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魔法学校編
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用事も不発に終わり、他にやることもできたので学園にすぐ戻ることにした。その足で、学園内の図書館のうちの一つに向かう。もちろん、幻影魔法は解いてから。
さて、補足だが、この学園には三つの図書館がある。第一図書館は学園で学ぶ際に使われる資料が多数所蔵され、第二図書館は小説などの娯楽ものが多数所蔵されている。
そして今回の本命、第三図書館は学園の授業では使われないほどコアで難解な専門書が多数所蔵されている。そのため、余程熱心な人間くらいしか利用しない。
休日の、しかも図書館の中でも一番人気のない第三図書館はとても静かだった。こう、人の気配すら感じられない静けさ、と言うのだろうか。
「……」
そんな中をスタスタと早足で進む。そういえば他国の専門書を見る機会を今まで作ってこなかったな、と少し反省しながら背表紙をなぞる。ええと、魔力学、魔力学……
「これ、か……?」
トラント語に翻訳されたそれっぽい本を一冊見つけた。それを引き抜いてパラパラと斜め読む。
……うーむ、ハズレだったな。ワシでも知っていることしか載っていない。
しかしここら辺にある本の中で、魔力学の専門書は今手に取っているこれくらい。他は入門編ばかり──と言っても、ラールルから見ての、だが──。
「ううーん……」
イーニャお婆ちゃんが言っていた専門書とやらは、この本では無さそうだし……。もっと専門的なものを探し当てられるだろうか、と不安に駆られる。
「何かお探しかな?」
「ひょっ!?」
そんな風に考え後をしていたのが悪かったのだろうか。背後から、それも音も無く近付かれ、急に声を掛けられた。このワシが人の気配に気付けないなんて、なんたる不覚! 思わず変な声を出してしまったではないか!
羞恥に顔を染めていると、クスクスと笑う声が聞こえる。声の主に一言言ってやろうと振り向くと、見かけないオジサンがそこにはいた。
「まさかそこまで驚かれるとは思ってませんでした。で、今日は何をお探しに?」
「……」
明らかに不審者めいているそのオジサンに、疑いの目を向けてしまうのも自然だろう。
「ああ、申し遅れました。私は第三図書館の司書、ファッツァ・ヒーラリングと申します。」
「あ、えと、レタア……です?」
不審者じゃなかったことに内心安堵し、ファッツァさんの『探している本を教えてくれ』という表情にワシは答える。
「えと、魔力学の専門書で……この本よりも専門的なものってありますか?」
先程手に取った本を指さしながら聞いてみた。
さて、補足だが、この学園には三つの図書館がある。第一図書館は学園で学ぶ際に使われる資料が多数所蔵され、第二図書館は小説などの娯楽ものが多数所蔵されている。
そして今回の本命、第三図書館は学園の授業では使われないほどコアで難解な専門書が多数所蔵されている。そのため、余程熱心な人間くらいしか利用しない。
休日の、しかも図書館の中でも一番人気のない第三図書館はとても静かだった。こう、人の気配すら感じられない静けさ、と言うのだろうか。
「……」
そんな中をスタスタと早足で進む。そういえば他国の専門書を見る機会を今まで作ってこなかったな、と少し反省しながら背表紙をなぞる。ええと、魔力学、魔力学……
「これ、か……?」
トラント語に翻訳されたそれっぽい本を一冊見つけた。それを引き抜いてパラパラと斜め読む。
……うーむ、ハズレだったな。ワシでも知っていることしか載っていない。
しかしここら辺にある本の中で、魔力学の専門書は今手に取っているこれくらい。他は入門編ばかり──と言っても、ラールルから見ての、だが──。
「ううーん……」
イーニャお婆ちゃんが言っていた専門書とやらは、この本では無さそうだし……。もっと専門的なものを探し当てられるだろうか、と不安に駆られる。
「何かお探しかな?」
「ひょっ!?」
そんな風に考え後をしていたのが悪かったのだろうか。背後から、それも音も無く近付かれ、急に声を掛けられた。このワシが人の気配に気付けないなんて、なんたる不覚! 思わず変な声を出してしまったではないか!
羞恥に顔を染めていると、クスクスと笑う声が聞こえる。声の主に一言言ってやろうと振り向くと、見かけないオジサンがそこにはいた。
「まさかそこまで驚かれるとは思ってませんでした。で、今日は何をお探しに?」
「……」
明らかに不審者めいているそのオジサンに、疑いの目を向けてしまうのも自然だろう。
「ああ、申し遅れました。私は第三図書館の司書、ファッツァ・ヒーラリングと申します。」
「あ、えと、レタア……です?」
不審者じゃなかったことに内心安堵し、ファッツァさんの『探している本を教えてくれ』という表情にワシは答える。
「えと、魔力学の専門書で……この本よりも専門的なものってありますか?」
先程手に取った本を指さしながら聞いてみた。
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