××の十二星座

君影 ルナ

文字の大きさ
上 下
115 / 122
二章

十二・二

しおりを挟む
 息が整うまでゴロンと寝そべっていた。そんな緩んだ空気が一瞬にして張り詰めたものに変わる。あ、いつものアレが来る。私の直感がそう告げたのを理解した時、目の端にキラリと光る物体が私の頭目掛けて飛んできた。

 既の所でそれを躱し、飛んできた方向を凝視する。あいつは、アリーズは今日、どこから銃弾を飛ばしてきた?


 いつからそう決まったとかは無いのだが、アリーズの姿を見つける所までが鍛錬とのことで、アリーズがいる場所まで向かわないと終われないのだ。

 最初の頃は銃弾を弾くまでで終わっていたのだが、最近は趣向を変えたらしい。気配察知の練習だからとどこかに潜むようになった。

 くっ、昨日より気配が希薄で、パッと見で判断は付けられない。この私が、だ。

 風魔法でここら一帯の人の気配を探るが、アリーズらしき気配を感じ取れない。相当息を潜めているな、ともう少し風魔法の精度を上げる。

 この鍛錬場を中心に、半径百メートル。主に銃弾が飛んできた方向に向けて。しかしそれらしき反応は無かった。

 ……もしかして昨日よりも遠い場所にいるのか? そう推測し、風魔法を半径二百メートルにまで広げる。するとほんの微量の反応が。おいおい、昨日より遠い所にいたんかい。そりゃあパッとは気が付かないわけだ。

 というか、よくそんな所からピンポイントで銃弾飛ばしてこれるな。逆に感心すらしてしまう。

 あとはその場所まで行けばその日の鍛錬は終わり。疲れて動けない体に鞭打って歩き出す。

「お、ようやっとアリーズさん見つけましたか?」

 リーブラはニコニコ笑ってそう聞いてきた。前回十二星座が集合した際にこういう鍛錬をしていると伝えていたから、銃弾が飛んできてもリーブラは驚かなかった。というかその言い方だと、私が感知する前に分かっていたのかな?

「……リーブラはいつからアリーズに気が付いていたの?」

「鍛錬が始まった辺りですね。ほら、最初にマロンさんが火魔法で目眩しした時!」

「おおっとぉ!? そんな前からいたの!?」

「はい。多分元々そこで仕事をしていたのでしょう。それまで普通の気配だったのが、一気に潜められましたから、ずっとスコープ越しにこちらの様子を窺っていたのでしょう。」

「ええっ!?」

 なんか負けた気がする。何にと言われても分からないけれども。

 次からは鍛錬が始まった辺りからアリーズの気配を探ってみるのも良いかもしれない。そしてアリーズの鼻を明かしてやろう。よし、明日の楽しみができた。

「くふふっ、よし、今からアリーズのところに行ってくるよ!」

「行ってらっしゃ~い」

 リーブラは相変わらず天使な笑みを浮かべて送り出してくれた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

処理中です...