千年生きた伝説の魔女は生まれ変わる〜今世の目標は孤独死しないことなのじゃっ!〜

君影 ルナ

文字の大きさ
上 下
123 / 200
魔法学校編

5-2

しおりを挟む
 ぶつかった黒髪金目の男子生徒はきっと上級生。なんたって制服も着ているし、ワシよりも随分背が高い──今まで自身に掛けていた幻影魔法は勿論解いてある。身体年齢は十歳なのに見た目が十五歳だと怪しまれるからな。人間はいつの時代も異端を排除する傾向にあるのも熟知している──。

 今世生まれてこの方関わりのある同世代はミネルくらいだからな──誰じゃ、前世を合わせてもそれが皆無だったろうと言うやつは──、なぜこの人がわしを知っていたのか、そもそもこの人が何者なのか。ワシには見当もつかない。

「……ハッ、そんなゴミ屑みたいな魔力でこの学園に通おうとしているのか? ……分かっているだろうが我がクラスティルの名を騙ろうとするなよ」

 黒髪金目はワシを蔑む目で睨み、言いたいことを言うだけ言って去っていった。

 ……クラスティルはワシの生家だが、『我が』ということは身内……?

「あ、もしかして!」

 思い至る人物が一人浮かんだ。ワシの今世の実の兄ではなかろうか! 薄ぼんやりとした記憶の中に、先程の人物がぼやぁっと浮かび上がる。ちなみに鮮明には思い出せないのだが、なんとなくの色味で判断した。

「うわー、記憶の中のお兄様は優しかったのに、今会ったのは典型的な嫌なやつじゃったな。」

 時間はこうも残酷なのか……と内心ハンカチを目頭に当てて涙を拭う。まるで親目線じゃな。まぁ、精神年齢的にはお婆ちゃん目線とも言えそうじゃが。

 それにしてもあの家、今でもどうやら魔力絶対主義……とでも言うのか。まぁ、そんな凝り固まった考え方じゃから魔力がほぼない(ように見える)ワシを勘当したのじゃろう──追い出された当初はわからなかったが、歳を重ねるにつれ周りを見る余裕が出来たからこそ、ワシもそれを理解したのじゃが──。

 確かに魔力が豊富ならば寿命にも変化があるし魔法は使いこなせれば実に便利。更に言えば有用なエネルギー源ともなり得る。そんな利点から、魔力絶対主義になるのも分からなくもない。

 しかし最近のワシは、それだけが全てではないのではないか、と考えている。まぁ、魔法の天才がなんか言ってる、とは言われそうじゃが。

 その発想に至ったのは勿論魔法を禁じられていたあの期間があったから。

 ワシの最大にして唯一のものが封じられ、その期間中は魔力なしの生活を送らざるを得なくなった。あの時はただ不便を感じるだけでなく、唯一の利点が一時的とは言え消えたことで、

『理由の分からない焦燥感』

『魔法以外何も出来ない無力感』

『魔法があるからこそ成り立つ人間関係が壊れることへの不安』

  エトセトラエトセトラ……

 色んな感情に振り回されていて。自分でもよく分からない状態になっていた。後々冷静になってから考えると、相当追い込まれていたらしい。

 そんなワシを見放さずにいてくれたミネル始めたくさんの人のおかげで、立ち直れたし意識改革も遂げた。


 だからじゃろうか。クラスティル家の方針に対して敏感になってしまうのは。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!

つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。 他サイトにも公開中。

巻き戻ったから切れてみた

こもろう
恋愛
昔からの恋人を隠していた婚約者に断罪された私。気がついたら巻き戻っていたからブチ切れた! 軽~く読み飛ばし推奨です。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

処理中です...