千年生きた伝説の魔女は生まれ変わる〜今世の目標は孤独死しないことなのじゃっ!〜

君影 ルナ

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魔法学校編

5-44

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 トントンと団長室の扉を叩き、中から入室許可の声がかかった。ディエゴの声だ。

「失礼します。」
「……ああ! レタア様来てくださいましたか! さぁさぁこちらへ!」

 団長室と廊下を仕切る扉が閉まった瞬間、魔術師団長ともあろうお方がワシにへり下り始める。居心地の悪さを感じながら勧められたソファーにワシは座った。さすが団長室、座り心地はとても良い。

「いやぁ、こんな有様で申し訳ありません。何せ例の魔物騒ぎでてんやわんやしておりまして。」

 こんな、と部屋の中を指差すディエゴ。ああ、確かにこれは人に見せられない程散らかっているな。書類や書物で溢れ返り、足の踏み場はかろうじて細い一本道が扉と机を結ぶようにある程度、と言えば分かりやすいだろうか。

「それについて改めて謝らせてください。直前になって同行出来なくなり、申し訳ありませんでした。」

 ペコーっと頭を下げて謝る。何たって自分の魔力量を侮っていたことが原因で、魔物討伐に参加出来なかったのだから。魔力が尽きるだなんてつゆにも思わなかった、だなんて言い訳も出来ない。

「いえいえ、元々こちらが無理言ったんです、そこまで気になさらないでください。……それより、あなた様が魔力を使い尽くすだなんて、何がどうなったんです?」
「あー、ええと……魔法を馬鹿みたいに使い続けたせいです、ハイ。」
「ちなみにどの程度……?」

 あれ、ディエゴの目がキラっと輝き出したぞ。これは多分『ラールルの魔力量を推測出来る機会かも!』みたいなことを考えているに違いない。

「ラールル様の魔力はいかほどなんでしょう? 私、知りたいです!」

 ほらやっぱりー。分かりやすいと言えばそうなんじゃが、ここまで神聖化されても、ワシはただの魔法使いなだけなんじゃよ。

「えーとー……同時に十種類くらい?」
「……、」
「ディ、ディエゴ? おーい?」

 む、せっかく正直に話したと言うのに、ディエゴは反応一つ見せない。カチンと体を固め、呼吸も数秒止まったように見える。

 おーい、とディエゴの目の前で手を振っても駄目、目の前で手を叩いてみても駄目、それなら……

 魔法でディエゴの姿を写し取って、同じ見た目のミニ雪像を彼の隣にこれまた魔法で作る。

 魔法バカに対して目の前で魔法を使いに使うのが、魔法バカの意識をこちらに向ける得策だと思っているからな。

「はっ!? なんか今ものすごい場面を見逃した気がする!」

 ほらな。

「で、ワシを呼んだのは他に用事があるからか? でなければ他の生徒もいる前に伝達魔法を飛ばさないだろう?ディエゴはそんなリスキーなことはしないはずじゃ。」
「そう、でしたね……本題を忘れていました。例の件で新たに分かったことがあります。」

 そう言ってディエゴは表情をキリッと真剣に引き締めながら話し始めた。
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