千年生きた伝説の魔女は生まれ変わる〜今世の目標は孤独死しないことなのじゃっ!〜

君影 ルナ

文字の大きさ
上 下
125 / 200
魔法学校編

5-4

しおりを挟む
「これからフラムレイール学園、第二九四八期生入学試験を始める。呼ばれた者から順に前に出なさい。」

 そう宣言したのは老齢の女性。この人が現在の学園長なのだろう。周りのどの人よりも貫禄があるからな──間違えていたらどうしよう?──。

「──、」
「──、」
「──、」
「──、」

 幾つもの名前が呼ばれ、皆が皆ワシが前世の時に作った『感知魔法を埋め込んだ魔道具』に触れる。そしてその魔道具が弾き出した魔力の数値を、傍にいる先生らしき大人が記録する。

「ミネルヴァ・キール伯爵令嬢」
「はい」

 ようやくミネルの番が回ってきたらしい。呼ばれたミネルはまさしく貴族の立ち居振る舞いを見せる。

 とても綺麗にシズシズと歩き──いつものお転婆なイメージからかけ離れている──魔道具の前で立ち止まった。

 そしてミネルが魔道具に触れて数値を叩き出すと、傍らの先生の顔色が変わる。天才がいる、とでも言いそうな顔じゃな。

 その魔力量をワシが底上げした、と考えると鼻が高い。ワシは内心ドヤ顔するが、まあ、誰も気付くわけもなかった。




「レタア」

 それからまたしばらくして、やっとワシの番が回ってきた。まあ、聞いている感じだと身分順に呼ばれていたようじゃったからな。平民であるワシは最後の方なのは仕方なし。堂々と道を歩く。

 周りは『平民の癖にこの学園に通うつもりなの?』と言わんばかりの視線とヒソヒソ声。まあそれも仕方なし。名前だけ、イコール平民という図式はこの世界の常識だから。

 前世で向けられていた『化け物を見るような視線』よりかはマシってもんじゃ。

 それよりも自分が作った魔道具を自分が使うのは滅多にないことで、他の人とはまた違った意味でドキドキしながらそれに触れる。

「……」

 分かっていたことじゃが、傍にいた先生は分かりやすく顔を顰める。平民というだけでも貴族連中からすれば目の上のたんこぶなのに、更に落ちこぼれときた。仕方ない反応だ。

 それにしても、阻害魔法を掛けているのに、この学園に入学出来るほどの魔力は表示されてしまうらしい。今まで気がつかなかったが、なかなか面白いことじゃな。あとで研究の余地あり、じゃ。

 内心ワクワクするワシとは反対に、すごく嫌そうな顔をしながら記録を済ませた先生は、もう戻りなさい、と強めに言う。それに従ってワシは素直に席に戻る。

「レタアちゃん、あの先生……」

 先に戻っていたミネルがあれを見て苦い顔をする。

「やっぱりレタアちゃん、魔力偽らない方が良かったんじゃない?」
「いや、化け物を見る目で見られるよりはマシじゃよ。」

 ワシのその言葉に、ミネルはもう何も言わなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!

つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。 他サイトにも公開中。

巻き戻ったから切れてみた

こもろう
恋愛
昔からの恋人を隠していた婚約者に断罪された私。気がついたら巻き戻っていたからブチ切れた! 軽~く読み飛ばし推奨です。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

処理中です...