上 下
7 / 11

お披露目直前

しおりを挟む
 あれから私はマリーヤ夫人には広く浅い知識を。アデリーナさん(先生と呼んで誤魔化している間に、無事名前を知ることが出来ました)からは、淑女の深い闇知識を教えていただいたが、ほぼ身に付かなかった。

 語学は挨拶だけ。他は発音が酷くて妃としては使えないらしい。聞いた通りにやっているつもりなのだが。でも「ありがとうございます」が『ありがはってるなあんた!』と聞こえるそうなので、確かに使えないと思う。

 身に付いたのは姿勢と毒の判定。姿勢については皿を割りまくり、スープも塩味から少しづつ変化していき、熱々のトマトのポタージュになった辺りで何とかモノにした。

 毒の判定はかなり早くから出来る様になった。命が掛かっているので!! 種類はあまり覚えられなかったけど、毒の有無は分かる! ほぼ 勘!

 アデリーナさんからは「動きのしなやかな野生生物が誕生したわ」と拍手された。ありがとうございます!!

 ――褒められたんだよね?

 結婚式はまだ先だけど、取り敢えず今日を乗り切ればなんとかなるはず! 教えてくれたマリーヤ夫人やアデリーナさんの為にも頑張るぞ!!

 ――――――でも何か忘れてるような気がするんだよね……。

「そろそろ準備を始めてもよろしいでしょうか」
 身支度を手伝ってくれるメイドさんが来てくれた。
「はい! よろしくお願いします」

 大事な事ならそのうち思い出すよね!









 沢山の人のご尽力により、中の中令嬢からなんとか中の上令嬢にクラスチェンジする事が出来た。
 衣裳だけは最上級。王子様から届けられたリボンもつけた。彼の隣に並んでも引けは取らない。服だけは。

 会場に入る前に案内された控えの間。
 準備が早く終わったのか、三人の綺羅綺羅しい王子様方が談笑してらっしゃいました。

「やあ、カーシャ嬢! 綺麗にしてもらったんだね」
「よく似合っているよ」
「どう? 緊張してない?」

 思い出した!! ああああぁぁあなんて事!! 

 どの人が私の婚約者なのか分からない!!

 顔を見たのは一度だけ。もう覚えてない。金髪だったはずだけど、みんな似たような色だ。なんで確認しとかなかったんだ私! 事前に会わせてもらえば良かった……。

 脂汗をかきながらも何とか微笑みをキープ。
 誰かヒントを。ヒントを頂戴……。

「ここへ座るといいよ」

 立って案内してくださった貴方、貴方がミハイル王子でいいんですか? いいんですよね? ね?

「ほらミハイル、お前がエスコートしなくちゃ駄目じゃないか。ルカに負けてるぞ」

 違った! 救いの手は、多分第一王子(消去法)。名前はマクシミリアンだったかな。解答ありがとうございます!

 じっとこちらを見ているこの人がミハイル王子か。マクシミリアン殿下よりも少し暗い金髪だな。ルカ殿下は少し線が細くて髪が長め。アデリーナさんのお相手か。よし。覚えておこう。

 しかし先程からミハイル殿下の視線が外れないな。
「あの、なにか……?」
「君、ぴこ「お待たせ致しました皆様」」

 アデリーナさんと、何度かお会いした事のあるソフィヤ様が入ってきた。黒髪の美しいソフィヤ様は第一王子妃だ。

 ご挨拶するとまた王子様ご話しかけてきた。
「カーシャ、君「そろそろお時間です。会場にご案内致します」」

 いよいよだ。
 今日は国内の貴族だけのはず。私の付け焼き刃を披露してもダメージは国内だけ。伸び代に期待してもらえるくらいに振る舞うのが、今日の目標だ。低いのは分かってる。

 フォロー頼みましたよ王子様という気持ちを込めて目を合わせれば、あれ? 戸惑われてる?

「――行こうか」
「はい」

 ……フォローしてもらえるのかな。急激に不安に襲われるが、もう行くしかない。

 名前を呼び上げられ、私達は会場へと足を踏み出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女候補……の付き人になりました

そらのあお
恋愛
ある日、《勇者》と《聖女》の選定の儀を執り行うと発表され、国中からその候補が身分問わずに集められることになった。 辺境の地にあるココ村からは魔力を持つ村長の娘が聖女候補として王都に向けて出発する。 その娘の付き人として選ばれたのは、村で孤立していた少女で………

婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?

もふきゅな
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。 王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト 悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。

王太子様、丁寧にお断りします!

abang
恋愛
「……美しいご令嬢、名前を聞いても?」 王太子であり、容姿にも恵まれた。 国中の女性にはモテたし、勿論男にも好かれている。 そんな王太子が出会った絶世の美女は少し変……? 「申し訳ありません、先程落としてしまって」 ((んな訳あるかぁーーー!!!)) 「あはは、面白い冗談だね。俺の事を知ってる?」 「はい、多分王太子殿下ではないかと……」 「……うん、あたりだね」 「じゃあ、落とし物を探して参りますので……さようなら」 「え"っ!?無礼とか、王太子殿下だ、とか考えない?」 「ワーオウタイシサマダ、ステキ……では失礼致します」 「……決めた、俺は彼女を妻にする」 「お断りします」 ちょっと天然なナルシ王太子×塩対応公爵令嬢 「私は平和で落ち着いた愛を育みたいので」 「俺は、キミと愛を育みたいよ」 「却下!」

婚約破棄が流行しているようなので便乗して殿下に申し上げてみましたがなぜか却下されました

SORA
恋愛
公爵令嬢のフレア・カートリはマルクス王国の王太子であるマルク・レオナドルフとの婚約が決まっていた。 最近国内ではとある演劇が上演された後から婚約破棄が流行している。今まで泣き寝入りして婚約していた若者たちが次々と婚約破棄し始めていた。そんな話を聞いたフレアは、自分もこの流れに沿って婚約破棄しようとマルクに婚約破棄を申し出たのだけれど……

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

帝国に奪われた聖女様は帝国の皇太子に溺愛されてます

りり
恋愛
王国に聖女として生まれたエルサ・ラ・エリサエル。 しかし、宰相の裏切りによりエルサは、おってから必死に逃げていた。 そんななか、騎士団長であるアレクドリスに助けられる。 実は……彼の正体はかつての同級生であり隣国ラーサル帝国の皇太子だった。 この物語は二人が様々な困難を超え結婚する話。 本編完結 番外編更新中

外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます

刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...