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魔法学校編

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 ファッツァさんに会ってから、何となく朧げに記憶が戻る感覚を実感するが、依然としてあの四人の事だけは霞掛かったように思い出せないでいた。

 確か場所は何かの本を探していて……
 そこはハッキリ思い出せたので、ミネルが離れてワシ一人になったタイミングで室内を歩き回ることにした。

 いつも物忘れをして記憶を失うと、失った事は分かるのだが──覚えていることだけで過去を振り返ると、いつも整合性が取れないからな──思い出そうと言う気にはならないことがほとんどだ。

 というか忘れたままでいいや、と忘れたことも忘れる方向に頭を持っていくのが常だ。

 だからこそ、何故今回だけは思い出さなければいけないと直感的にも思ったのか、知りたいと思ったのだ。

 いつもと何かが違う。思い出さなければ、それこそ取り返しのつかないことになりかねない。そう誰かが警鐘を鳴らす。






 確かあの辺に行ったような……。記憶というよりも直感を信じて進んでいく。

 この図書館の中でも奥の奥へズンズンと歩みを進め、読めない題名の背表紙がズラっと並ぶ一角に辿り着いた。

 さて、どれだろうか。ワシ、他国語は読めないと言うのに……この中からお目当ての本など見つけられるのか?

 そんな不安を吹き飛ばすように、隣に立った見知らぬうちの一人がワシの背中をポンと叩いた。

「はじめまして、になるかな? あたしはユーリ。呼び捨てで良いしあたしも呼び捨てるから覚悟しといて! よろしく、レタア!」
「丁寧にありがとう、ユーリ。こちらこそよろしく、なのじゃ!」

 握手を交わし、さて本探しを続行しようとしたところで、ユーリがまた話しかけてきた。

「で、本を探しているんだよね? あたし達も手伝うよ。ガウディロとグリタリアはギルジアーノ語も少し齧っているらしいから、すぐ見つかるよ!」

 ユーリはそう言って一緒に本の背表紙をなぞる。

「なあ、ユーリ。ワシは一体何の本を探していたんだ? それも他国のなんてこれまで読もうと思ったことも無かったし……」

「うーん、そうだなぁ……レタアはね、落ちこぼれのあたし達のことを憂いてくれてね、そのために普段誰も読まないような難しい専門書を探して読み解こうとしてくれていたんだ。ホント、ありがたいよ。私たちにできる事は少ないから……」

「ん? 何を言っているんじゃ? 今に関して言えば、ワシより遥かに出来る事は多いだろう? ワシは他国が読めないし、今探している本は何についてなのかも知らないし……。ほら、物忘れが激しいワシより充分出来ることは多いじゃろう?」

 素直な感想を述べると、ユーリはクシャリと顔を歪めた。え、あれ、何か間違ったこと言ったか!?

 内心ワタワタと慌てるしか、今のワシに出来ることは無かった。
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