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二章
一・二
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さて、月日は流れ、ようやく私の学力がある程度にまで向上したある日のこと。その日の勉強係であったアリーズが思い出したように言った。
「そうだ、来月にある学園の入学試験、受験出来るように手筈は整えておいたから。受けといてね。」
この世界において属性を一つでも持っている人間は魔法学園に通わなけれなならない決まりがある。だからこそ今まで死に物狂いで勉強していたわけだが、まさかもう入学出来る程度にまで来ていたとは。
感慨深い気持ちになりながら詳しいことをアリーズから聞いていく。
「学力試験はあるけど、それよりも属性判定の方に重きを置いているから、それをキッチリ熟せばいいよ。」
「あれ、それなら今まで勉強してきたのって……?」
「いや、普通に考えて文字を読み書き出来ないようだと入学した後に詰むでしょうが。少しは頭を使ったらどうなのさ。」
「うっ、スミマセンデシタ」
容赦のないアリーズの言葉がグサリと突き刺さる。そうだよね、私、文字も書けなかったんだもんね……。
「でもまあ、ここまでよくやったね。正直途中で投げ出すと思っていたんだけど。」
「ムキー! アリーズって一言多くない!?」
「ハハハ、そう思うならもっと精進するんだね。」
そんな風に棘のある物言いをしている割に優しそうな目でこちらを見てくるんだから、やっぱりアリーズって良く分かんない。まあ、そんな表情のチグハグさに気が付いたのもつい最近のことだったりする。
と、まあそんな日常的なやり取りをしながら日を過ごし、あっという間に入学試験も終えた。勿論三属性を持つ私は合格し、あとは入学式を待つだけになった。
「マロン、制服が届いたから、一応試着してみてくれないか?」
その日、アリーズが私の部屋にやって来て告げたのはそれだった。制服か。いかにも学校って感じだ、とワクワクしながらアリーズの手にあった大きな袋を受け取る。
「じゃあ、何か不都合があったら教えてよ。」
「はーい」
そう言ってアリーズは部屋を出て行った。さて一人になった所で、念願の制服を試着してみることにした。
「あれ?」
取り敢えず着てみた。これは確か学ラン、とかいう名前の制服だったはず。黒い詰襟に黒いスラックス。これは魔法学校の男子の制服だったと記憶している。
これを用意したのは多分アリーズ。ということは少なくともアリーズは私を男だと記憶しているのだろうか。
「……でもまあ、そう思われて不都合はないし、スカートって心許ない感じがしていたし、そう考えたらオールオッケーだ!」
自分のの中で結論を出し、丈も丁度良いなら何も言う事はないな、と楽観視した。
それがあんなことになるとも知らずに。
「そうだ、来月にある学園の入学試験、受験出来るように手筈は整えておいたから。受けといてね。」
この世界において属性を一つでも持っている人間は魔法学園に通わなけれなならない決まりがある。だからこそ今まで死に物狂いで勉強していたわけだが、まさかもう入学出来る程度にまで来ていたとは。
感慨深い気持ちになりながら詳しいことをアリーズから聞いていく。
「学力試験はあるけど、それよりも属性判定の方に重きを置いているから、それをキッチリ熟せばいいよ。」
「あれ、それなら今まで勉強してきたのって……?」
「いや、普通に考えて文字を読み書き出来ないようだと入学した後に詰むでしょうが。少しは頭を使ったらどうなのさ。」
「うっ、スミマセンデシタ」
容赦のないアリーズの言葉がグサリと突き刺さる。そうだよね、私、文字も書けなかったんだもんね……。
「でもまあ、ここまでよくやったね。正直途中で投げ出すと思っていたんだけど。」
「ムキー! アリーズって一言多くない!?」
「ハハハ、そう思うならもっと精進するんだね。」
そんな風に棘のある物言いをしている割に優しそうな目でこちらを見てくるんだから、やっぱりアリーズって良く分かんない。まあ、そんな表情のチグハグさに気が付いたのもつい最近のことだったりする。
と、まあそんな日常的なやり取りをしながら日を過ごし、あっという間に入学試験も終えた。勿論三属性を持つ私は合格し、あとは入学式を待つだけになった。
「マロン、制服が届いたから、一応試着してみてくれないか?」
その日、アリーズが私の部屋にやって来て告げたのはそれだった。制服か。いかにも学校って感じだ、とワクワクしながらアリーズの手にあった大きな袋を受け取る。
「じゃあ、何か不都合があったら教えてよ。」
「はーい」
そう言ってアリーズは部屋を出て行った。さて一人になった所で、念願の制服を試着してみることにした。
「あれ?」
取り敢えず着てみた。これは確か学ラン、とかいう名前の制服だったはず。黒い詰襟に黒いスラックス。これは魔法学校の男子の制服だったと記憶している。
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「……でもまあ、そう思われて不都合はないし、スカートって心許ない感じがしていたし、そう考えたらオールオッケーだ!」
自分のの中で結論を出し、丈も丁度良いなら何も言う事はないな、と楽観視した。
それがあんなことになるとも知らずに。
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