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番外編
藤のバースデー(二年目)
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二年目のバースデー小説はそれぞれの能力開花話でしたが、藤は本編で話出てたよなぁ~……というわけで、今回は『藤の日常』回です
──
俺は学校がある日で暇な時は保健室にいることが多い。何故って? だって俺は治癒のエートスなんだからさ、ここにいれば怪我の手当が出来そうじゃん?
俺がこの能力だったのにも何か意味があったりしそうだし、これを生かして人助けをしたい。と、常々思っている。
だからたっちゃん先生から応急処置を教えてもらったり、実際怪我して保健室に来た人の手当をしてみたりしている。まあ、だいたいは断られるんだけどね。俺が音霧だから。
ただ最近は怖がられる頻度が減ってきたし、俺もずっとニコニコしてるから手当させてくれる人もちらほら出始めた。だから手当しながらほんの少しだけバレない程度に能力使って痛みを軽減させようと頑張ってる所だ。この加減が難しいんだよねー。
もぐもぐとお弁当を保健室で食べながらそんなことを考える。
「藤、あなたまたここに居座って……」
たっちゃん先生はそう言って呆れたように溜息をついた。最近はエートスが近くにいる嬉しさよりも、俺に友達がいないのではと心配する気持ちの方が大きいらしい。良いじゃん、音霧の皆と寮で話したりするからボッチではない。心配されることにはなっていないよ。
それよりも俺の能力を人のためにたくさん使いたい。そんな気持ちの方が俺は大きいのだ。
「先生~膝擦りむいたから絆創膏ちょうだ……げっ」
見知らぬ生徒Aが保健室にやってきて俺を見るなり『げっ』って声を上げて……
まあ、こんな反応だよねー。前よりはマシだけど、それでもまだ音霧は怖がられる。特に音霧寮生がいないクラスの人間からは。
「まーまー、俺が手当てしてあげようじゃないか。」
「え、いや、いいです。絆創膏貰えば。」
「まーまー、そんなこと言わずにさ~」
「ひぃぃいいいっ!?」
せっかく傷をほんの少しだけ治してあげようと思ったのに……見知らぬ生徒Aはドタドタと怯えた声を出しながら走って逃げていった。
「……ちぇっ」
こんなのばっかりだから能力使う機会がなかなか無いよなぁ~……なんかいい手はないだろうかな~……
そんなことを考えながら俺は椅子にドカッと座る。あー暇暇暇暇暇!
「あ、あのぅ……」
暇を持て余していると、また新たな来客が。藍ちゃんの友達、空木ちゃんだった。
「どした?」
「あ、えっと、ちょっと……指を切っちゃって……」
「ちょ、見せて見せて。ついでに治してあげる。そこ座って。」
この子は俺達音霧を怖がらないし、俺が治癒のエートスだと知っている。だから素直に椅子に座った。
俺は空木ちゃんに傷口見せてと言うと右手を出した。
「あー、ちょっと血出てるね。傷口に触っても?」
「え?」
「ほら、傷を治すためには触れないといけないからさ。」
「あ、ああ……はい。良いですよ。」
「あんがとー」
本人の了承も貰えたので、傷口、右手中指に触れる。するとアポステリオリの代償である熱を傷口から感じる。あ、これ見た目より深く切れてるかも。熱の感じ方でそこまで分かった。
それならこれくらいの力を使えば……
すぅっ……と傷口の熱が引いていくのが俺も分かった。
「い、痛くなくなった……」
「でしょ。……ほら。」
傷口に触れていた手を離すと、そこにはもう傷など一ミリも残っていなかった。
「わぁーお。」
「そうだ、怪我した時、他に人いた?」
「え? あ、はい。いました。敦子ちゃんが。」
「あー、あの子か。……他には?」
「いません。」
「そ。ならカモフラージュしなくてもいいかな?」
「……?」
空木ちゃんは俺の言わんとすることが分かっていないらしい。首を傾げた。
「ほら、俺の力を知っている人だけならいいけど、知らない人が見て『傷が一瞬で治った!』だなんて言われちゃうとあとあと大変だからね。そんな時は数日カモフラージュとして絆創膏貼ってもらうんだけど。」
「成る程。じゃあ今回は大丈夫そうですね。」
「うん。」
「酸漿さん、ありがとうございました!」
空木ちゃんはそう言って笑った。
「いえいえ~、人の役に立てたならそれで充分だよ。」
その笑顔を見て、俺の能力をもっといろんな人のために使いたい。改めてそう思った一日だった。
──
俺は学校がある日で暇な時は保健室にいることが多い。何故って? だって俺は治癒のエートスなんだからさ、ここにいれば怪我の手当が出来そうじゃん?
