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一章 五月の日常

プロローグ

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双葉高校 校内新聞 一六二七号(××年 四月)


一年生生徒会長 明鏡 茨水とは何者か!?


 今年の入学式は異例となった。去年の暮れに決まった筈の今年度生徒会長が何故か辞退し、新一年生が生徒会長として入学式の挨拶を済ませたのだから。生徒会長が見知らぬ者とあり、皆動揺が隠せなかったことだろう。そこで我が新聞部は新生徒会長である明鏡さんに突撃することにし、そこで得た情報を纏めてみた。この新聞を通して新生徒会長のことを是非知って欲しいと思う。

明鏡 茨水(一年七組)
・八月一日生まれの乙女座
・名家 明鏡家の後継者
・入学試験は堂々の一位
一言
「若輩者ではありますが、精一杯頑張ります。どうぞお気軽に生徒会室へお越しくださいね。」






双葉高校 校内新聞 一六三〇号(××年 七月)

生徒会室にいらっしゃい!

 今回の記事は、明鏡様が新聞部へといらっしゃったことが発端だ。明鏡様曰く生徒の皆さんに伝えたいことがある、とのこと。詳しく聞くと、どうやら生徒会長自らが生徒達の相談に乗りたいらしい。生徒同士だからこそ相談出来る悩みもあるのではないか、とは明鏡様の言葉。そのために新聞部の広報力で皆さんにこのことを伝えて欲しい、と明鏡様は言う。この学校の生徒達のことを一番に考えて行動してくれる明鏡様に私は感動した。皆さんも何か相談や聞いて欲しいこと、雑談をしたい人は是非生徒会室へ。明鏡様は気軽においでくださいと最後に伝えた。






双葉高校 校内新聞 一六三五号(××年 十二月)

新生徒会長は再選 明鏡 茨水様!

 今年の生徒会長選挙は皆の予想通りだったのではなかろうか。この一年、我が校を精力的に引っ張ってくれた明鏡様を推したくなるのも必然というもの。「今度はきちんと選挙に勝って生徒会長になる」その言葉を聞いてどれだけの人が心揺さぶられただろうか。それは計り知れない程であろうと推測出来る。ただ、投票日の最後の演説時、いつもの明鏡様とはどこか雰囲気が違ったのは気になるところ。体調を崩してしまわれていないか心配でもあるが、生徒会長としてこれからも頑張って欲しい。






双葉高校 校内新聞 一六三九号(××年 四月)

生徒会長 明鏡 茨水様に聞いた五つのこと!(ロングインタビュー)

問、今回、生徒会長である明鏡様へインタビューをお願いし、快く受け入れてくださりました。明鏡様、今日はよろしくお願いします!

答、こちらこそよろしくお願いします。

問、はい!それでは早速一つ目の質問です。明鏡様は一年生時から生徒会長としてこの学校を引っ張っていらっしゃいますが、今年二年目はどのようなことに力を入れていきたいですか?

答、そうですね……生徒会含めた生徒間の交流を深めること、でしょうか。

問、と言いますと?

答、悩みというのはいつの年代にも付き回っています。そしてそれを一人で抱え込んでしまう人も然り。なので前年から時間を決めて生徒会室を解放していて、お悩み相談室のようなものを開いているんです。前述のように前年もそれに取り組んではきましたが、なかなか実現させるのは難しいもので……。今年こそ交流の場のシステムの確立を目指しています。


(略


問、それでは最後の質問です。明鏡様は普段、どのようにストレスを発散されていらっしゃるのでしょうか。明鏡様は生徒会の仕事のみならず、御実家の仕事も手伝われていると耳にしました。そのストレスは計り知れないと私は思うのです。

答、ストレス……

問、はい。だから気になったんです。

答、なるほど。そうですね……最近は涙活を取り入れてます。

問、涙活、ですか?あの涙を流すという?

答、はい。結構スッキリしますよ。

問、そうなんですね!さすが明鏡様です。ストレスをも完璧にコントロールなさるなんて!

答、あはは、そこまで完璧ではないですけど……。でも、効果はあるのではないかと私は思いますね。

問、なるほど、ありがとうございます!これは校内で涙活が流行りそうですね!

答、そうですか?なんか照れますね。


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