89 / 122
一章
七十六
しおりを挟む
チュンチュン……
鳥のさえずりを目覚ましに、私はパチリと目を開けた。今日の目覚めはいつも以上にスッキリしていて、とても気持ちがいい。
上半身を起こし、両腕を上げて伸びる。
「はわ……」
体力も全回復している。ああ、若いって素晴らしい。そんな幸せをホクホクと噛み締めていると、ふと自分が寝かされていた場所に目が行く。
ここは城に来てからずっと私が寝泊まりしている部屋の、ベッドの上。……なるほど、いつもよりスッキリとした目覚めはこのフカフカなお布団のおかげか──いつもはクローゼットの中に体育座りして眠っている。この部屋の広さにはまだ慣れることは出来ていないのだ──。
私がこんな綺麗でフカフカなお布団を使っては申し訳ないと思いながらも、フカフカの魔力は凄まじいもので。
「もう少しだけこのままで……」
もう一度ゴロンと寝転び、フカフカとポカポカに包まる。駄目だ、このままこの寝心地の良さを知ってしまったら、ここを出て行った後が大変だ。この寝心地に慣れた後にあの生活に逆戻りしたら、多分不眠症になるだろう。それくらい寝心地に差がある。
「むにゃ……」
「マーローンー!」
「げふっ!」
まだ眼帯もしていなかったから目は開けられず、さらに言えば魔法を使って周りを見渡す前にダイブしてきた誰か──声を聞く分には多分ジェミニだろう──の俊敏な動きに反応しきれず、変な呻き声を上げてしまった。う、苦しい……
ドーンと私の胸お腹に体当たりしてきたジェミニ(仮)は、そのままギュッと私の服を掴む。
「マロンが倒れたってアリーズから聞いて……すごく心配した……」
「ジェミニ……」
なんと声をかけていいか分からず、ポンとジェミニの頭に手を置いて撫で回すことにした。あ、髪の毛サラサラだ。
「ねぇ、ちょっと眼帯しても良い? ジェミニの顔見たいな。」
「……わかった」
ジェミニの了承を得てからベッド近くを探るとそれらしきものが手に触れる。それを左目に付けてから目を開ける。
「マロン! おはよ!」
ペカーッと太陽のように明るい無邪気な笑顔で挨拶をしてくれるジェミニ。わぁ、可愛眩しい。
「おはよう。」
ジェミニのオレンジがかった赤茶色の短髪は彼の動きに合わせてぴょこぴょこ跳ね、アホ毛は犬猫の尻尾のように左右に揺れる。
小動物のような可愛さを惜しげもなく振りまくジェミニに、私は朝から癒される。これがアニマルセラp……ゲフンゲフン
「マロン、起きてるかしら?」
「ん? アクエリアス? 起きてるよーおはよー」
次に私の部屋にやって来たのはアクエリアス。扉からひょこっと顔半分を出し、恐る恐る聞いてきた。
ん? なんか私怖がらせちゃったかな? 怖くないよ~とヘラヘラ笑顔を浮かべながら手招きする。
ジェミニを抱えながら上半身を起き上がらせ、ベッドに座る。まだ子コアラの如く私に引っ付くジェミニをそのままにし、ベッド横にある椅子に座ったアクエリアスと対面するが、その顔はどこか浮かないもの。
ふむ、怖がらせたわけではないが、何か私に対して不満でも出てきたのではなかろうか。……もしかしてここから出てけ、とか? ヤダ怖い。
「……マロン、あなた……元気?」
私のおちゃらけた思考とは相反するように、何かを押し殺すような笑みを浮かべるアクエリアス。その様子をジッと観察するのは私。ジェミニは子コアラのようにまだ引っ付いている。
元気、とはどんな意味を持つんだろうか。
鳥のさえずりを目覚ましに、私はパチリと目を開けた。今日の目覚めはいつも以上にスッキリしていて、とても気持ちがいい。
上半身を起こし、両腕を上げて伸びる。
「はわ……」
体力も全回復している。ああ、若いって素晴らしい。そんな幸せをホクホクと噛み締めていると、ふと自分が寝かされていた場所に目が行く。
ここは城に来てからずっと私が寝泊まりしている部屋の、ベッドの上。……なるほど、いつもよりスッキリとした目覚めはこのフカフカなお布団のおかげか──いつもはクローゼットの中に体育座りして眠っている。この部屋の広さにはまだ慣れることは出来ていないのだ──。
私がこんな綺麗でフカフカなお布団を使っては申し訳ないと思いながらも、フカフカの魔力は凄まじいもので。
「もう少しだけこのままで……」
もう一度ゴロンと寝転び、フカフカとポカポカに包まる。駄目だ、このままこの寝心地の良さを知ってしまったら、ここを出て行った後が大変だ。この寝心地に慣れた後にあの生活に逆戻りしたら、多分不眠症になるだろう。それくらい寝心地に差がある。
「むにゃ……」
「マーローンー!」
「げふっ!」
まだ眼帯もしていなかったから目は開けられず、さらに言えば魔法を使って周りを見渡す前にダイブしてきた誰か──声を聞く分には多分ジェミニだろう──の俊敏な動きに反応しきれず、変な呻き声を上げてしまった。う、苦しい……
ドーンと私の胸お腹に体当たりしてきたジェミニ(仮)は、そのままギュッと私の服を掴む。
「マロンが倒れたってアリーズから聞いて……すごく心配した……」
「ジェミニ……」
なんと声をかけていいか分からず、ポンとジェミニの頭に手を置いて撫で回すことにした。あ、髪の毛サラサラだ。
「ねぇ、ちょっと眼帯しても良い? ジェミニの顔見たいな。」
「……わかった」
ジェミニの了承を得てからベッド近くを探るとそれらしきものが手に触れる。それを左目に付けてから目を開ける。
「マロン! おはよ!」
ペカーッと太陽のように明るい無邪気な笑顔で挨拶をしてくれるジェミニ。わぁ、可愛眩しい。
「おはよう。」
ジェミニのオレンジがかった赤茶色の短髪は彼の動きに合わせてぴょこぴょこ跳ね、アホ毛は犬猫の尻尾のように左右に揺れる。
小動物のような可愛さを惜しげもなく振りまくジェミニに、私は朝から癒される。これがアニマルセラp……ゲフンゲフン
「マロン、起きてるかしら?」
「ん? アクエリアス? 起きてるよーおはよー」
次に私の部屋にやって来たのはアクエリアス。扉からひょこっと顔半分を出し、恐る恐る聞いてきた。
ん? なんか私怖がらせちゃったかな? 怖くないよ~とヘラヘラ笑顔を浮かべながら手招きする。
ジェミニを抱えながら上半身を起き上がらせ、ベッドに座る。まだ子コアラの如く私に引っ付くジェミニをそのままにし、ベッド横にある椅子に座ったアクエリアスと対面するが、その顔はどこか浮かないもの。
ふむ、怖がらせたわけではないが、何か私に対して不満でも出てきたのではなかろうか。……もしかしてここから出てけ、とか? ヤダ怖い。
「……マロン、あなた……元気?」
私のおちゃらけた思考とは相反するように、何かを押し殺すような笑みを浮かべるアクエリアス。その様子をジッと観察するのは私。ジェミニは子コアラのようにまだ引っ付いている。
元気、とはどんな意味を持つんだろうか。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる