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魔法学校編

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 さて、全員巻き込むと決めたは良いものの、具体的な方法なんてすぐには思いつかない。男子生徒さんだって反対意見の方に少し傾いているんだ。説得するには何か策が必要か。

「男子生徒さん、君が不安なのは何に対してじゃ?」
「あ、そ……それは……」

 取り敢えず情報収集から、じゃな。しかし言いづらそうに目を泳がせる男子生徒さん。

「レタア、その子の名前はガウディロ・マズーカ。マズーカ子爵の三男よ。ああ、ちなみに出て行った彼女の名前はグリタリア・プファニスト。プファニスト伯爵の次女よ。」

 ユーリはいろんなことを知っているんじゃな。ふむふむ、と小さい脳みそにその名前を叩き込んだ。マズーカさんにプファニストさん。よし、多分覚えた。

「で、マズーカさんは何が不安じゃ? 言いたいこと、全部ぶちまけてしまえ。」
「……家名で呼ばないで欲しい。余計惨めになる。」
「分かった。ガウディロさん、何が不安じゃ?」

 真剣な表情でワシがそう問えば、根負けしたと言いそうな表情を浮かべた後、キュッと苦しげな顔で吐露する。

「一番後ろと関わって、窓側隣り合って、いじめられるのが嫌だ。今よりもっと見放されるのが嫌だ。僕だって必要とされたい。この魔力量に好きで生まれたわけじゃない。なのにっ……!」

 ふむ、ガウディロさんの話を聞いて気が付いた。よくよく考えたらここにいるのって十歳かそこらの子供じゃよな、と。

 その年でこんな重荷を背負わされるなんてたまったもんじゃないよな。十歳なんてもっと無邪気にはしゃいでいる位がちょうどいいと言うのに。

 ガウディロさんの言葉を聞いてぼんやりと、でも明らかな怒りと共に、心の中で新たな目標をワシは立てた。

『魔力の差で迫害される子がいなくなる世界を作る』

 これしかないじゃろう! その第一歩として、Iクラスの窓側の格差をなくす。それが良いだろう。うむ、そうしよう。そのためにもまずはワシが窓側内の認識を変える。

「よく言ってくれた。そうじゃな……馴れ合いと言うと尻込みするかも知れんが、これならどうじゃ? ワシは魔力量で差別する奴らを平和的にギャフンと言わせたい。だからそれに協力してくれんかの?」

 ワシの漠然とした提案にハッとガウディロさんの顔が上がり、目が合った。その目はキッと凛々しく光り、雄弁に語った。『やってやる』と。

「え、そ、そうなるの? 私には無理じゃないかな……でもギャフンは見てみたいかもしれない……」
「あたしはその提案、乗った! ただ馴れ合いする、って言うのよりも楽しそう!」

 現実的で慎重派なニイナ、情報通でノリも良いユーリ、そして……

「ぼ、僕に何が出来るかな?」

 固い意志を持ち自分にできることを、とすぐさま思考巡らせるガウディロさん。きっと元々頭が切れるのだろう。

「うーん、どうするかなぁ……実は具体案はまだ思いつかなくてな……」

 ワシに出来ることは、なんじゃろうか。
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