俺がこの能力だったのにも何か意味があったりしそうだし、これを生かして人助けをしたい。と、常々思っている。
だからたっちゃん先生から応急処置を教えてもらったり、実際怪我して保健室に来た人の手当をしてみたりしている。まあ、だいたいは断られるんだけどね。俺が音霧だから。
ただ最近は怖がられる頻度が減ってきたし、俺もずっとニコニコしてるから手当させてくれる人もちらほら出始めた。だから手当しながらほんの少しだけバレない程度に能力使って痛みを軽減させようと頑張ってる所だ。この加減が難しいんだよねー。
もぐもぐとお弁当を保健室で食べながらそんなことを考える。
「藤、あなたまたここに居座って……」
たっちゃん先生はそう言って呆れたように溜息をついた。最近はエートスが近くにいる嬉しさよりも、俺に友達がいないのではと心配する気持ちの方が大きいらしい。良いじゃん、音霧の皆と寮で話したりするからボッチではない。心配されることにはなっていないよ。
それよりも俺の能力を人のためにたくさん使いたい。そんな気持ちの方が俺は大きいのだ。
「先生~膝擦りむいたから絆創膏ちょうだ……げっ」
見知らぬ生徒Aが保健室にやってきて俺を見るなり『げっ』って声を上げて……
まあ、こんな反応だよねー。前よりはマシだけど、それでもまだ音霧は怖がられる。特に音霧寮生がいないクラスの人間からは。
「まーまー、俺が手当てしてあげようじゃないか。」
「え、いや、いいです。絆創膏貰えば。」
「まーまー、そんなこと言わずにさ~」
「ひぃぃいいいっ!?」
せっかく傷をほんの少しだけ治してあげようと思ったのに……見知らぬ生徒Aはドタドタと怯えた声を出しながら走って逃げていった。
「……ちぇっ」
こんなのばっかりだから能力使う機会がなかなか無いよなぁ~……なんかいい手はないだろうかな~……
そんなことを考えながら俺は椅子にドカッと座る。あー暇暇暇暇暇!
「あ、あのぅ……」
暇を持て余していると、また新たな来客が。藍ちゃんの友達、空木ちゃんだった。
「どした?」
「あ、えっと、ちょっと……指を切っちゃって……」
「ちょ、見せて見せて。ついでに治してあげる。そこ座って。」
この子は俺達音霧を怖がらないし、俺が治癒のエートスだと知っている。だから素直に椅子に座った。
俺は空木ちゃんに傷口見せてと言うと右手を出した。
「あー、ちょっと血出てるね。傷口に触っても?」
「え?」
「ほら、傷を治すためには触れないといけないからさ。」
「あ、ああ……はい。良いですよ。」
「あんがとー」
本人の了承も貰えたので、傷口、右手中指に触れる。するとアポステリオリの代償である熱を傷口から感じる。あ、これ見た目より深く切れてるかも。熱の感じ方でそこまで分かった。
それならこれくらいの力を使えば……
すぅっ……と傷口の熱が引いていくのが俺も分かった。
「い、痛くなくなった……」
「でしょ。……ほら。」
傷口に触れていた手を離すと、そこにはもう傷など一ミリも残っていなかった。
「わぁーお。」
「そうだ、怪我した時、他に人いた?」
「え? あ、はい。いました。敦子ちゃんが。」
「あー、あの子か。……他には?」
「いません。」
「そ。ならカモフラージュしなくてもいいかな?」
「……?」
空木ちゃんは俺の言わんとすることが分かっていないらしい。首を傾げた。
「ほら、俺の力を知っている人だけならいいけど、知らない人が見て『傷が一瞬で治った!』だなんて言われちゃうとあとあと大変だからね。そんな時は数日カモフラージュとして絆創膏貼ってもらうんだけど。」
「成る程。じゃあ今回は大丈夫そうですね。」
「うん。」
「酸漿さん、ありがとうございました!」
空木ちゃんはそう言って笑った。
「いえいえ~、人の役に立てたならそれで充分だよ。」
その笑顔を見て、俺の能力をもっといろんな人のために使いたい。改めてそう思った一日だった。
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