××の十二星座

君影 ルナ

文字の大きさ
上 下
75 / 122
一章

六十二

しおりを挟む
 一瞬だけ床を見ると、私が先程までいた場所には小さなナイフが刺さっていた。

 あれが私を狙ってのものであろうことはすぐ理解出来た。あー危なかったー。あれが私に刺さってたら大怪我だよー。脳天ぶっ刺さってたよー。

「ねぇ、そこにいるのは分かってるんだから、降りてきたら? それとも……」

 私にナイフを向けてきた人へそう伝え、いつも隠し持っている得物──小さなナイフ──を天井へと投げる。ナイフを向けてきた人が隠れている場所に刺し返してあげたんだ。

 あ、軽々避けられたみたいだ。……ちぇっ、一発で殺れたと思ったのに。

「あ、そうだ。自分のナイフで殺られるのも一興じゃない?」

 思いついたそれを実行しようと床に刺さるナイフをサッと拾い上げたその瞬間、また頭上にナイフが飛んできた。

「おっと……」

 私はダンスを踊るようにステップを踏みながらそれを躱し躱し、隠れている人に向けて笑顔を作る。

「私、ダンスも少し習い始めたところなんだ。だから良い練習になったよ。ありがとうね。」
「……ふん、十二星座にまとわりつく金魚の糞め。」

 お、天井からボソボソ声が聞こえたぞ。ふむふむ、十二星座の皆と一緒にいる私を排除しに来たのかな?

 まあ、今日なんて特に大勢の人の前で色々やらかしたからなぁ……。それで十二星座派の人に恨まれた。で、暗殺者を送り込んできた、ということかな?

 ……めんどくさ。よくそんなめんどくさいこと出来るよね。私には無理無理。

 じゃあ私らしくさっさと終わらせよーっと。

「さぁて、私が殺るのが先か、殺られるのが先か。」

 私がそう言ってニィッと笑ったのが合図になったようで、天井から人が一人降りてきた。お、正面から対抗するつもりなのね。

「俺がこんなひょろっこい奴に負けるわけがねぇからな。」

 おおー、良いね良いね。その気概は好きだよ。

「へぇ……」

 お互い似たような小さなナイフを構えた瞬間、戦いの火蓋が切られる。



 間合いを詰めながら相手にナイフで切りつけるが、既の所で躱される。それならと間髪入れずに蹴りを繰り出す。しかしそれも既の所で躱される。逆にナイフを突き立てられそうになり、私お得意の柔軟を使って避ける。またナイフで切りつける。以下省略。

「おっとぉ……お前さん……素人じゃあないね?」

 ナイフを突き立て、拳を出し、蹴りを入れながら交わされる会話。

「……さあ?」

 それに笑って返事をすると暗殺者は驚いた。それによって出来た一瞬の隙を狙って、私は暗殺者を狩ることにした。








 さて、所変わって書庫にやって来た。ここに多分あの人がいるはず……あ、いたね。私はその人に声を掛ける。本当は嫌だけど。

「ねぇー、アリーズさーん。」
「何急に。マロンにさん付けされるの、なんか気持ち悪いんだけど。やめてくれない?」
「まー良いじゃないですかー。」

 すごく嫌そうな顔で私を見るアリーズ。ウケる。いつもは私が嫌なことされてるからね、意趣返しの意味もあってアリーズに丁寧口調で話しかけてみたのだ。案の定面白かった。

 でも確かに丁寧口調を使った私も寒気がしてきたからもうやめようっと。

「……で、何? マロンが用もなく我輩に話しかけてくることなんてないでしょう?」
「さすがアリーズ。で、だ。私の部屋に暗殺者が来たから撃退したんだけど、どうすればいい?」

 あの十二星座の中でのまとめ役はアリーズかと思って聞いてみたのだけれども……

「……ハァ?」

 『何言ってんだこいつ。大丈夫か?』みたいな目で見られた。え、本当のことを簡潔に話しただけなのに……?

 私はキョトンと顔を呆けさせてしまった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

処理中です...