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魔法学校編

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「で、今日来た用件は何だい。ただ駄弁りに来たわけじゃないだろう?」
「……ハッ! そうじゃった! 確かに、近況報告もするつもりだったが、そうじゃ、本題を忘れていた。魔道具を買いに来たんじゃ!」
「そうかい。……で、何が欲しいんだい?」

 イーニャお婆ちゃんに促され、ワシは異空間に仕舞っておいたケイタイを取り出す。

「これ、ミネルが発案したケイタイ。これをあと四つ作って欲しい。」

 ワシは件の魔道具を見せると、イーニャお婆ちゃんはくしゃりと渋い顔を見せた。

「よりによってこれかい。……そうだねえ、これはあまり世に出して欲しくは無い代物なんだけれどもねぇ……」
「何故じゃ?」

「アンタねぇ……はぁ、いいよ、教えてやる。」

 あまりにも俗世に疎いワシに呆れたようにため息を吐いたイーニャお婆ちゃん。ワシは自身がそこまで世間知らずな印象は無かったのじゃが……考えを改めなければならないようだ。

「まずこの世界の前提だがね、迅速なやりとりは魔力持ちの特権なんだよ。それを覆すこの魔道具は、魔力持ちから強く非難されるだろう。製作者のわえも、発案者のミネルも。」

 特権とか考えたこともなかった。そうか、そんなものもあるのか。周りの人間を危険に晒してまで、この魔道具が欲しいわけでは無いからな、スッパリ諦めようか。

「そうか。それは駄目じゃな。」

「あんたたち二人しか持っていなければ、やりとりは二人の間でしか交わされない。だからワイは制作を了承したんだ。あまりこれを広めたくは無い。分かっておくれ。」

「あぁ、もちろんわかった。窓側の皆との連絡方法はまた別の手段を考えることにする。」
「そうしておくれ。」

 そうするとどうしたものか。窓側の皆は魔法を使えるほどの魔力すらないからな、伝達魔法を駆使することもできない──だからこそケイタイを渡そうと思ったんだが──。それなら、それなら……

 良い方法が無いかウンウン考えると、そもそもの前提が気になってしまった。

「なあ、イーニャお婆ちゃん。」
「なんだね?」
「十歳を過ぎてから魔力量を増やす事は、やっぱり不可能なんじゃろうか?」

「うーん、そうだねぇ……ずいぶん前に見た他国の魔力学の専門書には『可能』とは書いていたような気がするんだけど……それでも机上の空論だ、と注意書きされていたような……?」
「他国の……」

「ああ、なんでも、この世界でも随一の魔法大国、ギルジアーノの学者が著者だったはずだからな。」

 ほう、それはワシも知らん情報だな。

「魔力量が世界一多いのは、今も昔もラールルに変わりはないだろう。だが、生活する上で難なく使える程の魔力量を持つ人間の割合の多さは、きっとギルジアーノが世界一だろうね。」

 ああ、イーニャお婆ちゃんに聞いて良かった。良い情報を得られたのだから。ほんの少し希望が見えた。

 ワシが次、何をすれば良いか。それがハッキリした。まずはその専門書を探す事だろう。
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