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魔法学校編
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初対面の四人──失った記憶の中に生きる人物だろうが──は、何故こんなにもワシに良くしてくれるのだろう。ワシ、何か良い行いでもしたか?
そう不思議に思いながらも、フッと何かが頭をよぎった気がした。失った記憶のことだろうことは分かったが、やはり詳細は分からずじまい。モヤモヤは晴れなかった。
「ええと、この章かしら?」
グリタリアは調べ物の分野を見極め、脳内で自国語に直訳したものを紙へ書き出していく。ガウディロはそれを文章として正しく直していく。
横から覗いてみると、魔力とは何者か、ということを述べているらしいことは分かった。
「レタアちゃん、本探しは上手くいってる?」
「ミネル……どうやらワシはこの本を探していたようでな、今グリタリアとガウディロに翻訳を頼んでいるところじゃよ。」
「そっかー」
良かったねー、とミネルに頭を撫でられ、ワシはふふんと得意げに笑いながら頷く。頼もしい助っ人に、感謝の気持ちが溢れるのだ。
「このページは翻訳出来たよ。見てみてよ。」
そう言ってガウディロから渡された紙。それには魔力について、それもこの国トラントではあり得ないとされていた事柄について書かれていたようだ。
「十歳以上の魔力増強方法について、か……。」
「レタアがあたし達の為に情報を仕入れてくれてたんだよ。」
「……」
何か、何かがまた頭をよぎる。
そう、魔力が無いと周りから……蔑まれて……そして、そして……格差を無くそうと……。でも何故ワシがそこまで考え行動していたんじゃ?
あともう少し、あともう少しが思い出せない。喉元まで来てるはずなのに、口から出ないような。そんなもどかしさを感じる。
「まだ思い出せはしないが、やることは決まったな。」
何故ワシがそうしたのか。それも他人のために。それが分からないが、記憶を失う前のワシがそうしたいと思って行動していたのだろうことは分かっている。
何せ人に言われても納得しなければやらない人間じゃからな、ワシ。わあ、何という説得力!
……ゴホン。話の軌道修正を図らねば。ということでワシは本の続きを読み進めることにした。ふむふむ。
・十歳以上でも魔力の向上は見られる
・しかしその成長速度は幼少期よりも相当緩やかである
・その為十歳以上は魔力増強不可能説が有力だった
なるほどなぁ。それならどうすれば効率的に魔力増強出来るだろうか。
この本には『十歳以上でも魔力の向上は見られるが、目に見えて増える方法は確立されていない』とも書かれていた。
所謂机上の空論だが、みたいな注釈がつくような感じだろうか。
さてそうすると新たな問題が出たな。
どんな方法を持ってして魔力増強を可能とさせるか。
これを解決するためには、実践的で実験的な魔法演習しか無いだろう。とにかく動け、というわけじゃな! お、これはワシの得意分野じゃ!
「よし、じゃあこれから鍛錬しに行こう!」
ワシの突拍子もない言葉に、皆が皆目を点にしていた。解せぬ。
そう不思議に思いながらも、フッと何かが頭をよぎった気がした。失った記憶のことだろうことは分かったが、やはり詳細は分からずじまい。モヤモヤは晴れなかった。
「ええと、この章かしら?」
グリタリアは調べ物の分野を見極め、脳内で自国語に直訳したものを紙へ書き出していく。ガウディロはそれを文章として正しく直していく。
横から覗いてみると、魔力とは何者か、ということを述べているらしいことは分かった。
「レタアちゃん、本探しは上手くいってる?」
「ミネル……どうやらワシはこの本を探していたようでな、今グリタリアとガウディロに翻訳を頼んでいるところじゃよ。」
「そっかー」
良かったねー、とミネルに頭を撫でられ、ワシはふふんと得意げに笑いながら頷く。頼もしい助っ人に、感謝の気持ちが溢れるのだ。
「このページは翻訳出来たよ。見てみてよ。」
そう言ってガウディロから渡された紙。それには魔力について、それもこの国トラントではあり得ないとされていた事柄について書かれていたようだ。
「十歳以上の魔力増強方法について、か……。」
「レタアがあたし達の為に情報を仕入れてくれてたんだよ。」
「……」
何か、何かがまた頭をよぎる。
そう、魔力が無いと周りから……蔑まれて……そして、そして……格差を無くそうと……。でも何故ワシがそこまで考え行動していたんじゃ?
あともう少し、あともう少しが思い出せない。喉元まで来てるはずなのに、口から出ないような。そんなもどかしさを感じる。
「まだ思い出せはしないが、やることは決まったな。」
何故ワシがそうしたのか。それも他人のために。それが分からないが、記憶を失う前のワシがそうしたいと思って行動していたのだろうことは分かっている。
何せ人に言われても納得しなければやらない人間じゃからな、ワシ。わあ、何という説得力!
……ゴホン。話の軌道修正を図らねば。ということでワシは本の続きを読み進めることにした。ふむふむ。
・十歳以上でも魔力の向上は見られる
・しかしその成長速度は幼少期よりも相当緩やかである
・その為十歳以上は魔力増強不可能説が有力だった
なるほどなぁ。それならどうすれば効率的に魔力増強出来るだろうか。
この本には『十歳以上でも魔力の向上は見られるが、目に見えて増える方法は確立されていない』とも書かれていた。
所謂机上の空論だが、みたいな注釈がつくような感じだろうか。
さてそうすると新たな問題が出たな。
どんな方法を持ってして魔力増強を可能とさせるか。
これを解決するためには、実践的で実験的な魔法演習しか無いだろう。とにかく動け、というわけじゃな! お、これはワシの得意分野じゃ!
「よし、じゃあこれから鍛錬しに行こう!」
ワシの突拍子もない言葉に、皆が皆目を点にしていた。解せぬ。
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