのかしら?」
「討伐成功時のミリアさんの報酬は5万ルピーです。そして依頼を受けた時には、これを渡しておくようにとギルド長から」
エミールはわたくしに指輪を渡してきた。これはあまり見たこともない指輪。
「それはお守りです。ギルド長がこれをと」
ふぅ~ん。効果は何か分からないけど、きっと役に立つ物よね。
「せっかくだし、ありがたく頂くとするわ。それじゃちゃちゃっと、サイクロプスの討伐行きますわよ」
エミール、シオン、ガイストは頷いた。そうしてわたくし達のPTはサイクロプス討伐のため、馬を借りて、出発する事にしたわ。
目的の街にわたくし達が到着すると、既にかなりの民家や建物が崩壊している様子。どうやらサイクロプスが暴れた後だと、分かりやすいほどの痕跡が残っているわね。
いたる所に死傷者たちが横たわっており、酷い有様。まずいわね、このまま暴れたらもっと死人が出る。わたくしは崩壊した民家でぐったりした男に、サイクロプスの行方を聞く事にした。
「ねぇ、貴男。モンスターはどこへ行ったのかしら?」
男は声も出せない様で、立ち上がろうとしたが、足の裂傷がひどく、立てずにいたので、地面へと倒れこんだ。
「無理しなくていいから、方角だけでも教えてちょうだい」
わたくしの問いに頷くと、街はずれの教会を示す。どうやらそこに標的がいるのね。
「ありがとう。シオン、ちょっと来てちょうだい!」
わたくしは補助魔法使いのシオンを呼びつける。
「え、何ですか?」
「悪いけど、貴方たち3人は、街の怪我人の避難と、負傷者の救護をしてくれるかしら。わたくしはこのままサイクロプスを負うわ」
「ちょっと、何バカな事言ってるんですか!」
わたくしとシオンの会話を聞いていたのか、駆け寄って来たエミールが、
「無茶だ! いくらミリアさんが強いからって、相手はS級モンスターだ。4人でしっかりと――」
けれどそんな言葉など聞かずに、わたくしは駆け出した。ハンマーを片手に持ち、一気に目的の崩壊した教会に到着すると、一つ目の巨大なサイクロプスが暴走でもしているのか、暴れまわっていた。教会は半壊状態で、天井の半分が崩れている。
「いたいた、このデカブツはわたくしが、しーっかりと調教してあげますわ」
こちらの存在に気付いたのか、サイクロプスがその一つ目でこちらを見据えてくる。そして躊躇なく手に右手に持っている棍棒を振り下ろしてきた。ここでまた言っておくわ。わたくしは回復職だから、戦士やシーフ程の素早さはないわ。だから――受け止めるのよ。
「ぐぐぐっ!」
さすがに10メートルの体躯の力だけあって、受け止めきる事が出来たものの、腕に半端なく痺れがくる。そしてしっかりダメージを少しだが、削られる。
(さすがに苦しいわね。こんなのを何度も受け止められないわ)
と、思ったところで、サイクロプスが遠慮なく、その体躯に似合わない程の速さで、棍棒を連続で振り回してきたわ。
「このデカブツ。調子に乗りやがって!」
一度振られた棍棒を受け止めると同時に、力を入れて斧で相手の棍棒を弾き飛ばそうと思った。が、しかし。それは上手くいかず、サイクロプスは少し後ろによろめく程度。ちょっと今回はさすがにわたくしも勝てないかもしれない、そう思った瞬間、
サイクロプスが咆哮をあげて、棍棒を投げ飛ばしてきていた。
(――な!)
