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番外編
七夕
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滑り込みセーフ!七夕は昨日だなんて聞こえない聞こえない(笑)
─────
「今日は七夕だぁー!」
「素麺素麺!」
「お願い事何にするー?」
いつものように皆揃ってのんびり登校していると、生徒玄関付近に人だかりが出来ていた。いつもは無いそれに私は驚いてしまう。どうしたんだろう。
しかしここから少しだけ見えたものから、何故人だかりが出来ているのかは理解した。今日は七夕だから、あれは……
「あ、毎年恒例のアレだな。」
「ですね。生徒からすればある意味行事みたいなものですから。」
「僕もお願い事書いてこよー!」
てててー、と桃さんは人だかりに向かって駆けて行った。桃さん以外の皆はやっぱりのんびり歩いている。まあ、私もそうだけど。
「龍彦さんも良くやるよね、毎年。あの笹はどっから持ってくるんだろう。」
「本当にさ。」
「……その話の流れからして、もしかしてあの笹を持って来ているのは学園長……ってことですか?」
「そうだよー。」
なんと! また驚いてしまったではないか! 驚きすぎて『おお……!』と声まで出てしまったではないか!
学園長直々に毎年笹を生徒玄関に置いているだなんて誰が想像出来ようか。いや、出来ない!
「藍さんも願い事書きます?」
「願い事……そうですね。書きます!」
願い事はある。二つ。欲張りかな?
「じゃあ行くべ。」
「俺も書こうっと。チョコをたくさん食べられますようにって。」
「俺はどうすっかなぁ……」
ゆっくりと生徒玄関まで近づくと、人だかりの後ろの方にいた人達は私達に気がついた。
「ひぃっ!」
あー、私達音霧はまだ怖がられているのかー。クラスの皆が優しいからすっかりそのことを忘れていた。まだ怖がられているという事実に少し悲しくなってしまった。あ、もし願い事書くのに数の制限が無いのなら、もう一つ追加だな。
「ようやく順番が回ってきましたね。」
「だねー。」
しばらくの間並んでいるとようやく私達の順番が回って来た。笹を目の前にすると、遠目で見て想像していたよりも随分大きかったらしい。見上げる程の大きさに感嘆の声を上げる。
「わぁ……!」
この大きさなら願い事も叶いそう! ワクワクしながら願い事を取り敢えず二つ書く。もう一つは後で一人の時に書きに来ようと思う。
簡易テーブルにたくさん置かれた短冊を二枚取り、サラサラと願い事を書いていく。
『皆との楽しい日常がこれからも続きますように』
『私達音霧メンバーが怖がられなくなりますように』
「よし。」
書けたそれを手が届く範囲に吊るす。うんうん、上手く書けた。吊るされた短冊を見て満足気に口角を上げる。
「藍さん、書けました?」
「書けました!」
「それは良かったです。」
「なんて書いたんだ?」
「教えたら叶わなくなりそうなので言いません。」
茜さんに聞かれたけれどもサッと背中で短冊を隠す。願いは叶って欲しいからね。
ゴーン、ゴーン
「あ、皆さん早く教室に行きましょう! 遅刻しちゃいます!」
「そうだねぇ。」
じゃあ行こー、と茜さんとつーくん以外の三人は校舎内に入っていく。
鐘の音のおかげで話をそらせたことに安堵し、私の短冊を未だに見ようとする茜さんとつーくんの背中を押して校舎に入る。何ちゃっかりつーくんも見ようとしてるのさ。恥ずかしいから見ないで欲しいのに。
「ほらほら、二人とも遅刻しますよ!」
ぐいぐいと能力も使いながら二人の背中を押す。
さて、ただ今昼休みなり。一人で笹の前に来ております。トイレに行くと言って音霧の皆さんを撒いてきました。
「この願いをもし見られたら、きっと……気を遣われるものね。」
サラサラと短冊に願い事を書く。
『お母さんと和解出来ますように』
生まれてからずっとお母さんに嫌われてきた。だからこそ仲良く……まではいかなくても、何気ない話を交わせる仲になりたいとずっと思っていたのだ。
「お願い、叶いますように……」
能力を使って笹の一番上に短冊を結ぶ。その願いが叶う日は来るのだろうか。
─────
「今日は七夕だぁー!」
「素麺素麺!」
「お願い事何にするー?」
いつものように皆揃ってのんびり登校していると、生徒玄関付近に人だかりが出来ていた。いつもは無いそれに私は驚いてしまう。どうしたんだろう。
しかしここから少しだけ見えたものから、何故人だかりが出来ているのかは理解した。今日は七夕だから、あれは……
「あ、毎年恒例のアレだな。」
「ですね。生徒からすればある意味行事みたいなものですから。」
「僕もお願い事書いてこよー!」
てててー、と桃さんは人だかりに向かって駆けて行った。桃さん以外の皆はやっぱりのんびり歩いている。まあ、私もそうだけど。
「龍彦さんも良くやるよね、毎年。あの笹はどっから持ってくるんだろう。」
「本当にさ。」
「……その話の流れからして、もしかしてあの笹を持って来ているのは学園長……ってことですか?」
「そうだよー。」
なんと! また驚いてしまったではないか! 驚きすぎて『おお……!』と声まで出てしまったではないか!
