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魔法教師編

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 パチリ。目が覚めた。はて、ワシ、いつの間に眠っていた……? 寝起き故のぼんやりとした頭でなんとか考えをまとめようと試みる。

 そもそもここは見知らぬ部屋のようじゃが、どこじゃろうか。分からん。しかし随分と眠り心地の良い布団じゃ。もう少し眠っていても……

 布団にくるまって色々考えながら微睡んでいると、控えめなノック音が聞こえた。

「失礼致します。お目覚めになられましたか、レタア様。」

 部屋に入ってきたのは白い髭がチャームポイントのお爺ちゃんじゃった。ええと……どなた様でしょう?

「うーん……」

 それを聞くためにも体を起こそうとすると、重だるさを感じた。なんじゃ、これ。起き上がれん。

「ああ、無理はなさらないでくださいね。レタア様は四日も眠っておられたのですから。」
「……よ、四日も?」
「左様でございます。」
「そう、ですか。」

 それならこの重だるさも納得じゃ。まあ、それなら回復魔法を使えば……

「なりません!」
「……へ?」

 いつものように回復魔法を使おうとするとお爺ちゃんに止められる。なんじゃなんじゃ?

「レタア様が倒れられた原因は魔力切れです。なので私の許しが出るまでは魔法の使用は控えてください。ああ、申し遅れました。私はキール伯爵家専属医師のヴァリアスでございます。」

 ワシにとって衝撃的な言葉に、驚きと共に疑いの目をお爺ちゃん……ヴァリアス先生に向けてしまった。そしてその他の情報が頭に入って来なかった。

「……何かの間違いではないですか? ワシが魔力切れなんておかしいじゃあないですか。」
「何故そう言い切れるんですか。」
「今まで生きてきて一度も魔力切れなんて起こしたことなど……」

「ええ、確かにあなた様の魔力量は凄まじいものでございます。しかしだからといって魔力切れが起きない理由にはならないのです。」

 そんなことあるのか? このワシじゃぞ? 魔力なんて有り余る程保有しているというのに……?

「……で、ちなみに魔力切れを起こす前、いくつの魔法を使ってたんです?」
「ええと……確か……」

 分からぬままヴァリアス先生に言われるがまま指折り数えてみると……


・幻影魔法(十五歳の見た目に変化)
・感知阻害魔法(魔力量を隠すため)
・氷魔法(氷の剣の維持、最後の一掃)
・回復魔法(ワシとアルタの二人分)
・気配消し魔法(ミネルと、途中からアルタも)
・感知魔法(あとで記録する為)
・鈍化魔法(ほんの少し魔物の動きを鈍化させていた)
・探知魔法(最後の一掃時)
・収納魔法並びに時間経過を止める魔法
・転移魔法(行き帰り二回分)


「十個です。」

 馬鹿正直にヴァリアス先生の問いに答えると、ヴァリアス先生はワシのことを呆れた目で見た。

「そもそもあなたの保有する魔力量を見て、何故魔力切れになったかと思ったら、そんなに……」

 はぁー……と長い長ーい溜息を吐いたと思ったら、キッとワシを睨むように見つめてきた。こ、怖っ。

「良いですか! しばらくの間は絶対安静ですからね! 魔力切れは命にも関わる問題です! それを見過ごすのは医者として看過できません! なので魔法しばらく禁止! 良いですね!?」
「うぉう……は、はい……」

 ヴァリアス先生の勢いが良すぎて思わず了承してしまったではないか。
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