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番外編(続)

9 グサグサグサッ

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竜胆side

「花蘇芳ちゃんね、多分疲れが出たんだと思うわ。」

 館先生はそう言う。

「疲れ……ですか。」
「でもね、喉の腫れとかは無いから……もしかしたら精神的に何か負荷がかかったとかじゃないかしら? 何か心当たりある?」

 精神的に……か。確かに藍さんはここ最近ずっと辛い思いばかりしてきた。冬休みには母に殺されかける過去を思い出し、その後花蘇芳の花言葉を知って追い込まれ、テラス団に殺されかけ(それも手引きは母)……。精神的に疲れが出てしまってもおかしくは無いな。館先生のその診断に納得して私は頷く。

「…………最近の精神的負荷の理由は……山吹にあると思う。」
「え? 何故です?」

 私は納得していたのに、椿は私が原因だと言う。私は何もしていないのだけれども……。首を捻ってみるが何が原因かは分からなかった。

「…………平仮名がようやく書ける子供に、『憂鬱』を漢字で書けと言っているようなものだからだ。」
「……というと?」
「…………恋愛の『れ』の字もまだ分かりきっていない人間に対して好きだ好きだと五月蝿く言い続ければ、言われた方は焦る。あーちゃんのペースってものがあるから。」
「お、それを言うなら、足し算がようやっと理解出来た子供に連立方程式を解けと言ってるようなもんってことか!」
「茜、話をややこしくしないでください。それと論点がずれてます。」
「けけけ……」

 けけけ、じゃないだろう。まあいいや。茜のことは気にしないとして。それよりも……

「私、ウザいですか?」

 これだ。藍さんにウザがられていたとしたらもう立ち直れない。

「んー、ウザいというか、必死すぎて怖い。」
「……。」

 藤にバッサリ切られた。だが……

「仕方ないじゃないですか。だっては、初恋なんですから。」

 どう攻めていけばいいか分からないのだ。ここまで人を好きになったのは初めてなのだから。かぁ、と顔が熱くなる。

「おーおー、りんの照れ顔とか需要ねぇー。」

 グサッ

「……山吹って完璧人間じゃなかったか?」

 グサグサッ

「あはは、茜、椿、もう少しオブラートに包んであげて~。竜胆が珍しく瀕死だから! あはは!」

 グサグサグサッ

 なんだろう、皆の言葉の刃が私に向かって振るわれるようで、心にグサグサ刺さる。とても痛い。それを緩和させるためにも自分の胸の辺りを摩ってやる。あまり効果はなかったが。

「……というかそれを言ったら茜や椿も同類でしょう!?」

 私だけが悪いだなんて言わせないぞ! 藍さんが好きなのは私だけではないのだから!
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