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魔法学校編
5-73
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「あの、五日ほど前、研究棟にいらした方ですよね?」
ニイナとはまた違った路線の儚げなメガネクール美幼女がそう話しかけてきた。窓側のワシに、だ。
もう一度言う。窓側のワシに、話しかけて来た。
「はえ? 五日ほど前?」
しかし五日も前のこと、ワシが覚えていられるものだろうか……? と少し不安になりながら少ない記憶を漁っていく。
「……記憶にございませんか? あなたお一人で研究棟にいらして、何やら魔法を使われて、その後すぐに消えてしまわれた……」
「………………………………ああ!」
オリウェンドとディエゴ親子が学園に集結したあの日のことだろう。確かにオリウェンドの意識を逸らすために研究塔に瞬間移動して、テキトーに魔法を使ったんだっけ。
「もしかしてその時塔にいたのって……」
「はい、私です。」
「そうでしたか。……して、ワシ、いや、私に何か用ですか?」
一応このクール美人がどういったご身分の方か分からないからな、丁寧な言葉を意識的に使って疑問をぶつけてみた。
「いえ、あの時何の魔法をお使いになったかまでは分かりませんが、どうやって私の存在に気がついたのでしょうか。」
「……申し訳ありませんが、質問の意図がよく分からないのですが。」
感知魔法を使ったから、としか言えないが、そもそも何故その質問を投げかけられるのか分からず、質問に質問を重ねてしまった。言葉に出してから『まずった、失礼に値するのでは?』と内心で焦る。
「ああ、そうでした。私としたことが、名乗りもせずに失礼しました。私はリィコ・アラレイル。アラレイル家の末の娘でございます。」
が、そのことで怒られることはなく、自己紹介までしてくれた。この国の貴族にしては寛大なお人なのだろう。
「ご丁寧にありがとうございます。ワシ……ゲフンゲフン、私はレタアと申します。」
「レタア様、でございますか。どうぞこれからよろしくお願いいたします。」
「あ、え、と……はい?」
「それで、話は戻りますが、その前に前提としてのお話をさせてください。」
「あ、はい、どうぞ。」
もうよく分からないが、とりあえず場の流れに身を任せることにした。そう、ワシは空気を読むことを覚えたのだ!(褒めて褒めて!)
「私、アラレイルの家系は皆、遺伝的にとある性質を持っております。そう、それがこの話の発端となります。」
「は、はあ……」
「何を隠そう、私の家系は皆、何故か影が薄いのです。それも、人に認識されないのが普通であるくらいの。」
「認識されない……?」
家系に遺伝する『特化した魔法』の存在は知っている。ディエゴ、オリウェンド親子のレンダルク家が分かりやすいだろう。あの家系は特に『魔力を見る目』に特化している。それと同じ感じだろう。
「はい。今はすっっっごく頑張っているので、レタア様にも見えていらっしゃると思われます。」
「ああ、しっかり見えている。だが、すっっっごく頑張って人並みとは、普通に生活していくのに相当不便だろうに。」
「そう、そこなのです。私たちアラレイル家の者はこれを『呪い』と呼んで、何代もの間これを解くべく奮闘してきた歴史があります。」
「ほうほう。」
「そして先日、私がすっっっごく頑張っていない普通の時に、あなた様が私を見つけてくださったのです。これを家の者に話したところ、レタア様こそがこの呪いを解く鍵になり得るだろう、との考えで一致しました。」
「ほうほう……ほう?」
「ということで、どうか私に、私の家系を助けると思って、ご協力いただきたいのです!」
なんか、また考えることが増えそうな気配がした。まあ、まだ協力すると決まったわけではないのだが。
ニイナとはまた違った路線の儚げなメガネクール美幼女がそう話しかけてきた。窓側のワシに、だ。
もう一度言う。窓側のワシに、話しかけて来た。
「はえ? 五日ほど前?」
しかし五日も前のこと、ワシが覚えていられるものだろうか……? と少し不安になりながら少ない記憶を漁っていく。
「……記憶にございませんか? あなたお一人で研究棟にいらして、何やら魔法を使われて、その後すぐに消えてしまわれた……」
「………………………………ああ!」
オリウェンドとディエゴ親子が学園に集結したあの日のことだろう。確かにオリウェンドの意識を逸らすために研究塔に瞬間移動して、テキトーに魔法を使ったんだっけ。
「もしかしてその時塔にいたのって……」
「はい、私です。」
「そうでしたか。……して、ワシ、いや、私に何か用ですか?」
一応このクール美人がどういったご身分の方か分からないからな、丁寧な言葉を意識的に使って疑問をぶつけてみた。
「いえ、あの時何の魔法をお使いになったかまでは分かりませんが、どうやって私の存在に気がついたのでしょうか。」
「……申し訳ありませんが、質問の意図がよく分からないのですが。」
感知魔法を使ったから、としか言えないが、そもそも何故その質問を投げかけられるのか分からず、質問に質問を重ねてしまった。言葉に出してから『まずった、失礼に値するのでは?』と内心で焦る。
「ああ、そうでした。私としたことが、名乗りもせずに失礼しました。私はリィコ・アラレイル。アラレイル家の末の娘でございます。」
が、そのことで怒られることはなく、自己紹介までしてくれた。この国の貴族にしては寛大なお人なのだろう。
「ご丁寧にありがとうございます。ワシ……ゲフンゲフン、私はレタアと申します。」
「レタア様、でございますか。どうぞこれからよろしくお願いいたします。」
「あ、え、と……はい?」
「それで、話は戻りますが、その前に前提としてのお話をさせてください。」
「あ、はい、どうぞ。」
もうよく分からないが、とりあえず場の流れに身を任せることにした。そう、ワシは空気を読むことを覚えたのだ!(褒めて褒めて!)
「私、アラレイルの家系は皆、遺伝的にとある性質を持っております。そう、それがこの話の発端となります。」
「は、はあ……」
「何を隠そう、私の家系は皆、何故か影が薄いのです。それも、人に認識されないのが普通であるくらいの。」
「認識されない……?」
家系に遺伝する『特化した魔法』の存在は知っている。ディエゴ、オリウェンド親子のレンダルク家が分かりやすいだろう。あの家系は特に『魔力を見る目』に特化している。それと同じ感じだろう。
「はい。今はすっっっごく頑張っているので、レタア様にも見えていらっしゃると思われます。」
「ああ、しっかり見えている。だが、すっっっごく頑張って人並みとは、普通に生活していくのに相当不便だろうに。」
「そう、そこなのです。私たちアラレイル家の者はこれを『呪い』と呼んで、何代もの間これを解くべく奮闘してきた歴史があります。」
「ほうほう。」
「そして先日、私がすっっっごく頑張っていない普通の時に、あなた様が私を見つけてくださったのです。これを家の者に話したところ、レタア様こそがこの呪いを解く鍵になり得るだろう、との考えで一致しました。」
「ほうほう……ほう?」
「ということで、どうか私に、私の家系を助けると思って、ご協力いただきたいのです!」
なんか、また考えることが増えそうな気配がした。まあ、まだ協力すると決まったわけではないのだが。
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