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一章
五十八 サジタリアス
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「はー、はー、降参、だよ……」
キャンサーの鋏に挟まれた体勢のまま両手を上げるマロン。やっぱり息が上がっている。マロンは運動神経は抜群に良いのだが、いかんせん体力が皆無。もう少し体力作りのメニューを増やすべき、か……
「やったー! ボク、マロンに勝ったよ~!」
そんな風に自分が熟考している間にもキャンサーは相当嬉しそうに笑顔を振りまく。気楽で良いな。
「はー、はー、はー……キャンサー、さすがに、そろそろ、ハサミ、取って……」
「ああ、ごめんごめん。……でもボクの鋏に挟まれるマロンのその姿、すごく良いよ。このままの状態のマロンをしばらく眺めていたいくらい。」
「え……」
キャンサーの言動にマロンはドン引きする。さすがに自分も引いてしまった。隣にいたスコーピオも以下同文。
「き、キャンサー……」
「ウフフ、嘘だよ。はい。」
この空気を読んでちゃんとマロンを解放するキャンサー。マロンは心を落ち着けるように長く息を吐いて壁から離れる。
「あー、やっぱりまだまだだなー……」
双剣を眺めながらそう言うマロン。まるで気を抜いているかのように見えたが、
「……っと」
ガキンッ……
その剣を振るって毎日の恒例行事をこなすマロン。
というのも、鍛錬終わりに毎日アリーズが銃を一発どこからか飛ばすのだ──まあ、自分はアリーズがだいたいどこにいるか分かってはいるが──。
毎回毎回ギリギリマロンを掠る場所に放たれるそれを、毎回毎回マロンは弾き返すのだ。アリーズ曰くこれも鍛錬のうち、らしいが。しかしその真意は自分でもよく分からなかった。
「もー! アリーズ、出て、こいっ! こっちは、疲れてん、だよっ!」
そしてこれも毎回の文句である。だがアリーズがこの状況でこの場にやって来たことは無い。
それが余計癪に触るのだろう。マロンはその様子に毎回『ムキーッ!』と奇声を上げて怒る。そして多分アリーズはこの様子を眺めて高笑いしているのだろう。実に性格の悪いやつである。
「おい、今のは何だったんだ……?」
「虚空を剣で切り裂いていたようにも見えたが……」
「だが確かに固いものに当たった音がした気がする……?」
ザワザワと騎士見習いの奴らが騒ぎ出した。しかしまさかマロンが弾いたものが弾丸であるとはつゆほど思っていないらしい。呑気な会話が続く。
「もー! 今日という今日は許さないっ!」
そう言い放ったマロンは双剣のうちの一本を、空中に突き刺すように勢いよくブンッと投げた。その切っ先はもちろんアリーズに向かう。
キャンサーの鋏に挟まれた体勢のまま両手を上げるマロン。やっぱり息が上がっている。マロンは運動神経は抜群に良いのだが、いかんせん体力が皆無。もう少し体力作りのメニューを増やすべき、か……
「やったー! ボク、マロンに勝ったよ~!」
そんな風に自分が熟考している間にもキャンサーは相当嬉しそうに笑顔を振りまく。気楽で良いな。
「はー、はー、はー……キャンサー、さすがに、そろそろ、ハサミ、取って……」
「ああ、ごめんごめん。……でもボクの鋏に挟まれるマロンのその姿、すごく良いよ。このままの状態のマロンをしばらく眺めていたいくらい。」
「え……」
キャンサーの言動にマロンはドン引きする。さすがに自分も引いてしまった。隣にいたスコーピオも以下同文。
「き、キャンサー……」
「ウフフ、嘘だよ。はい。」
この空気を読んでちゃんとマロンを解放するキャンサー。マロンは心を落ち着けるように長く息を吐いて壁から離れる。
「あー、やっぱりまだまだだなー……」
双剣を眺めながらそう言うマロン。まるで気を抜いているかのように見えたが、
「……っと」
ガキンッ……
その剣を振るって毎日の恒例行事をこなすマロン。
というのも、鍛錬終わりに毎日アリーズが銃を一発どこからか飛ばすのだ──まあ、自分はアリーズがだいたいどこにいるか分かってはいるが──。
毎回毎回ギリギリマロンを掠る場所に放たれるそれを、毎回毎回マロンは弾き返すのだ。アリーズ曰くこれも鍛錬のうち、らしいが。しかしその真意は自分でもよく分からなかった。
「もー! アリーズ、出て、こいっ! こっちは、疲れてん、だよっ!」
そしてこれも毎回の文句である。だがアリーズがこの状況でこの場にやって来たことは無い。
それが余計癪に触るのだろう。マロンはその様子に毎回『ムキーッ!』と奇声を上げて怒る。そして多分アリーズはこの様子を眺めて高笑いしているのだろう。実に性格の悪いやつである。
「おい、今のは何だったんだ……?」
「虚空を剣で切り裂いていたようにも見えたが……」
「だが確かに固いものに当たった音がした気がする……?」
ザワザワと騎士見習いの奴らが騒ぎ出した。しかしまさかマロンが弾いたものが弾丸であるとはつゆほど思っていないらしい。呑気な会話が続く。
「もー! 今日という今日は許さないっ!」
そう言い放ったマロンは双剣のうちの一本を、空中に突き刺すように勢いよくブンッと投げた。その切っ先はもちろんアリーズに向かう。
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