××の十二星座

君影 ルナ

文字の大きさ
上 下
87 / 122
一章

七十四

しおりを挟む
 ただの剣ではこの魔物を倒すことは不可能だ。それならどうする?

 魔物から繰り出される攻撃を剣で躱し続けながら考える。

 体力も回復したからか、頭の中はとてもクリアだ。色々な考えが巡る。

 剣や魔法でボースハイトを切ることは出来る。しかし魔物には剣が効かない。だから……ん? 魔法?

 そっか。私、魔法も一応使えたっけ。無意識のうちにボースハイトへと放っていたが、魔物に魔法を使ってはいけない規則なんてものは……聞いたことないな──聞き忘れたのではという疑問は聞かないことにする──。ならば……

 ここは門の外とはいえ、植物も多量な場所。火は駄目だ。引火して火事になる。それなら土は……いけるか? いや、土属性はあまり使ってこなかったからまだまだ未熟。となるとやはり風、だろうか?

 風なら無意識のうちに使っていたし、パイシーズにも少し教わった。それを応用して……

 風属性を使って風の刃を作り出す。それを魔物へ向けて放つ。

『ギャァース!』

 魔物の悲鳴が辺り一面に轟く。

 ふむ、ただの剣より魔法の方が威力は強いようだ。実際急所である首に少しだけ傷が出来ていたところを見てそう判断する。まあ、かすり傷程度、ではあるが。しかし魔法ですらも仕留めることは出来ないらしい。

 それならどうする? 私はとにかく考える。最適解を求めて。

 ただの双剣──といっても切れ味は抜群のやつ──でさえ傷一つつけられない。それなら私がいつも(隠し)持っている刃物ナイフでも仕留めることはで出来ないだろう。それなら……

 何か、何か策があれば。この状況を打破する何かが。

 防戦一方の状況を打破する一手を……!

『小生は魔法しか扱えませんでしたが、サジタリアスは武器も魔法も扱えます。ですのでそれらを組み合わせて戦ったりもされるそうですよ。』

 ウンウン唸っていると、今日訓練してくれたパイシーズがポツリと呟いていた言葉をふと思い出す。組み合わせる……組み合わせる……

 魔法に剣を……いや、逆か。剣に魔法を……

(やってみるしかないね!)

 パイシーズありがとう! と心の中で感謝し、私の双剣に風魔法を纏わせるイメージをする。……あ、ちょっと難しいかも。上手くいかない。眉間に皺が寄る。

 ぶっつけ本番でどうにかなるかは分からないが、しかし少しでも打破出来る道があるのなら今試さないでいつ試す! 魔物の攻撃をいなし、出来た隙を狙って走り出す。

 その間に双剣に先程放った風魔法、風の刃をなんとか纏わせて切れ味を増し増しにさせる。

 そして魔物の首を狙って双剣を振り下ろす──





『ギャァー……』

 そんな叫び声を上げた魔物は、その後ゴロンと頭を落とす。首、切れた……

 そう安堵する間に、息絶えた魔物とその周りに漂っていたボースハイトはサラサラと灰のように溶けていった。



 魔物の最期は誰かに殺意を持たれながら孤独に死んでいく。そんな惨たらしくて苦しい現実を目の当たりにしたのを最後に、世界は暗転したのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

処理中です...