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一章
五十二 アリーズ
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さて、あれから半月が経った。マロンは今日も今日とて一日中勉強と鍛錬に励んでいる。
サジタリアスは文武共になかなかのスパルタだ。マロンがついていけているか気にはなるが、まあ、今のところサジタリアスがイライラしている様子はない。マロンはなんとか食らいついているのだろうことは推測出来た。
「……」
今は我輩、マロン、サジタリアスの三人で夕食を取っているのだが、マロンは今にも寝てしまいそうに舟を漕いでた。まあ、これは勉強会が始まってから恒例の光景になっているのだが。
今まで使ってこなかった頭を酷使し続けているのだから、そうなるのも仕方ないのだろう。
眼帯をしているからと開けられた青目ですらも今に閉じてしまいそう。更に頭もぐわんぐわんと前後左右に揺れ、テーブルに打ち付けないか少し心配である。
「ほらマロン、ちゃんと自分の部屋に戻ってから寝なさい。」
「んー……」
赤子が食事中に眠ってしまう様子とマロンの姿が被る。笑いを堪えるのが大変だ、とどこか明後日な方向へ思考が進んでしまうのも仕方なかろう。
「そうだ、アリーズ。調べ物の進捗は如何程だ?」
「うーん、そうだね……まだまだ、ってところかな。欲しい情報は見つからない。だからもしかしたら我輩が立てた仮説は外れているのかもしれない、そう思い始めているところさ。」
思い出したかのようにサジタリアスは我輩に話を振る。だが良い返事は出来ない。思わず目線が下がる。
「そうか。」
それ以上深く聞いてこないサジタリアスに心の中で感謝し、話を変えることにした。
「さあ、マロン。食べ終えたなら部屋に戻ろう。ね?」
「んー……」
マロンは返事をしているようでしていない。きっと我輩の言葉は耳に入れど頭には入っていないのだろう。テキトーな返事だ。
ぐら……ぐら……ごちん!
「ぐー……」
あーあー、言わんこっちゃない。マロンはテーブルに額を打ち付けるようにして眠ってしまった。空いた皿はついさっき下げさせたから良かったが、あんな大きな音を立てるくらいだ。きっと痛かったに違いない。それでも痛みで目を覚ます様子は見られない。よっぽど疲れたのだろう。
「あー……マロン、マロン、起きて。」
「ぐー……」
マロンの肩を揺さぶるが、やはり起きる気配は無し。眠そうに舟を漕ぐのは毎日恒例だが、マロンが人前で完全に眠ってしまったのは今日が初めてで。気を許してくれたのが嬉しいだなんて思ってないからな。
「アリーズ、運ばせるか?」
「そうだなぁ……」
サジタリアスは城の使用人にマロンを運ばせるかと聞いてきた。しかし……
「仕方ない、我輩が連れて行こう。」
一つ息を吐き、ひょいとマロンを片手で持ち上げる。マロンはひょろひょろしていると思ったが、予想以上に軽い。そのことに驚きながら足を進める。
「十二星座のアリーズサマに運ばせるだなんて、マロンは贅沢なやつだな。」
ふん、とサジタリアスは呆れたように言葉を並べ立てるが、声色と表情からは呆れが一ミリも感じられなかった。何故ならサジタリアスの少し上がった口角を我輩は見逃さなかったのだから。
サジタリアスは文武共になかなかのスパルタだ。マロンがついていけているか気にはなるが、まあ、今のところサジタリアスがイライラしている様子はない。マロンはなんとか食らいついているのだろうことは推測出来た。
「……」
今は我輩、マロン、サジタリアスの三人で夕食を取っているのだが、マロンは今にも寝てしまいそうに舟を漕いでた。まあ、これは勉強会が始まってから恒例の光景になっているのだが。
今まで使ってこなかった頭を酷使し続けているのだから、そうなるのも仕方ないのだろう。
眼帯をしているからと開けられた青目ですらも今に閉じてしまいそう。更に頭もぐわんぐわんと前後左右に揺れ、テーブルに打ち付けないか少し心配である。
「ほらマロン、ちゃんと自分の部屋に戻ってから寝なさい。」
「んー……」
赤子が食事中に眠ってしまう様子とマロンの姿が被る。笑いを堪えるのが大変だ、とどこか明後日な方向へ思考が進んでしまうのも仕方なかろう。
「そうだ、アリーズ。調べ物の進捗は如何程だ?」
「うーん、そうだね……まだまだ、ってところかな。欲しい情報は見つからない。だからもしかしたら我輩が立てた仮説は外れているのかもしれない、そう思い始めているところさ。」
思い出したかのようにサジタリアスは我輩に話を振る。だが良い返事は出来ない。思わず目線が下がる。
「そうか。」
それ以上深く聞いてこないサジタリアスに心の中で感謝し、話を変えることにした。
「さあ、マロン。食べ終えたなら部屋に戻ろう。ね?」
「んー……」
マロンは返事をしているようでしていない。きっと我輩の言葉は耳に入れど頭には入っていないのだろう。テキトーな返事だ。
ぐら……ぐら……ごちん!
「ぐー……」
あーあー、言わんこっちゃない。マロンはテーブルに額を打ち付けるようにして眠ってしまった。空いた皿はついさっき下げさせたから良かったが、あんな大きな音を立てるくらいだ。きっと痛かったに違いない。それでも痛みで目を覚ます様子は見られない。よっぽど疲れたのだろう。
「あー……マロン、マロン、起きて。」
「ぐー……」
マロンの肩を揺さぶるが、やはり起きる気配は無し。眠そうに舟を漕ぐのは毎日恒例だが、マロンが人前で完全に眠ってしまったのは今日が初めてで。気を許してくれたのが嬉しいだなんて思ってないからな。
「アリーズ、運ばせるか?」
「そうだなぁ……」
サジタリアスは城の使用人にマロンを運ばせるかと聞いてきた。しかし……
「仕方ない、我輩が連れて行こう。」
一つ息を吐き、ひょいとマロンを片手で持ち上げる。マロンはひょろひょろしていると思ったが、予想以上に軽い。そのことに驚きながら足を進める。
「十二星座のアリーズサマに運ばせるだなんて、マロンは贅沢なやつだな。」
ふん、とサジタリアスは呆れたように言葉を並べ立てるが、声色と表情からは呆れが一ミリも感じられなかった。何故ならサジタリアスの少し上がった口角を我輩は見逃さなかったのだから。
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