77 / 200
冒険者編
3-32
しおりを挟む
「さて着いたな。っと……」
先程も来た前世の我が家に転移する。ワシが死んでから何百年と経っているはずなのに、崩れ落ちることも無さそうじゃ。随分頑丈な作りの家だったのじゃな。感心感心。
「取り敢えずリビングだけ掃除するからな。ちょっと待っててくれ。」
「ほーい!」
「う、うん……」
二人には外で待っててもらい、一人家に入り早速リビングに浄化魔法を掛ける。これで埃は取れたかの。後は一応窓でも開けとくか。今の季節はそこまで暑くも寒くもないからな。
ガタンと音を立てて窓を開けると、森の中特有のあの澄んだ空気が部屋に入ってくる。ああ、懐かしい。ここで暮らしていたんだ、と昔を思い出す。
「あとはお茶でも……」
待てよ、もうこの家にあるお茶っ葉は使えないのではないか? カポリとお茶っ葉が入っている缶を開けるが……やっぱりやめとくか。何百年前のものか分からないからな、これ飲んでお腹壊したら辛いものじゃ。
しかし水は魔法で作れども、お茶っ葉は魔法で作り出せない。ううむ、ううむ、どうしたものか……
そう考えを巡らせながら二人をリビングに招き入れる。あ、そうじゃ、あの手があった!
「二人とも、飲み物はジュースでもいいか?」
「お構いなくー。」
「あ、うん。何でも大丈夫。」
「じゃあちょっと待っててくれ。」
生前お世話になったアレを使えばもしかしたら……
家の外に一度出て、家の裏に回る。そこには一本の大木があった。ああ、まだ枯れていなかったか。良かった。ホッと息を吐く。
この木には随分お世話になった。前世は食べることに頓着しなかったから、この木になる実を食べて飢えをしのいでいたっけ……。しみじみと前世に想いを馳せる。
この木は一年を通して実をつける特殊な木なので、今も赤々とした実をつけている。ワシはそれを風魔法を使って落とし、拾う。
三つ四つ同様に落として拾う。これくらいあれば充分じゃろう。その果物(名前は知らん)を両手に抱えて家に戻る。
コトリ、椅子に座る二人の前に先程採ってきた果物を刻んだジュースを置く。
ワシも空いている椅子に座り、ふっと一息つく。
「さて、二人とも。聞きたいことがあるんじゃろう?」
「じゃあ僕から……良い?」
「良いぞ。」
アルタが先に質問するらしい。
「あのさ……」
言いづらそうに、でもしっかりとワシの目を見て口を開いた。
先程も来た前世の我が家に転移する。ワシが死んでから何百年と経っているはずなのに、崩れ落ちることも無さそうじゃ。随分頑丈な作りの家だったのじゃな。感心感心。
「取り敢えずリビングだけ掃除するからな。ちょっと待っててくれ。」
「ほーい!」
「う、うん……」
二人には外で待っててもらい、一人家に入り早速リビングに浄化魔法を掛ける。これで埃は取れたかの。後は一応窓でも開けとくか。今の季節はそこまで暑くも寒くもないからな。
ガタンと音を立てて窓を開けると、森の中特有のあの澄んだ空気が部屋に入ってくる。ああ、懐かしい。ここで暮らしていたんだ、と昔を思い出す。
「あとはお茶でも……」
待てよ、もうこの家にあるお茶っ葉は使えないのではないか? カポリとお茶っ葉が入っている缶を開けるが……やっぱりやめとくか。何百年前のものか分からないからな、これ飲んでお腹壊したら辛いものじゃ。
しかし水は魔法で作れども、お茶っ葉は魔法で作り出せない。ううむ、ううむ、どうしたものか……
そう考えを巡らせながら二人をリビングに招き入れる。あ、そうじゃ、あの手があった!
「二人とも、飲み物はジュースでもいいか?」
「お構いなくー。」
「あ、うん。何でも大丈夫。」
「じゃあちょっと待っててくれ。」
生前お世話になったアレを使えばもしかしたら……
家の外に一度出て、家の裏に回る。そこには一本の大木があった。ああ、まだ枯れていなかったか。良かった。ホッと息を吐く。
この木には随分お世話になった。前世は食べることに頓着しなかったから、この木になる実を食べて飢えをしのいでいたっけ……。しみじみと前世に想いを馳せる。
この木は一年を通して実をつける特殊な木なので、今も赤々とした実をつけている。ワシはそれを風魔法を使って落とし、拾う。
三つ四つ同様に落として拾う。これくらいあれば充分じゃろう。その果物(名前は知らん)を両手に抱えて家に戻る。
コトリ、椅子に座る二人の前に先程採ってきた果物を刻んだジュースを置く。
ワシも空いている椅子に座り、ふっと一息つく。
「さて、二人とも。聞きたいことがあるんじゃろう?」
「じゃあ僕から……良い?」
「良いぞ。」
アルタが先に質問するらしい。
「あのさ……」
言いづらそうに、でもしっかりとワシの目を見て口を開いた。
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました
言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。
貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。
「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」
それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。
だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。
それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。
それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。
気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。
「これは……一体どういうことだ?」
「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」
いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。
――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる