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追い出されたよ編

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 ポロロンを出てきたワシははたと立ち止まる。

「さて、これから何をしようか……」

 何か他に用事がまだあったような気もするが……ううむ、思い出せん。頭を捻っても首を捻っても思い出せん。

「ま、忘れる程の用事なのじゃろうし、今思いついたことをしよう!」

 よし、そうしようか。ええと、何をしよう……。首を捻って考える。

「そうじゃ、魔道具屋とかがあれば見ていくか。」

 前世のワシの趣味の一つは魔道具を作ること。今の流行とかあればチェックしておくのもいいじゃろう。そして時間とお金の余裕が出来たらまた魔道具を自作しよう。よし、そうしよう。

「さて、テキトーに街を見て回るか!」

 この街に早く馴染むためにも魔道具屋に限らず色々と見て回って顔を覚えてもらおう。そうすればワシの目標にも近づくというもの。魔道具も見れて顔も覚えてもらえて、一石二鳥ってやつじゃな!














「魔道具屋~はどこかいな~」

 ふんふんと鼻歌を歌いながらぐるりぐるりと周りを見回すと、前方に魔道具屋の文字が見えた。

 みっけた! ええと、看板を見ると……『アーニャ婆さんの魔道具屋』と書かれていた。

「ということはここの店主はアーニャ婆さん……なのか?」

 ふむ、どんな婆さんが出てくるか楽しみじゃな。まあ、ワシと比べたらこの世界のどの婆さんもまだひよっこじゃがな! 百年そこらならワシの人生の十分の一と言ったところじゃからの!

 誰が聞いているわけでもないのにえへんと胸を張る。



 よし、とにかく入ってみるか。古びた扉を押すとカランカラン、ドアに付いていた鈴が鳴って来客を知らせた。

「……。」

 ワシはまず店内が薄暗いことに驚いてしまった。はて、薄暗いのには何か理由でもあるのじゃろうか。ワシは魔道具に関して言えば素人に毛が生えた程度なのでそこんところはよく分からん。

「ごめんくださーい。」
「……。」

 返事はない。はて、店員は見えないが店内を見て回ってもいいじゃろうか。

「ワシ、店内見て回っちゃうぞー。」
「……。」

 もう一度店内に響く程度の声で聞き、耳に手を当てて返事を期待する。しかし何も聞こえない。……よし、沈黙は肯定だと捉えるぞ! 見て回っちゃうぞ!

 ということで扉の近くにあった魔道具を手に取ってみる。

「お、これは……?」

 組み込まれている術式を見ると、風の魔法が書かれていた。はて、これはどう使うのじゃろうか。

「見ない顔だねぇ。」

 なんじゃろうなんじゃろうと考えていたその時、店内の奥から嗄れた婆さんの声が聞こえてきた。
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