一瞬反応が遅れ斧でガードしたもの、当たりが悪く斧の刃が折れ、そのままわたくしは吹き飛ばされる。しかし相手の棍棒も刃で切られ、互いの武器は使えなくなる。
「ぐっ――!?」
わたくしが吹き飛ばされて、どうにかバッグにある回復薬を出そうと思った。だけど、そこには回復薬など一つも入ってなかった。そうだわ。わたくし、自分で回復出来るから、もう常備などしていなかった事を思い出す。
仕方ない。回復魔法を詠唱して、三分の一以下になったHPを回復するしかないわ。急いで忘れかかった詠唱を唱えようとした時、眼前にはサイクロプスが立ちはだかり、その巨木のような拳でわたくしの身体を粉砕した。
「がはっーー!」
身体は粉々に砕かれ、わたくしはあっさりと絶命した。力に頼り過ぎて、回復薬も持たないなんて馬鹿みたい。こんな事なら蘇生魔法を事前に自身にかけておけばよかったわ。
そんな思いで瞼を閉じたのだけど、指に付けられた指輪が眩い光を放ち、身体が蘇生を始め出した。これは、確か依頼を受ける時にもらった指輪。なるほど、これは蘇生の指輪ね。きっと回復をしないわたくしの事を知って、事前に持たせたのね、あのギルド長のジジイは。
「良いじゃない! 第2ラウンドと行きましょうか、このデカブツ野郎が!」
全回復したわたくしは、カバンを開けてグローブを取り出す。これはもし斧が使えなくなった時のために、予備として持っていた通称『鮮血のグローブ』と呼ばれた武器よ。
このグローブの特徴は、自身のHPが減れば減る程、相手に与えるダメージが増えるグローブ。ただし、デメリットとして受けるダメージも増える事になる、もろ刃の拳ね。でもこれであのデカブツを今度はこっちが粉砕してやるわ!
「さぁ、サンドバックにしてあげるわ」
私が蘇生されたのを気付いてない隙に、崩れ落ちてる瓦礫を駆け上がり、そのままジャンプをしていく。そしてその勢いで、空中姿勢で腰に捻りを入れて、サイクロプスの顔面へ一発強烈な左フックをかましてやった。
――ギシャヤアアア!
サイクロプスは頭を抱えて、唸りながら後ずさる。わたくしはそんな隙を与えるつもりはないわ。一気に詰め寄り、その腹部へと攻撃をしようした、が、思わぬ反撃の蹴りが来たので、腕でガードをする。
「くっ! 悪あがきも良いところじゃないのよ」
だけどダメージを負ったことで、グローブの効果で与えるダメージが上昇するわ。わたくしは蹴られた勢いで吹き飛ばされるが、壁に衝突する前に姿勢を回転させ、壁を蹴り返し再度サイクロプスに突貫していく。
それに気付き、サイクロプスはこっちにむかって拳を振り下ろすが、それを寸でのところでかわして、一気に距離を詰め、
「おらぁぁぁぁぁ!」
隙だらけの胴体にランニング・アッパーカットを繰り出す。姿勢が仰け反り崩れるサイクロプスに、立て続けに拳を叩きこむ。
「さっさと倒れろやぁぁぁ!」
そうしてわたくしはサイクロプスを倒した、ように思えた。しかし向こうもなかなかのタフさで、立ち上がったわ。やるじゃない。あれだけパワー技をぶち込んで、倒れないとはさすがS級モンスターね。
サイクロプスは激怒して、激しく怒り狂っている。その拳から赤いオーラを纏って、こちらの方へとの躊躇なく突進してきた。そのスピードは、先ほどより上昇しており、避ける事が出来そうにない。
両腕を上げて、地面を叩きつけてくる。運良く直撃を避けれたが、あまりの衝撃で大きめな岩が腹に直撃する。
(ぐっ――、このままではまた、死ぬかもしれないわね)
このまま、あの剛腕を振り回せれ続けられたら、わたくしが持たないわ。ここは一か八か勝負に出るしかないようね。このステータス特有なのか、パワーをカンストして覚えた技が一つある。強力な技だが、反動で動けなくなるリスクもあるが、ここで渋っていても仕方ないわ。やるしかない!
私は精神を統一して、拳に力を込める。その拳が青いオーラを放ち出して、気力が限界まで高まる。サイクロプスはまだ地面を叩きつけた衝撃で、立ち上がる最中だ。やるなら今しかないわ!
「奥義! 千手観音ブロー!」
わたくしは足に力を込め高く地面を蹴り上げ高く飛び上がる。サイクロプスの顔面らか腹部まで、100連続高速パンチを渾身の力を入れて放ち続けた。
「うおおおおおおおおっ!」
全身を高速で殴り続け、さすがにサイクロプスの体力を削りきり昏倒させる。そしてわたくしも気力も体力も切れ、意識を失ってしまったみたい……。
「――ミリアさん。ミリアさん大丈夫ですか?」
誰かの声がして、わたくしは目を覚ました。目を開けると、そこにはシオンが心配そうに見つめていた。どうやらわたくしに回復魔法をかけてくれたらしい。
「ええ、大丈夫。サイクロプスはどうなったのかしら?」
「無事、ミリアさんが倒しましたよ。と言っても、どうやら正気に戻ったって言った方が正確でしょうか」
正気に戻った? それはどういう事なのかしらね。するとエミールもそばに駆けつけてきた。
「どうも、あのサイクロプスは何者かに操られたようです。あれから正気に戻って森に帰って行きましたよ」
「じゃあ裏で暗躍している奴らがいるって事なのね。まっ、それは勇者さんに任せればいいんじゃないの。とりあえずわたくしは報酬さえもらえれば良いんだからね」
蘇生の指輪で死にかけたが、何とか依頼はこなせたわ。そして教訓として、これからは蘇生魔法だけはしっかり自分にかけようと思ったわ。
「それじゃわたくしは報酬を貰ったら、気ままにまた旅でもするわ。またどこかで会いましょう。ごきげんよう」
こうしてわたくしのS級モンスターとの戦いは終わったわ。でも――、まだまだこの力を使って、モンスターどもを粉砕していきたいと、強く思うわね。だって、こんな力999なんて力、使わないなんて面白くないじゃない。
だから、わたくしはこれからも、強いモンスターを狩る旅に出る事にしたの。
この世界では裏で暗躍している危険な組織がいるみたいだけど、それと戦うのは、勇者様の仕事でしょ? わたくしはそんな面倒くさい事はしたくないわ。
これからのわたくしは、気ままにモンスターを力だけでぶちのめしたい、脳筋回復職ですもの。
「あら……、貴方達は確かエミールとその他二人でしたわね」
「君はミリアさんじゃないか。こんな所で会うなんて奇遇だね」
「その他って私達の印象ってそんな薄かったのね……」
補助魔法使いのシオンは少し悲しそうに項垂れたが、エミールはわたくしに用事があるようで、
「ちょっと実はミリアさんにもう一度助っ人に入って欲しいんだ」
「またモンスター討伐依頼ですの? でも今はお金に困ってなくて当分遊んで暮らすつもりなのよ」
そう、先ほどキマイラを狩ったばかりで、懐がほくほくなのよね、わたくし。
「まぁそう言わずにさ。これはギルドからの緊急依頼で、ちょっと面倒なモンスターなんだ」
そう聞かされてわたくしの動きが止まった。ギルドからの緊急依頼? 一体どんなモンスターなのかしら。
「あら、一体それはどんなモンスターですの?」
エミールに訊ねると、少し渋い顔をして言ってきた。
「巨人サイクロプスです」
巨人サイクロプス。単眼で軽く10メートルは超える巨体に、棍棒を振り回す怪物だ。確か昔7英雄に討伐されたと聞いたのだけど、まだ他にもいたのかしらね?
「へー、サイクロプス。面白そうな相手ね」
「今そのサイクロプスが、ここからそう遠くない街で暴れているのです。しかしこれほどの相手と戦えるのが今我々と、ミリアさんだけなのです」
わたくしと、彼らだけ。意外とじゃあこのエミールのPTは強い事になるのね。知らなかったわ。以前の戦闘は全く連携なんて取らなかったわけだし、知るよしもなかったから、当然と言えば当然ね。でもまぁ、今回は戦いがいのある相手。私は引き受ける事にした。
「良いわよ。そのサイクロプスの討伐やってあげても良いわ。で、討伐成功時のわたくしへの報酬はどれほどになるのかしら?」
「討伐成功時のミリアさんの報酬は5万ルピーです。そして依頼を受けた時には、これを渡しておくようにとギルド長から」
エミールはわたくしに指輪を渡してきた。これはあまり見たこともない指輪。
「それはお守りです。ギルド長がこれをと」
ふぅ~ん。効果は何か分からないけど、きっと役に立つ物よね。
「せっかくだし、ありがたく頂くとするわ。それじゃちゃちゃっと、サイクロプスの討伐行きますわよ」
エミール、シオン、ガイストは頷いた。そうしてわたくし達のPTはサイクロプス討伐のため、馬を借りて、出発する事にしたわ。
目的の街にわたくし達が到着すると、既にかなりの民家や建物が崩壊している様子。どうやらサイクロプスが暴れた後だと、分かりやすいほどの痕跡が残っているわね。
いたる所に死傷者たちが横たわっており、酷い有様。まずいわね、このまま暴れたらもっと死人が出る。わたくしは崩壊した民家でぐったりした男に、サイクロプスの行方を聞く事にした。
「ねぇ、貴男。モンスターはどこへ行ったのかしら?」
男は声も出せない様で、立ち上がろうとしたが、足の裂傷がひどく、立てずにいたので、地面へと倒れこんだ。
「無理しなくていいから、方角だけでも教えてちょうだい」
わたくしの問いに頷くと、街はずれの教会を示す。どうやらそこに標的がいるのね。
「ありがとう。シオン、ちょっと来てちょうだい!」
わたくしは補助魔法使いのシオンを呼びつける。
「え、何ですか?」
「悪いけど、貴方たち3人は、街の怪我人の避難と、負傷者の救護をしてくれるかしら。わたくしはこのままサイクロプスを負うわ」
「ちょっと、何バカな事言ってるんですか!」
わたくしとシオンの会話を聞いていたのか、駆け寄って来たエミールが、
「無茶だ! いくらミリアさんが強いからって、相手はS級モンスターだ。4人でしっかりと――」
けれどそんな言葉など聞かずに、わたくしは駆け出した。ハンマーを片手に持ち、一気に目的の崩壊した教会に到着すると、一つ目の巨大なサイクロプスが暴走でもしているのか、暴れまわっていた。教会は半壊状態で、天井の半分が崩れている。
「いたいた、このデカブツはわたくしが、しーっかりと調教してあげますわ」
こちらの存在に気付いたのか、サイクロプスがその一つ目でこちらを見据えてくる。そして躊躇なく手に右手に持っている棍棒を振り下ろしてきた。ここでまた言っておくわ。わたくしは回復職だから、戦士やシーフ程の素早さはないわ。だから――受け止めるのよ。
「ぐぐぐっ!」
さすがに10メートルの体躯の力だけあって、受け止めきる事が出来たものの、腕に半端なく痺れがくる。そしてしっかりダメージを少しだが、削られる。
(さすがに苦しいわね。こんなのを何度も受け止められないわ)
と、思ったところで、サイクロプスが遠慮なく、その体躯に似合わない程の速さで、棍棒を連続で振り回してきたわ。
「このデカブツ。調子に乗りやがって!」
一度振られた棍棒を受け止めると同時に、力を入れて斧で相手の棍棒を弾き飛ばそうと思った。が、しかし。それは上手くいかず、サイクロプスは少し後ろによろめく程度。ちょっと今回はさすがにわたくしも勝てないかもしれない、そう思った瞬間、
サイクロプスが咆哮をあげて、棍棒を投げ飛ばしてきていた。
(――な!)
一瞬反応が遅れ斧でガードしたもの、当たりが悪く斧の刃が折れ、そのままわたくしは吹き飛ばされる。しかし相手の棍棒も刃で切られ、互いの武器は使えなくなる。
「ぐっ――!?」
わたくしが吹き飛ばされて、どうにかバッグにある回復薬を出そうと思った。だけど、そこには回復薬など一つも入ってなかった。そうだわ。わたくし、自分で回復出来るから、もう常備などしていなかった事を思い出す。
仕方ない。回復魔法を詠唱して、三分の一以下になったHPを回復するしかないわ。急いで忘れかかった詠唱を唱えようとした時、眼前にはサイクロプスが立ちはだかり、その巨木のような拳でわたくしの身体を粉砕した。
「がはっーー!」
身体は粉々に砕かれ、わたくしはあっさりと絶命した。力に頼り過ぎて、回復薬も持たないなんて馬鹿みたい。こんな事なら蘇生魔法を事前に自身にかけておけばよかったわ。
そんな思いで瞼を閉じたのだけど、指に付けられた指輪が眩い光を放ち、身体が蘇生を始め出した。これは、確か依頼を受ける時にもらった指輪。なるほど、これは蘇生の指輪ね。きっと回復をしないわたくしの事を知って、事前に持たせたのね、あのギルド長のジジイは。
「良いじゃない! 第2ラウンドと行きましょうか、このデカブツ野郎が!」
全回復したわたくしは、カバンを開けてグローブを取り出す。これはもし斧が使えなくなった時のために、予備として持っていた通称『鮮血のグローブ』と呼ばれた武器よ。
このグローブの特徴は、自身のHPが減れば減る程、相手に与えるダメージが増えるグローブ。ただし、デメリットとして受けるダメージも増える事になる、もろ刃の拳ね。でもこれであのデカブツを今度はこっちが粉砕してやるわ!
「さぁ、サンドバックにしてあげるわ」
私が蘇生されたのを気付いてない隙に、崩れ落ちてる瓦礫を駆け上がり、そのままジャンプをしていく。そしてその勢いで、空中姿勢で腰に捻りを入れて、サイクロプスの顔面へ一発強烈な左フックをかましてやった。
――ギシャヤアアア!
