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二章 六月のほたるい
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グレンside
「珈夜、それでは多分生徒会長サマには通じないぞ。そうだな、敢えて言うなら……今まで自分を過剰に傷つけてきていたことを自覚し始めた、と言うのはどうだろうか。」
「自分を過剰に傷つける……?」
なんとか噛み砕いてこの鈍感生徒会長サマに言葉をかけるが、生徒会長サマはやっぱり理解出来ていなそうだ。だが今までとは違ってその言葉を理解しようと姿勢を正したのは見えた。
そのことにほんの少し安堵した俺は会話を続けながら、生徒会長サマとの出会いを内心で思い出していた。
あれは去年の生徒会長選挙の頃、生徒会長に俺が立候補しようかどうか悩んでいた時のこと。我ながら随分意欲的だとは思ったが、誰かの助けになるのなら、という考え方は昔から持っていたからそんなに不思議ではない。なんせ家が病院なんでね。
しかしその一方で、去年の生徒会長でもあった当時一年生、明鏡 茨水が再選するだろうという未来も予測出来てしまっていた。
この一年でこの学校に通う生徒達は明鏡 茨水への好感度を上げていた。茨水様だなんて呼ばれるようになるのに時間はそうかからなかった程。
そんな事実を目の前にして挑む前に心を折られたようで、勝手に明鏡 茨水を敵対視していた。
そんな時、話しかけてきたのがかの有名な明鏡 茨水サマだった。
『紅蓮さん、ですね?』
『……これはこれは明鏡 茨水サマではないですか。私のような一介の生徒に何か用でも?』
敵対視している、とはいえ角が立たないように立ち振る舞ったつもりだったのだが。
『ああ、私の見立て通りです。』
『はい?』
『私に対して何の感情も……いえ、あまり良い感情は抱いていらっしゃらない。それに誰かの助けになりたいとも思っていらっしゃるのでは?』
『……』
この後輩、怖。それが明鏡 茨水サマと対面してみての第一印象だった。何故考えていることが分かるのだ、と。(まぁ、その観察眼が対他人にしか通用しないことに今現在手こずっているのだが)
『あの、生徒会に入りませんか?』
『……まだ生徒会長選挙の前ですけど?』
『私が再選してみせます。……しなきゃいけないのです』
後半はあまりにも小さな声だったから聞き取れなかったが、前半だけでもインパクト大な宣言だった。あの時の驚きはなかなか忘れられない程だったなぁ……
『あなたの力を貸してください。私が選挙できちんと選ばれた先にある生徒会には、あなたの力が欲しいです。』
その言葉に、俺は心打たれた。
生徒会長サマのことは今でもあまり得意ではない──苦手だった、から得意ではない、に好感度は上がっているが──。それでも人の助けが出来る環境に引っ張り上げてくれたことには感謝している。
だから今度は俺の番だ、と思っている。
「そうだ。過剰に傷つけている。そしてそれを生徒会長サマが自覚出来ていないのが最も駄目な所だ。」
「珈夜、それでは多分生徒会長サマには通じないぞ。そうだな、敢えて言うなら……今まで自分を過剰に傷つけてきていたことを自覚し始めた、と言うのはどうだろうか。」
「自分を過剰に傷つける……?」
なんとか噛み砕いてこの鈍感生徒会長サマに言葉をかけるが、生徒会長サマはやっぱり理解出来ていなそうだ。だが今までとは違ってその言葉を理解しようと姿勢を正したのは見えた。
そのことにほんの少し安堵した俺は会話を続けながら、生徒会長サマとの出会いを内心で思い出していた。
あれは去年の生徒会長選挙の頃、生徒会長に俺が立候補しようかどうか悩んでいた時のこと。我ながら随分意欲的だとは思ったが、誰かの助けになるのなら、という考え方は昔から持っていたからそんなに不思議ではない。なんせ家が病院なんでね。
しかしその一方で、去年の生徒会長でもあった当時一年生、明鏡 茨水が再選するだろうという未来も予測出来てしまっていた。
この一年でこの学校に通う生徒達は明鏡 茨水への好感度を上げていた。茨水様だなんて呼ばれるようになるのに時間はそうかからなかった程。
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敵対視している、とはいえ角が立たないように立ち振る舞ったつもりだったのだが。
『ああ、私の見立て通りです。』
『はい?』
『私に対して何の感情も……いえ、あまり良い感情は抱いていらっしゃらない。それに誰かの助けになりたいとも思っていらっしゃるのでは?』
『……』
この後輩、怖。それが明鏡 茨水サマと対面してみての第一印象だった。何故考えていることが分かるのだ、と。(まぁ、その観察眼が対他人にしか通用しないことに今現在手こずっているのだが)
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『……まだ生徒会長選挙の前ですけど?』
『私が再選してみせます。……しなきゃいけないのです』
後半はあまりにも小さな声だったから聞き取れなかったが、前半だけでもインパクト大な宣言だった。あの時の驚きはなかなか忘れられない程だったなぁ……
『あなたの力を貸してください。私が選挙できちんと選ばれた先にある生徒会には、あなたの力が欲しいです。』
その言葉に、俺は心打たれた。
生徒会長サマのことは今でもあまり得意ではない──苦手だった、から得意ではない、に好感度は上がっているが──。それでも人の助けが出来る環境に引っ張り上げてくれたことには感謝している。
だから今度は俺の番だ、と思っている。
「そうだ。過剰に傷つけている。そしてそれを生徒会長サマが自覚出来ていないのが最も駄目な所だ。」
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