66 / 122
一章
五十三 キャンサー
しおりを挟む
ボクはルンルン気分で城の廊下をスキップする。ポラリス候補を見つけようと見つけまいと、期限を決めて集まり近況報告会議をしなければならないので、ボク達は城に戻ってきたからだ。
と、い、う、こ、と、は!
「ふんふふーん」
マロンと会えるってことだよネ! 楽しみっ!
ボクはマロンがポラリスなら良いと思うんだけど、アリーズ辺りは反対しているみたいだからね。だからこそボク達はまたポラリス候補を探す旅に出なければならなくなったわけなのだが。あーあ、物事って思い通りにはいかないねー……
「マロン!」
今は昼時間。多分食堂にいるだろうと踏んで扉をバンと開ける。今回一緒に行動したスコーピオは城の玄関に置きざりにしてきてしまったのはここだけの秘密。
「ん? この声は……キャンサー? おかえりー」
ボクに背を向けて座っていたマロンはボクの声に反応したらしく、フッと振り返った。
「っ……!」
振り返ったことで見えるようになったマロンの大きな青目に、ボクの意識が吸い込まれていく錯覚に落ちる。マロンの目、初めて見たけど……とても暗くて……綺麗で……
「ん? どした? 具合悪い?」
もぐもぐとお昼ご飯を食べながらマロンは首を傾げる。多分ボクが急に黙り込んだからだよね。
「い、いや……ううん。何でもない。元気元気。」
なんとかそれだけ言葉にして、マロンの瞳をじっと見つめる。
「そ? なら良いや。キャンサーはお昼ご飯食べた?」
「……ああ、うん。まあ、軽く。」
「そっかー。」
マロンはそう返事をした後、食べることに集中することにしたらしい。もぐもぐと頬一杯に食べ物を詰め込む。その様を見ていつか見たハムスターを思い出した。……うん、そっくりだ。可愛いかも。
そんなことを考えていると、ガチャリと扉が開いた。
「あー、やっと追いついたわぁ~……」
ボクが置いていってしまったスコーピオがようやっと到着したみたいだった。
「ちょっとキャンサー。ワタシを置いていくとは良い度胸ねェ?」
ズモモモモ、とボクの背後から音が聞こえた気がした。それと共にスコーピオのドスの効いた声が聞こえた……気がした。うん、気がした、ということにしておこう。うん……
振り向きたくないなぁ……。だって絶対ボクがスコーピオを玄関に置き去りにしたこと、怒ってるよね?
と、い、う、こ、と、は!
「ふんふふーん」
マロンと会えるってことだよネ! 楽しみっ!
ボクはマロンがポラリスなら良いと思うんだけど、アリーズ辺りは反対しているみたいだからね。だからこそボク達はまたポラリス候補を探す旅に出なければならなくなったわけなのだが。あーあ、物事って思い通りにはいかないねー……
「マロン!」
今は昼時間。多分食堂にいるだろうと踏んで扉をバンと開ける。今回一緒に行動したスコーピオは城の玄関に置きざりにしてきてしまったのはここだけの秘密。
「ん? この声は……キャンサー? おかえりー」
ボクに背を向けて座っていたマロンはボクの声に反応したらしく、フッと振り返った。
「っ……!」
振り返ったことで見えるようになったマロンの大きな青目に、ボクの意識が吸い込まれていく錯覚に落ちる。マロンの目、初めて見たけど……とても暗くて……綺麗で……
「ん? どした? 具合悪い?」
もぐもぐとお昼ご飯を食べながらマロンは首を傾げる。多分ボクが急に黙り込んだからだよね。
「い、いや……ううん。何でもない。元気元気。」
なんとかそれだけ言葉にして、マロンの瞳をじっと見つめる。
「そ? なら良いや。キャンサーはお昼ご飯食べた?」
「……ああ、うん。まあ、軽く。」
「そっかー。」
マロンはそう返事をした後、食べることに集中することにしたらしい。もぐもぐと頬一杯に食べ物を詰め込む。その様を見ていつか見たハムスターを思い出した。……うん、そっくりだ。可愛いかも。
そんなことを考えていると、ガチャリと扉が開いた。
「あー、やっと追いついたわぁ~……」
ボクが置いていってしまったスコーピオがようやっと到着したみたいだった。
「ちょっとキャンサー。ワタシを置いていくとは良い度胸ねェ?」
ズモモモモ、とボクの背後から音が聞こえた気がした。それと共にスコーピオのドスの効いた声が聞こえた……気がした。うん、気がした、ということにしておこう。うん……
振り向きたくないなぁ……。だって絶対ボクがスコーピオを玄関に置き去りにしたこと、怒ってるよね?
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。


セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる