××の十二星座

君影 ルナ

文字の大きさ
上 下
86 / 122
一章

七十三

しおりを挟む
 街の外に出た瞬間、ドォォン……とまた地響きがする。同じタイミングで『ギャース!』と鳴き声?叫び声?も聞こえて来た。人間の声ではないことは流石の私にも分かる。

「禍々しいオーラだ……」

 アリーズの呟きは私の耳にも入ってきた。

「そうだね……あ。」
「あれが魔物だ。」

 アリーズがそう言って指差す先にいたのは、ボースハイトを纏ったウサギ(巨大化バージョン)だったようだ。元々の動物の姿を想像出来るが故に、少し尻込みしてしまう。

(私はもう、何も殺さないと決めたのに……)

 そんな心の内など私自身にしか分からない。だからこそアリーズは早く行けと背中を押した。

「……ごめんね。」

 倒す決心をつけ、双剣を構えてウサギに向かって今一度走り出す。







アリーズside

 マロンの二倍はありそうな体格のウサギ。マロンならギリギリ倒せると判断したが故に応援を呼ばなかった。が、しかし……

(マロン……少し辛そうだな。)

 どんなに訓練を積もうが、やはり訓練と実戦は違うのだろう。まあ、マロンの元に現れた暗殺者すらも殺さずに生け捕りする程だからな。殺しに対して躊躇心があってもおかしくはない。我輩も最初は躊躇したものだ。

(まあ、無理そうなら我輩がやればいいこと。)

 いつでも応戦可能にするために銃を取り出しておく。ボースハイトを纏っているので多少は・・・強化されているが、急所はそれぞれの動植物と同じ。

 心臓の辺りを二、三発で討伐出来るだろう──さすがに巨大化しているので一発では心許ない──。

 そんなことを考えている間にもマロンは果敢にウサギへと突っ込み、ウサギに纏わりつくボースハイトを風魔法か何かで一掃する。そして視界良好になったところを双剣で本体の首の辺りに一撃入れる。が、それは弾き返された。

「え、何これ硬いんだけど!? ……っと」

 一撃入れたことで怒った魔物がマロンに向けて爪を振るう。それを躱しながら、次手を考えているようだった。

「ボースハイトを纏った魔物は多少強化されている。一撃では倒せないだろう。」
「いやいや多少ってレベルじゃないよこれ! アリーズってアホなの!?」
「我輩に無駄口叩けるなら楽勝だよね?」
「くっ……!」

 我輩の言葉にマロンは悔しそうな顔を一瞬こちらに向け、すぐに魔物へと意識を移した。まあ、煽るのはこれくらいにしておこう。怒りで頭が働かなくなるのは本意ではないからな。

 ボースハイトはまた魔物に纏わりつく。それをまた風魔法か何かで一掃したマロン。……ふむ、キリがないな。

「マロン! ボースハイトの方は我輩に任せて本体に集中しろ!」
「分かった。」

 マロンはいつになく静かに返事をする。我輩相手なのに。先程までのやり取りを忘れたかのように。

 それ程集中しているのだろうことは容易に想像出来た。なら我輩も真剣にサポートしてやらんこともない。

 とにかく玉数の多いじゅうを取り出し直して援護に回ることにする。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...