学園長直々に毎年笹を生徒玄関に置いているだなんて誰が想像出来ようか。いや、出来ない!
「藍さんも願い事書きます?」
「願い事……そうですね。書きます!」
願い事はある。二つ。欲張りかな?
「じゃあ行くべ。」
「俺も書こうっと。チョコをたくさん食べられますようにって。」
「俺はどうすっかなぁ……」
ゆっくりと生徒玄関まで近づくと、人だかりの後ろの方にいた人達は私達に気がついた。
「ひぃっ!」
あー、私達音霧はまだ怖がられているのかー。クラスの皆が優しいからすっかりそのことを忘れていた。まだ怖がられているという事実に少し悲しくなってしまった。あ、もし願い事書くのに数の制限が無いのなら、もう一つ追加だな。
「ようやく順番が回ってきましたね。」
「だねー。」
しばらくの間並んでいるとようやく私達の順番が回って来た。笹を目の前にすると、遠目で見て想像していたよりも随分大きかったらしい。見上げる程の大きさに感嘆の声を上げる。
「わぁ……!」
この大きさなら願い事も叶いそう! ワクワクしながら願い事を取り敢えず二つ書く。もう一つは後で一人の時に書きに来ようと思う。
簡易テーブルにたくさん置かれた短冊を二枚取り、サラサラと願い事を書いていく。
『皆との楽しい日常がこれからも続きますように』
『私達音霧メンバーが怖がられなくなりますように』
「よし。」
書けたそれを手が届く範囲に吊るす。うんうん、上手く書けた。吊るされた短冊を見て満足気に口角を上げる。
「藍さん、書けました?」
「書けました!」
「それは良かったです。」
「なんて書いたんだ?」
「教えたら叶わなくなりそうなので言いません。」
茜さんに聞かれたけれどもサッと背中で短冊を隠す。願いは叶って欲しいからね。
ゴーン、ゴーン
「あ、皆さん早く教室に行きましょう! 遅刻しちゃいます!」
「そうだねぇ。」
じゃあ行こー、と茜さんとつーくん以外の三人は校舎内に入っていく。
鐘の音のおかげで話をそらせたことに安堵し、私の短冊を未だに見ようとする茜さんとつーくんの背中を押して校舎に入る。何ちゃっかりつーくんも見ようとしてるのさ。恥ずかしいから見ないで欲しいのに。
「ほらほら、二人とも遅刻しますよ!」
ぐいぐいと能力も使いながら二人の背中を押す。
さて、ただ今昼休みなり。一人で笹の前に来ております。トイレに行くと言って音霧の皆さんを撒いてきました。
「この願いをもし見られたら、きっと……気を遣われるものね。」
サラサラと短冊に願い事を書く。
『お母さんと和解出来ますように』
生まれてからずっとお母さんに嫌われてきた。だからこそ仲良く……まではいかなくても、何気ない話を交わせる仲になりたいとずっと思っていたのだ。
「お願い、叶いますように……」
能力を使って笹の一番上に短冊を結ぶ。その願いが叶う日は来るのだろうか。
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