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二章 六月のほたるい
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『ストレスが溜まれば心身ともに影響が出る。ところで茨水、昨日は何を食べて何時間眠った?』
紅蓮さんに問われたそれに私は答えることが出来ず、その場は解散となった。
『ストレスが溜まれば心身ともに影響が出る。ところで茨水、昨日は何を食べて何時間眠った?』
『蛍涙病。その名前に聞き覚えは?』
『今まで自分を過剰に傷つけてきていたことを自覚し始めた、と言うのはどうだろうか。』
グルグルと頭を占めるのは先程までの会話に出てきた言葉の数々。そのせいで家に帰っても、自室の机に座っても、仕事に手がつかない。何故こんなにあの言葉たちが気になるのだろうか。
机に両肘を置き、組んだ手の甲に額を置く。普段の私なら絶対しない姿勢だったが、その行動を律する余裕すら今の私には無かった。
「ストレス……? 自分を傷つける……? そんなこと、そんな、こと……」
私は人形だ。操り人形だ。完璧に『明鏡 茨水』を演じられれば、ストレスでさえもコントロール出来ていれば、私は生きていて良いんだから。
だから、だから……
「っ……」
私に向けられた心配そうな四対の目を思い出して、心の奥から湧き上がるナニカを奥の奥に沈める。
知らなくて良い
気付かなくて良い
完璧を邪魔する私の気持ちなんて。
ふぅーっとゆっくり一息つく。
「大丈夫、大丈夫……」
自分に暗示をかけ、私は大量の仕事に取り掛かることにした。
生徒会メンバーが開けかけたシスイの心の扉は、ギギギ……とシスイ自身によってまた閉じられる。
しかし、それは完璧では無かった。数センチ開いたままのその扉はいつか完全に開かれるのか、開いていることに気がついたシスイ自身によってまた完璧に閉じられるのか。
それはまだ分からない。
紅蓮さんに問われたそれに私は答えることが出来ず、その場は解散となった。
『ストレスが溜まれば心身ともに影響が出る。ところで茨水、昨日は何を食べて何時間眠った?』
『蛍涙病。その名前に聞き覚えは?』
『今まで自分を過剰に傷つけてきていたことを自覚し始めた、と言うのはどうだろうか。』
グルグルと頭を占めるのは先程までの会話に出てきた言葉の数々。そのせいで家に帰っても、自室の机に座っても、仕事に手がつかない。何故こんなにあの言葉たちが気になるのだろうか。
机に両肘を置き、組んだ手の甲に額を置く。普段の私なら絶対しない姿勢だったが、その行動を律する余裕すら今の私には無かった。
「ストレス……? 自分を傷つける……? そんなこと、そんな、こと……」
私は人形だ。操り人形だ。完璧に『明鏡 茨水』を演じられれば、ストレスでさえもコントロール出来ていれば、私は生きていて良いんだから。
だから、だから……
「っ……」
私に向けられた心配そうな四対の目を思い出して、心の奥から湧き上がるナニカを奥の奥に沈める。
知らなくて良い
気付かなくて良い
完璧を邪魔する私の気持ちなんて。
ふぅーっとゆっくり一息つく。
「大丈夫、大丈夫……」
自分に暗示をかけ、私は大量の仕事に取り掛かることにした。
生徒会メンバーが開けかけたシスイの心の扉は、ギギギ……とシスイ自身によってまた閉じられる。
しかし、それは完璧では無かった。数センチ開いたままのその扉はいつか完全に開かれるのか、開いていることに気がついたシスイ自身によってまた完璧に閉じられるのか。
それはまだ分からない。
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