××の十二星座

君影 ルナ

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一章

五十四 スコーピオ

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 ワタシと今回一緒に行動していたキャンサーはついさっき城に戻ってきたわ。

 城の玄関にようやっと着いてワタシが一息ついていたら、その間にキャンサーが急に走り去っていったのよ。あの時の走りはものすごかったわ。一瞬でキャンサーが消えたかと思う程。ワタシは玄関に置き去りにされたってわけ。

 まあ、多分キャンサーはマロンの所にいち早く行きたかったのよね、きっと。
まあ、だからと言って一緒に行動していたレディーを置いていくとはどういう了見かしらん? 一発ハンマーでキャンサーを殴っても、きっと怒られないわよね?

 そんな物騒なことを考えながらワタシも食堂へと走ったわ。今はお昼時間だろうから、きっとキャンサーも同じことを思ってそこに向かったはずだもの。




「ちょっとキャンサー。ワタシを置いていくとは良い度胸ねェ?」

 おぉっと、ドスの効いた声が出てしまったわね。キャラじゃないことしちゃったわぁ。いっけな~い、ワタシ、うっかりさんね。

 で、肝心のキャンサーはこちらを振り向くことなく震えているわ。あら、これくらいの殺気に怯えるだなんて十二星座らしくないわねぇ? ん?

「その声は……スコーピオ、かな? お帰り。」
「ただいま、マロン。」

 目を瞑っているマロンには見えていないだろうけど、ニッコリと人受けの良い笑顔で返事をする。

「ご馳走さまでした。っと……おかえヒョエっ」

 昼食を済ませたらしいマロンは椅子から立ち上がってこちらを振り向いて奇声を発する。……あら? 右目が開いているわね? てっきりマロンは常に目を閉じているものだと思っていたのだけれども……

「スコーピオ(?)にめっさキラキラが飛んでる……」
「ん?」

 あら、マロンが何か可愛いこと言ってるわね?

 そう思ってワタシは人受けのいい笑顔で首を傾げてみると、マロンはまた『ひょえっ』と奇声を上げる。

 ……マロンの反応、なかなか面白いわね。ワタシは新しいオモチャを見つけたような喜びを感じた。

 それが表情に現れていたのかしら、マロンは先程とはまた違った奇声を上げる。

「スコーピオ、な、なんかさっきと違う笑い方コワイよ……?」
「気のせいじゃないかしらん?」
「そ、そうかな……? 本人がそう言ってるし……そうなのかな……?」

 頭の上にハテナを浮かべてウンウン唸るマロン。ふふ、こうやってすぐ人の言葉を信じるのはマロンの長所かしら?

 ……まあ、もしポラリスとなる人物だったならそれは短所にもなり得るかもしれないけどね、マロンは三属性しか扱えないから……

「ほらマロン。食べ終えたなら勉強に戻るぞ。」
「ほーい。」

 なんてぐるぐる考えていたら、もう次の展開に行こうとしていたらしい。サジタリアスがマロンを引き連れて食堂を出て行ったようだった。

 それにワタシが気がついた時にはもう既にキャンサーやアリーズもここにいなかった。あら、またワタシ置いてかれたわ。
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