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一章
八十四
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あれからも三人から服を押し付けられ、結局三人全員が納得したものは最後に着た服だった。
淡い紫色の花柄とっぷす(?)とすきにーじーんず(?)と踵低めのぱんぷす(?)とか言う装い。ファッション用語はとても難しいということが分かったことだけは収穫だったろう。
さて、その服を着ていくからとタグを切られ、三人は満足そうに先を歩き始めた。置いていかれないようにと早足で追いかけると、それに気がついたカプリコーンが私の右手を握った。
「マロン、はぐれないように手を繋ごうか。」
「あ、ちょっとリコ! 何勝手に」
「じゃあアタシはもう片方ね~」
アクエリアスがカプリコーンに物言いしている間にスコーピオが私の左手を取る。
あの、お二人さん……これでは何かあった時に身動きが取れないっす! そう思ってブンブンと手を振ってみるがどちらの手も離れる様子はなく。私には諦める選択肢しか残っていないのか、と落胆する。
「さて、次はどこに行く?」
「あたくしはいつもの薬草店にさえ行ければ問題はないわ。」
「あら、それは楽しそうねぇ。アタシも行きたいわ」
アクエリアスとスコーピオの意見が一致し、次の行き先は自ずと決まった。
「あら、いらっしゃい。」
「いつものを同じくらいと……」
アクエリアスは慣れたように店主に注文していく。その様を遠目で見ながら、私も店内を見て回ることにした。
薬草独特の匂いが充満する中、ふと一つの薬草の前で立ち止まる。あれ、これ嗅いだことある……?
「あらマロン。それが気になるのかしらん?」
いつの間にか私の隣に来ていたスコーピオがそう話しかけてきた。
「う、うん……なんかどこかで嗅いだことあるような、ないような……」
「……まさかマロン、食べ物からしたわけではないわよね?」
「ああ! それだ!」
そうだ、何故忘れていたのだろう! スコーピオに言われて思い出した。
ここに来る前、そう、島にいた時の食事は毎回この臭いがしたんだよ! 最近はそんなこともなかったから忘れていたんだ!
「……」
「ス……ピオ、どしたん?」
急に黙ったスコーピオ。それも苦い顔で。そんな表情でも綺麗って、美人は得だよなあ……。
そんな呑気なことを考えていると、スコーピオはアクエリアスの元へ急いだように見えた。うーん? 何かあったのかな?
「マロン、ピオに何か言ったの? あんなに苦い顔するあの子初めて見たよ?」
カプリコーンが珍しく神妙な顔で質問してきた。いや、そう言われても……
「いや、分からないや。ただ、この薬草?のことについて話していただけなんだけど……」
「これ?」
「うん」
効能なんてものはここに書いてなくて、結局これが何者なのかは分からない。そんなに苦い顔するようなものなのか?
「うーん、俺はそんなに詳しくないから何とも言えないけど……ねぇ?」
結局私とカプリコーンはあとの二人が戻ってくるまで首を傾げているしか出来なかったのだった。
淡い紫色の花柄とっぷす(?)とすきにーじーんず(?)と踵低めのぱんぷす(?)とか言う装い。ファッション用語はとても難しいということが分かったことだけは収穫だったろう。
さて、その服を着ていくからとタグを切られ、三人は満足そうに先を歩き始めた。置いていかれないようにと早足で追いかけると、それに気がついたカプリコーンが私の右手を握った。
「マロン、はぐれないように手を繋ごうか。」
「あ、ちょっとリコ! 何勝手に」
「じゃあアタシはもう片方ね~」
アクエリアスがカプリコーンに物言いしている間にスコーピオが私の左手を取る。
あの、お二人さん……これでは何かあった時に身動きが取れないっす! そう思ってブンブンと手を振ってみるがどちらの手も離れる様子はなく。私には諦める選択肢しか残っていないのか、と落胆する。
「さて、次はどこに行く?」
「あたくしはいつもの薬草店にさえ行ければ問題はないわ。」
「あら、それは楽しそうねぇ。アタシも行きたいわ」
アクエリアスとスコーピオの意見が一致し、次の行き先は自ずと決まった。
「あら、いらっしゃい。」
「いつものを同じくらいと……」
アクエリアスは慣れたように店主に注文していく。その様を遠目で見ながら、私も店内を見て回ることにした。
薬草独特の匂いが充満する中、ふと一つの薬草の前で立ち止まる。あれ、これ嗅いだことある……?
「あらマロン。それが気になるのかしらん?」
いつの間にか私の隣に来ていたスコーピオがそう話しかけてきた。
「う、うん……なんかどこかで嗅いだことあるような、ないような……」
「……まさかマロン、食べ物からしたわけではないわよね?」
「ああ! それだ!」
そうだ、何故忘れていたのだろう! スコーピオに言われて思い出した。
ここに来る前、そう、島にいた時の食事は毎回この臭いがしたんだよ! 最近はそんなこともなかったから忘れていたんだ!
「……」
「ス……ピオ、どしたん?」
急に黙ったスコーピオ。それも苦い顔で。そんな表情でも綺麗って、美人は得だよなあ……。
そんな呑気なことを考えていると、スコーピオはアクエリアスの元へ急いだように見えた。うーん? 何かあったのかな?
「マロン、ピオに何か言ったの? あんなに苦い顔するあの子初めて見たよ?」
カプリコーンが珍しく神妙な顔で質問してきた。いや、そう言われても……
「いや、分からないや。ただ、この薬草?のことについて話していただけなんだけど……」
「これ?」
「うん」
効能なんてものはここに書いてなくて、結局これが何者なのかは分からない。そんなに苦い顔するようなものなのか?
「うーん、俺はそんなに詳しくないから何とも言えないけど……ねぇ?」
結局私とカプリコーンはあとの二人が戻ってくるまで首を傾げているしか出来なかったのだった。
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