56 / 199
冒険者編
3-11
しおりを挟む
「なぬ!? あのセンプウキ、ミネルが提案したのか!?」
「そうだよ!」
あれは組み込まれた術も素晴らしいが、魔力の無い人間が風を起こして涼めるという発想も素晴らしいものじゃ。それをミネルが提案したなど思ってもみなかった!
「こんなに小さいのに……すごいな。」
ワシの隣にいるマルがボソッと感心したように呟いた。ああ、そうか。ワシには教えてくれたがマルとアルタには言ってなかったものな。ミネルも転生者だということを。まあ、教えたとしても信じるかどうかは分からんからな、言わないでおいた方が良いじゃろう。
「そうじゃな。……っと、着いたな。」
「婆ちゃーん!」
バーン、と臆することも無く魔道具屋に入っていくミネル。おお、その勢いは見習いたいものじゃな。ワシは昨日イーニャお婆ちゃんに追い出されたからな。なんとなく気まずいのでおずおずと静かに魔道具屋に入る。
魔道具が置かれた一室はやはり薄暗い。電気つけちゃ駄目かの?
「……ああ、ミネルヴァか。」
店の奥からヌッと出てきたイーニャお婆ちゃん。おお、ちょっとびっくりした。もう少しお客が驚かない出方をした方がいいのではなかろうか。
「ば、婆ちゃん!その名前は……!」
イーニャお婆ちゃんの言葉を聞いて急に焦り出すミネル。対してイーニャお婆ちゃんはこれまた優しそうな顔でミネルを見つめている。そう、顔は優しそうなんじゃがの、多分性格がキツイのじゃろう。昨日ワシを追い出したくらいなのじゃから!
「……ん?『ミネルヴァ』?」
あれ、イーニャ婆さんは『ミネル』と音が似た名前で呼んでいた。……なるほど、偽名か。
「あ、えと、その……」
(多分)本名を知られてしまってあたふたと慌てるミネル、そしてワシらがいることに今気がついて驚くイーニャお婆ちゃん。
「……ああ、なんだい、お前さんかい。覚えているぞ。」
イーニャお婆ちゃんにビシッと指をさされる。き、気まずいな。
「き、昨日ぶりじゃな~……」
「なんでミネルヴァと一緒なんだか。」
「ああ、それは……」
かくかくしかじか。軽く先程の出来事を説明するとイーニャお婆ちゃんは納得したようだった。
「ふん、そうかい。ミネルヴァ、だからわえは一人で来るのは危ないと言っただろう? これからは誰かに事情を話して付いてきてもらいなさい。まだそんなに小さいんだから。」
「えー。だって……(前世の記憶があるとか言ったら頭おかしい人だって思われちゃう!)」
イーニャお婆ちゃんに諭されるが、ミネルは不満そうに頬を膨らませて反論しようとしていた。側から見れば小さい子が駄々をこねているように見えて少し微笑ましいものじゃな。
……そこ、ワシと同い年だろうとか言わないの。
「そうだよ!」
あれは組み込まれた術も素晴らしいが、魔力の無い人間が風を起こして涼めるという発想も素晴らしいものじゃ。それをミネルが提案したなど思ってもみなかった!
「こんなに小さいのに……すごいな。」
ワシの隣にいるマルがボソッと感心したように呟いた。ああ、そうか。ワシには教えてくれたがマルとアルタには言ってなかったものな。ミネルも転生者だということを。まあ、教えたとしても信じるかどうかは分からんからな、言わないでおいた方が良いじゃろう。
「そうじゃな。……っと、着いたな。」
「婆ちゃーん!」
バーン、と臆することも無く魔道具屋に入っていくミネル。おお、その勢いは見習いたいものじゃな。ワシは昨日イーニャお婆ちゃんに追い出されたからな。なんとなく気まずいのでおずおずと静かに魔道具屋に入る。
魔道具が置かれた一室はやはり薄暗い。電気つけちゃ駄目かの?
「……ああ、ミネルヴァか。」
店の奥からヌッと出てきたイーニャお婆ちゃん。おお、ちょっとびっくりした。もう少しお客が驚かない出方をした方がいいのではなかろうか。
「ば、婆ちゃん!その名前は……!」
イーニャお婆ちゃんの言葉を聞いて急に焦り出すミネル。対してイーニャお婆ちゃんはこれまた優しそうな顔でミネルを見つめている。そう、顔は優しそうなんじゃがの、多分性格がキツイのじゃろう。昨日ワシを追い出したくらいなのじゃから!
「……ん?『ミネルヴァ』?」
あれ、イーニャ婆さんは『ミネル』と音が似た名前で呼んでいた。……なるほど、偽名か。
「あ、えと、その……」
(多分)本名を知られてしまってあたふたと慌てるミネル、そしてワシらがいることに今気がついて驚くイーニャお婆ちゃん。
「……ああ、なんだい、お前さんかい。覚えているぞ。」
イーニャお婆ちゃんにビシッと指をさされる。き、気まずいな。
「き、昨日ぶりじゃな~……」
「なんでミネルヴァと一緒なんだか。」
「ああ、それは……」
かくかくしかじか。軽く先程の出来事を説明するとイーニャお婆ちゃんは納得したようだった。
「ふん、そうかい。ミネルヴァ、だからわえは一人で来るのは危ないと言っただろう? これからは誰かに事情を話して付いてきてもらいなさい。まだそんなに小さいんだから。」
「えー。だって……(前世の記憶があるとか言ったら頭おかしい人だって思われちゃう!)」
イーニャお婆ちゃんに諭されるが、ミネルは不満そうに頬を膨らませて反論しようとしていた。側から見れば小さい子が駄々をこねているように見えて少し微笑ましいものじゃな。
……そこ、ワシと同い年だろうとか言わないの。
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する
清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。
たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。
神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。
悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる