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魔法学校編

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 自分を犠牲にするか、皆を犠牲にするか。そんな究極の二択を寮の部屋でウンウン考えていると、バサバサとどこからともなくやってきた鳥がワシの肩に止まる。

 それが手紙へと変化したのを見届けた後、それを開封する。

「ああ、ディエゴからか。」

 差出人はディエゴ。そういえば後で連絡すると言っていたっけ、と思い出した。

 中身を見てみると、どうやら件の討伐が来週末に決まった、とのことらしい。

 この前話の途中で逃げられたから、討伐の日は逃げられると思うなよ、と言ったようなニュアンス(自意識過剰)の文も添えられていたのは余談だが。

 ああ、やはり魔力を誤魔化したこと、まだ気になっているんだ……。そんなことを考えながら、その日を待つことにした。







 あれから幾つも日が経ち、いよいよ討伐当日。今回はきちんと準備も万全にしての参加だ。学園も休みの日なので、抜け出してもバレないはずじゃ。

 数日前に魔術師団の制服をディエゴから借り、それに着替えてから幻影魔法で見た目を変える。ワシが男だったらこんな見た目になるんじゃないか、みたいなイメージを持って。

 黒い軍服のような服に白金色の短髪をサラリと揺らし、切れ長の緑色目はキラリと光らせる。うむ、我ながら上手く魔法が使えたと自画自賛しておく。

 しかしどうしても声を変える手法は思いつかず、その声に合わせてあまり見た目年齢は高くしすぎなかった。

 それでも声変わりギリギリと言われても不審がられない程度の年までは上げておいたが。まさか幼子が討伐に参加するだなんて見くびられたくは無かったからな。



 さて、そんな準備も終わらせて集合場所へと向かう。寮の自室から出る前に気配消し魔法を自分に掛け、誰にも見つからないように学園の外へと歩く。

 学園の中で大きな魔法を使うと、魔力がそれなりにある人に感知されかねないからな。これ以上面倒ごとはごめんだ。


 正門を抜けた辺りでワシは転移魔法を使う。集合場所はこの前社会科見学した魔術師団の本拠地だ。

 前回も使った木の影に転移すると、そこにはもう既にたくさんの人が集まっていたらしかった。

 その木陰から集合場所の玄関前を覗いてみると、少し離れたこの場所からでもその緊張感は伝わってきた。それ程今回の討伐は危険で重大なものなのだろう。

 そんな空気の中、ワシはシラっと素知らぬフリをしながら列に並び、出発の時間を待つことにしたのだった。
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