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一章
六十二
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一瞬だけ床を見ると、私が先程までいた場所には小さなナイフが刺さっていた。
あれが私を狙ってのものであろうことはすぐ理解出来た。あー危なかったー。あれが私に刺さってたら大怪我だよー。脳天ぶっ刺さってたよー。
「ねぇ、そこにいるのは分かってるんだから、降りてきたら? それとも……」
私にナイフを向けてきた人へそう伝え、いつも隠し持っている得物──小さなナイフ──を天井へと投げる。ナイフを向けてきた人が隠れている場所に刺し返してあげたんだ。
あ、軽々避けられたみたいだ。……ちぇっ、一発で殺れたと思ったのに。
「あ、そうだ。自分のナイフで殺られるのも一興じゃない?」
思いついたそれを実行しようと床に刺さるナイフをサッと拾い上げたその瞬間、また頭上にナイフが飛んできた。
「おっと……」
私はダンスを踊るようにステップを踏みながらそれを躱し躱し、隠れている人に向けて笑顔を作る。
「私、ダンスも少し習い始めたところなんだ。だから良い練習になったよ。ありがとうね。」
「……ふん、十二星座にまとわりつく金魚の糞め。」
お、天井からボソボソ声が聞こえたぞ。ふむふむ、十二星座の皆と一緒にいる私を排除しに来たのかな?
まあ、今日なんて特に大勢の人の前で色々やらかしたからなぁ……。それで十二星座派の人に恨まれた。で、暗殺者を送り込んできた、ということかな?
……めんどくさ。よくそんなめんどくさいこと出来るよね。私には無理無理。
じゃあ私らしくさっさと終わらせよーっと。
「さぁて、私が殺るのが先か、殺られるのが先か。」
私がそう言ってニィッと笑ったのが合図になったようで、天井から人が一人降りてきた。お、正面から対抗するつもりなのね。
「俺がこんなひょろっこい奴に負けるわけがねぇからな。」
おおー、良いね良いね。その気概は好きだよ。
「へぇ……」
お互い似たような小さなナイフを構えた瞬間、戦いの火蓋が切られる。
間合いを詰めながら相手にナイフで切りつけるが、既の所で躱される。それならと間髪入れずに蹴りを繰り出す。しかしそれも既の所で躱される。逆にナイフを突き立てられそうになり、私お得意の柔軟を使って避ける。またナイフで切りつける。以下省略。
「おっとぉ……お前さん……素人じゃあないね?」
ナイフを突き立て、拳を出し、蹴りを入れながら交わされる会話。
「……さあ?」
それに笑って返事をすると暗殺者は驚いた。それによって出来た一瞬の隙を狙って、私は暗殺者を狩ることにした。
さて、所変わって書庫にやって来た。ここに多分あの人がいるはず……あ、いたね。私はその人に声を掛ける。本当は嫌だけど。
「ねぇー、アリーズさーん。」
「何急に。マロンにさん付けされるの、なんか気持ち悪いんだけど。やめてくれない?」
「まー良いじゃないですかー。」
すごく嫌そうな顔で私を見るアリーズ。ウケる。いつもは私が嫌なことされてるからね、意趣返しの意味もあってアリーズに丁寧口調で話しかけてみたのだ。案の定面白かった。
でも確かに丁寧口調を使った私も寒気がしてきたからもうやめようっと。
「……で、何? マロンが用もなく我輩に話しかけてくることなんてないでしょう?」
「さすがアリーズ。で、だ。私の部屋に暗殺者が来たから撃退したんだけど、どうすればいい?」
あの十二星座の中でのまとめ役はアリーズかと思って聞いてみたのだけれども……
「……ハァ?」
『何言ってんだこいつ。大丈夫か?』みたいな目で見られた。え、本当のことを簡潔に話しただけなのに……?
私はキョトンと顔を呆けさせてしまった。
あれが私を狙ってのものであろうことはすぐ理解出来た。あー危なかったー。あれが私に刺さってたら大怪我だよー。脳天ぶっ刺さってたよー。
「ねぇ、そこにいるのは分かってるんだから、降りてきたら? それとも……」
私にナイフを向けてきた人へそう伝え、いつも隠し持っている得物──小さなナイフ──を天井へと投げる。ナイフを向けてきた人が隠れている場所に刺し返してあげたんだ。
あ、軽々避けられたみたいだ。……ちぇっ、一発で殺れたと思ったのに。
「あ、そうだ。自分のナイフで殺られるのも一興じゃない?」
思いついたそれを実行しようと床に刺さるナイフをサッと拾い上げたその瞬間、また頭上にナイフが飛んできた。
「おっと……」
私はダンスを踊るようにステップを踏みながらそれを躱し躱し、隠れている人に向けて笑顔を作る。
「私、ダンスも少し習い始めたところなんだ。だから良い練習になったよ。ありがとうね。」
「……ふん、十二星座にまとわりつく金魚の糞め。」
お、天井からボソボソ声が聞こえたぞ。ふむふむ、十二星座の皆と一緒にいる私を排除しに来たのかな?
まあ、今日なんて特に大勢の人の前で色々やらかしたからなぁ……。それで十二星座派の人に恨まれた。で、暗殺者を送り込んできた、ということかな?
……めんどくさ。よくそんなめんどくさいこと出来るよね。私には無理無理。
じゃあ私らしくさっさと終わらせよーっと。
「さぁて、私が殺るのが先か、殺られるのが先か。」
私がそう言ってニィッと笑ったのが合図になったようで、天井から人が一人降りてきた。お、正面から対抗するつもりなのね。
「俺がこんなひょろっこい奴に負けるわけがねぇからな。」
おおー、良いね良いね。その気概は好きだよ。
「へぇ……」
お互い似たような小さなナイフを構えた瞬間、戦いの火蓋が切られる。
間合いを詰めながら相手にナイフで切りつけるが、既の所で躱される。それならと間髪入れずに蹴りを繰り出す。しかしそれも既の所で躱される。逆にナイフを突き立てられそうになり、私お得意の柔軟を使って避ける。またナイフで切りつける。以下省略。
「おっとぉ……お前さん……素人じゃあないね?」
ナイフを突き立て、拳を出し、蹴りを入れながら交わされる会話。
「……さあ?」
それに笑って返事をすると暗殺者は驚いた。それによって出来た一瞬の隙を狙って、私は暗殺者を狩ることにした。
さて、所変わって書庫にやって来た。ここに多分あの人がいるはず……あ、いたね。私はその人に声を掛ける。本当は嫌だけど。
「ねぇー、アリーズさーん。」
「何急に。マロンにさん付けされるの、なんか気持ち悪いんだけど。やめてくれない?」
「まー良いじゃないですかー。」
すごく嫌そうな顔で私を見るアリーズ。ウケる。いつもは私が嫌なことされてるからね、意趣返しの意味もあってアリーズに丁寧口調で話しかけてみたのだ。案の定面白かった。
でも確かに丁寧口調を使った私も寒気がしてきたからもうやめようっと。
「……で、何? マロンが用もなく我輩に話しかけてくることなんてないでしょう?」
「さすがアリーズ。で、だ。私の部屋に暗殺者が来たから撃退したんだけど、どうすればいい?」
あの十二星座の中でのまとめ役はアリーズかと思って聞いてみたのだけれども……
「……ハァ?」
『何言ってんだこいつ。大丈夫か?』みたいな目で見られた。え、本当のことを簡潔に話しただけなのに……?
私はキョトンと顔を呆けさせてしまった。
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