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二章 六月のほたるい
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カヨside
「シスイ様っ!?」
シスイ様は何かを感じ取り、急に走り出した。私はそれにワンテンポ遅れて後を追う。
「~~!!」
「~!?」
「~~!」
シスイ様を追っていくと、複数人の荒げた声がだんだんハッキリと聞こえてきた。シスイ様はこの声を辿ったのだろう。
空き教室の前に立ったシスイ様は制服のポケットを漁りながら教室の中の様子を窺っていた。
……あ、え、えと、シスイ様がその教室内にコッソリ仕込んだのはポケットの中身。多分、ボイスレコーダーだったと思う。一瞬しか見えなかったけど。何故持っているかなんて聞いてはいけないのだろうか?
「アンタウザいのよ!」
「気に食わないから消えてよ!」
「麦ちゃんは人の気持ち分かんないもんねぇ~?」
「さとみ、ちゃん……」
「馴れ馴れしく呼ばないでくれる? 気持ち悪いんだけど。」
「ねぇ、もう徹底的に排除しよ? 椅子を使って殴打とか良くね?」
ああ……なるほど。そういうこと。教室の中でのやり取りから、何が起こっているかを推測する。複数人が一人を寄ってたかって責め立てているのだろう。実に胸糞悪い。クシャリと顔が歪んだのが自分でも分かった。
と、教室内のやり取りに気を取られていた私は、シスイ様の行動に音を立てずに驚いてしまった。
「先生ー! こっちで喧嘩がー! 早く来てー! そうそう! こっちこっち!」
シスイ様はいつもよりワントーン低い声で叫んだ。その瞬間私の腕を掴んで隣にある空き教室に駆け込んだ。
「やばっ!」
「逃げよ!」
責めていたものと同じ声が焦ったように逃げろ逃げろとお互い呼びかける。バタバタと駆ける足音が複数聞こえ、それが止んでからシスイ様は隣の教室へと入る。
「……大丈夫ですか?」
「あ、えと……」
複数人に責められていた女生徒──確か麦と呼ばれていたっけ──は、いきなり現れたシスイ様に驚いているらしい。パクパクと口を動かすものの、音は出ない。
「お怪我はありませんか?」
シスイ様は笑顔でその麦さん(仮)にスッと手を差し伸べる。
「シスイ様っ!?」
シスイ様は何かを感じ取り、急に走り出した。私はそれにワンテンポ遅れて後を追う。
「~~!!」
「~!?」
「~~!」
シスイ様を追っていくと、複数人の荒げた声がだんだんハッキリと聞こえてきた。シスイ様はこの声を辿ったのだろう。
空き教室の前に立ったシスイ様は制服のポケットを漁りながら教室の中の様子を窺っていた。
……あ、え、えと、シスイ様がその教室内にコッソリ仕込んだのはポケットの中身。多分、ボイスレコーダーだったと思う。一瞬しか見えなかったけど。何故持っているかなんて聞いてはいけないのだろうか?
「アンタウザいのよ!」
「気に食わないから消えてよ!」
「麦ちゃんは人の気持ち分かんないもんねぇ~?」
「さとみ、ちゃん……」
「馴れ馴れしく呼ばないでくれる? 気持ち悪いんだけど。」
「ねぇ、もう徹底的に排除しよ? 椅子を使って殴打とか良くね?」
ああ……なるほど。そういうこと。教室の中でのやり取りから、何が起こっているかを推測する。複数人が一人を寄ってたかって責め立てているのだろう。実に胸糞悪い。クシャリと顔が歪んだのが自分でも分かった。
と、教室内のやり取りに気を取られていた私は、シスイ様の行動に音を立てずに驚いてしまった。
「先生ー! こっちで喧嘩がー! 早く来てー! そうそう! こっちこっち!」
シスイ様はいつもよりワントーン低い声で叫んだ。その瞬間私の腕を掴んで隣にある空き教室に駆け込んだ。
「やばっ!」
「逃げよ!」
責めていたものと同じ声が焦ったように逃げろ逃げろとお互い呼びかける。バタバタと駆ける足音が複数聞こえ、それが止んでからシスイ様は隣の教室へと入る。
「……大丈夫ですか?」
「あ、えと……」
複数人に責められていた女生徒──確か麦と呼ばれていたっけ──は、いきなり現れたシスイ様に驚いているらしい。パクパクと口を動かすものの、音は出ない。
「お怪我はありませんか?」
シスイ様は笑顔でその麦さん(仮)にスッと手を差し伸べる。
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