サイクロプスは頭を抱えて、唸りながら後ずさる。わたくしはそんな隙を与えるつもりはないわ。一気に詰め寄り、その腹部へと攻撃をしようした、が、思わぬ反撃の蹴りが来たので、腕でガードをする。
「くっ! 悪あがきも良いところじゃないのよ」
だけどダメージを負ったことで、グローブの効果で与えるダメージが上昇するわ。わたくしは蹴られた勢いで吹き飛ばされるが、壁に衝突する前に姿勢を回転させ、壁を蹴り返し再度サイクロプスに突貫していく。
それに気付き、サイクロプスはこっちにむかって拳を振り下ろすが、それを寸でのところでかわして、一気に距離を詰め、
「おらぁぁぁぁぁ!」
隙だらけの胴体にランニング・アッパーカットを繰り出す。姿勢が仰け反り崩れるサイクロプスに、立て続けに拳を叩きこむ。
「さっさと倒れろやぁぁぁ!」
そうしてわたくしはサイクロプスを倒した、ように思えた。しかし向こうもなかなかのタフさで、立ち上がったわ。やるじゃない。あれだけパワー技をぶち込んで、倒れないとはさすがS級モンスターね。
サイクロプスは激怒して、激しく怒り狂っている。その拳から赤いオーラを纏って、こちらの方へとの躊躇なく突進してきた。そのスピードは、先ほどより上昇しており、避ける事が出来そうにない。
両腕を上げて、地面を叩きつけてくる。運良く直撃を避けれたが、あまりの衝撃で大きめな岩が腹に直撃する。
(ぐっ――、このままではまた、死ぬかもしれないわね)
このまま、あの剛腕を振り回せれ続けられたら、わたくしが持たないわ。ここは一か八か勝負に出るしかないようね。このステータス特有なのか、パワーをカンストして覚えた技が一つある。強力な技だが、反動で動けなくなるリスクもあるが、ここで渋っていても仕方ないわ。やるしかない!
私は精神を統一して、拳に力を込める。その拳が青いオーラを放ち出して、気力が限界まで高まる。サイクロプスはまだ地面を叩きつけた衝撃で、立ち上がる最中だ。やるなら今しかないわ!
「奥義! 千手観音ブロー!」
わたくしは足に力を込め高く地面を蹴り上げ高く飛び上がる。サイクロプスの顔面らか腹部まで、100連続高速パンチを渾身の力を入れて放ち続けた。
「うおおおおおおおおっ!」
全身を高速で殴り続け、さすがにサイクロプスの体力を削りきり昏倒させる。そしてわたくしも気力も体力も切れ、意識を失ってしまったみたい……。
「――ミリアさん。ミリアさん大丈夫ですか?」
誰かの声がして、わたくしは目を覚ました。目を開けると、そこにはシオンが心配そうに見つめていた。どうやらわたくしに回復魔法をかけてくれたらしい。
「ええ、大丈夫。サイクロプスはどうなったのかしら?」
「無事、ミリアさんが倒しましたよ。と言っても、どうやら正気に戻ったって言った方が正確でしょうか」
正気に戻った? それはどういう事なのかしらね。するとエミールもそばに駆けつけてきた。
「どうも、あのサイクロプスは何者かに操られたようです。あれから正気に戻って森に帰って行きましたよ」
「じゃあ裏で暗躍している奴らがいるって事なのね。まっ、それは勇者さんに任せればいいんじゃないの。とりあえずわたくしは報酬さえもらえれば良いんだからね」
蘇生の指輪で死にかけたが、何とか依頼はこなせたわ。そして教訓として、これからは蘇生魔法だけはしっかり自分にかけようと思ったわ。
「それじゃわたくしは報酬を貰ったら、気ままにまた旅でもするわ。またどこかで会いましょう。ごきげんよう」
こうしてわたくしのS級モンスターとの戦いは終わったわ。でも――、まだまだこの力を使って、モンスターどもを粉砕していきたいと、強く思うわね。だって、こんな力999なんて力、使わないなんて面白くないじゃない。
だから、わたくしはこれからも、強いモンスターを狩る旅に出る事にしたの。
この世界では裏で暗躍している危険な組織がいるみたいだけど、それと戦うのは、勇者様の仕事でしょ? わたくしはそんな面倒くさい事はしたくないわ。
これからのわたくしは、気ままにモンスターを力だけでぶちのめしたい、脳筋回復職ですもの。
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