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魔法学校編

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「で、レタアさん。例の報酬についてなのですが……。いつ頃だと都合がつきそうですか?」

 ああ、ディエゴがここに来たのはそれが用件だったのか。そう理解してワシは話を進めることにした。

「そうだなあ、一番早くて今日の午後とか……とかかのう? それか明日なら一日中暇だが……」

「魔物討伐も粗方落ち着いてきたので今日明日どちらも休日になりましたから、そうですねぇ……明日だと一日中空いていますから、そこにしましょうか。半日よりも丸々一日使った方がより良いでしょうし。」

「それでお願いする。よろしくな! ……あ、そうじゃ、暇ならディエゴも今から魔法の訓練に参加してみないか? 魔術師団長から教えを乞うのも皆に良い刺激になるだろうし。」

 と、ワシは世間話の一環で軽くそう提案してみると、ディエゴはキラッキラの瞳を向けてきた。

「何それ楽しそうですね! レタア様に教えを乞えるだなんて、幸福者でしかありません……!」

「いや、そんなに楽しいものでもないがな。ただ魔法を使い切るだけじゃから。」

「なんと! それはあのギルジアーノ国の書物に載っていた……!」

「うむ! あの子達もその練習法で微量ながら魔力量が増加したぞ。」

 ディエゴからは見えていないだろうが、窓側四人がいる場所を指差しながらそう伝えてみると、実現不可能だと言われていた訓練故に大層興味を持ったらしいディエゴ。

「今までの常識が覆ってしまう! さすがラールル氏ですね!」

「あー、うーん、そんなにすごいことはしていないつもりだがなぁ……。」

 いえいえそんなことあるんですよ! と一人力説するディエゴ。その勢いに飲まれないように一度深呼吸し、言葉を続ける。

「だがな、感知魔法を使えばそれはいとも簡単に成し得る。な? そんなにすごいことではないだろう?」

「だからその感知魔法を使える人間がいないんですってば!」

「あ、そのことに関しては、明日にでも話し合おうではないか。もっと簡単な呪文を誰もが扱えるように。」

「そ、そういうことならいつでも対応しますよ。」

「天下の魔術師団長様が何を言っておる。いつでもでなくて良い。」

 忙しいだろう、暗にそう伝えたが、こいつは聞きやしなかった。

「いえ、国の魔法力が上がるような事柄については、我が魔術師団では最優先事項だと決められておりますから。心配してくださらなくても大丈夫です。」

「そういうもんか?」

「そういうもんです。それくらい素晴らしいことをなさっているという自覚をお持ちください。」

「うう、ん……」

「もしかしてその反応……前世でのあなたの行いについても理解なさっておられないのですか? まさか!」

 ディエゴは信じられないと言わんばかりに絶句する。いや、何のことを言っているのかサッパリなんじゃが……?

「だってワシは魔法を生み出すことしか能がないんじゃよ? それなのに」

「それを言ったのは誰ですか!! まさか、魔術師団の……」

 ワシの言葉を遮るように叫ぶディエゴ。その慌てように、何があったとワシは首を傾げることしか出来なかった。

「うむ、ワシの魔法を持っていく担当の奴じゃな。毎回言われれば記憶力がないワシでも覚えるわい。」

「っ……!」

 事実を言ったまでなんだが、何か不都合があっただろうか。やっぱり分からず右に左に首を傾げるのだった。
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