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一章
七十三
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街の外に出た瞬間、ドォォン……とまた地響きがする。同じタイミングで『ギャース!』と鳴き声?叫び声?も聞こえて来た。人間の声ではないことは流石の私にも分かる。
「禍々しいオーラだ……」
アリーズの呟きは私の耳にも入ってきた。
「そうだね……あ。」
「あれが魔物だ。」
アリーズがそう言って指差す先にいたのは、ボースハイトを纏ったウサギ(巨大化バージョン)だったようだ。元々の動物の姿を想像出来るが故に、少し尻込みしてしまう。
(私はもう、何も殺さないと決めたのに……)
そんな心の内など私自身にしか分からない。だからこそアリーズは早く行けと背中を押した。
「……ごめんね。」
倒す決心をつけ、双剣を構えてウサギに向かって今一度走り出す。
アリーズside
マロンの二倍はありそうな体格のウサギ。マロンならギリギリ倒せると判断したが故に応援を呼ばなかった。が、しかし……
(マロン……少し辛そうだな。)
どんなに訓練を積もうが、やはり訓練と実戦は違うのだろう。まあ、マロンの元に現れた暗殺者すらも殺さずに生け捕りする程だからな。殺しに対して躊躇心があってもおかしくはない。我輩も最初は躊躇したものだ。
(まあ、無理そうなら我輩がやればいいこと。)
いつでも応戦可能にするために銃を取り出しておく。ボースハイトを纏っているので多少は強化されているが、急所はそれぞれの動植物と同じ。
心臓の辺りを二、三発で討伐出来るだろう──さすがに巨大化しているので一発では心許ない──。
そんなことを考えている間にもマロンは果敢にウサギへと突っ込み、ウサギに纏わりつくボースハイトを風魔法か何かで一掃する。そして視界良好になったところを双剣で本体の首の辺りに一撃入れる。が、それは弾き返された。
「え、何これ硬いんだけど!? ……っと」
一撃入れたことで怒った魔物がマロンに向けて爪を振るう。それを躱しながら、次手を考えているようだった。
「ボースハイトを纏った魔物は多少強化されている。一撃では倒せないだろう。」
「いやいや多少ってレベルじゃないよこれ! アリーズってアホなの!?」
「我輩に無駄口叩けるなら楽勝だよね?」
「くっ……!」
我輩の言葉にマロンは悔しそうな顔を一瞬こちらに向け、すぐに魔物へと意識を移した。まあ、煽るのはこれくらいにしておこう。怒りで頭が働かなくなるのは本意ではないからな。
ボースハイトはまた魔物に纏わりつく。それをまた風魔法か何かで一掃したマロン。……ふむ、キリがないな。
「マロン! ボースハイトの方は我輩に任せて本体に集中しろ!」
「分かった。」
マロンはいつになく静かに返事をする。我輩相手なのに。先程までのやり取りを忘れたかのように。
それ程集中しているのだろうことは容易に想像出来た。なら我輩も真剣にサポートしてやらんこともない。
とにかく玉数の多い奴を取り出し直して援護に回ることにする。
「禍々しいオーラだ……」
アリーズの呟きは私の耳にも入ってきた。
「そうだね……あ。」
「あれが魔物だ。」
アリーズがそう言って指差す先にいたのは、ボースハイトを纏ったウサギ(巨大化バージョン)だったようだ。元々の動物の姿を想像出来るが故に、少し尻込みしてしまう。
(私はもう、何も殺さないと決めたのに……)
そんな心の内など私自身にしか分からない。だからこそアリーズは早く行けと背中を押した。
「……ごめんね。」
倒す決心をつけ、双剣を構えてウサギに向かって今一度走り出す。
アリーズside
マロンの二倍はありそうな体格のウサギ。マロンならギリギリ倒せると判断したが故に応援を呼ばなかった。が、しかし……
(マロン……少し辛そうだな。)
どんなに訓練を積もうが、やはり訓練と実戦は違うのだろう。まあ、マロンの元に現れた暗殺者すらも殺さずに生け捕りする程だからな。殺しに対して躊躇心があってもおかしくはない。我輩も最初は躊躇したものだ。
(まあ、無理そうなら我輩がやればいいこと。)
いつでも応戦可能にするために銃を取り出しておく。ボースハイトを纏っているので多少は強化されているが、急所はそれぞれの動植物と同じ。
心臓の辺りを二、三発で討伐出来るだろう──さすがに巨大化しているので一発では心許ない──。
そんなことを考えている間にもマロンは果敢にウサギへと突っ込み、ウサギに纏わりつくボースハイトを風魔法か何かで一掃する。そして視界良好になったところを双剣で本体の首の辺りに一撃入れる。が、それは弾き返された。
「え、何これ硬いんだけど!? ……っと」
一撃入れたことで怒った魔物がマロンに向けて爪を振るう。それを躱しながら、次手を考えているようだった。
「ボースハイトを纏った魔物は多少強化されている。一撃では倒せないだろう。」
「いやいや多少ってレベルじゃないよこれ! アリーズってアホなの!?」
「我輩に無駄口叩けるなら楽勝だよね?」
「くっ……!」
我輩の言葉にマロンは悔しそうな顔を一瞬こちらに向け、すぐに魔物へと意識を移した。まあ、煽るのはこれくらいにしておこう。怒りで頭が働かなくなるのは本意ではないからな。
ボースハイトはまた魔物に纏わりつく。それをまた風魔法か何かで一掃したマロン。……ふむ、キリがないな。
「マロン! ボースハイトの方は我輩に任せて本体に集中しろ!」
「分かった。」
マロンはいつになく静かに返事をする。我輩相手なのに。先程までのやり取りを忘れたかのように。
それ程集中しているのだろうことは容易に想像出来た。なら我輩も真剣にサポートしてやらんこともない。
とにかく玉数の多い奴を取り出し直して援護に回ることにする。
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