××の十二星座

君影 ルナ

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一章

三十九(※)

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※暗いの注意
──

 私は父からの暴力で、ある時大きな怪我をした。それからの父は余計私を痛めつけた。それが私の心の糸を切り刻み、後の事件に発展するのだが。



 その事件の日。あの日はやらなければやられる、そう直感が告げる程暴力は酷いものだった。痛い、辛い、このままだと死ぬ……と。

 ただ、救いだったのは母が私の味方だったこと。毎日毎日何度も何度も暴れる父を止めようとした。それでも父の力には敵わず、母までそれに巻き込まれていた。一番可哀想だったのは母なんじゃないかと思う程。

 ああ、それで、父のそれに耐えきれなくなった私は近くにあった椅子をなんとか掴んで、父の拳をギリギリ避けて椅子を振りかざし──



 その椅子が頭に当たり、動かなくなった父。だが胸は未だに上下を繰り返していて、ただ気を失っただけのようだった。

 いつまた目覚めるか分からない恐怖でその場に立ち尽くした私。

 父に突き飛ばされていた母はようやく起き上がれる程まで回復し、私と同じように少しの間立ち尽くした。



 少しの間ぼーっとした後、フッと現実に戻ってきた母と私はアイコンタクトを取って父を家から引きずり出した。すごく大変だったけどなんとか交番がある所まで引っ張り、そのまま私と母は駆け込んだ。

 私と母についていた傷を見て状況を飲み込んだお巡りさんに父は連れて行かれた。

 その後父がどうなったかは知らないが、島国という閉鎖的な空間で噂が飛び交わないわけがない。すぐ父の行動が噂で広まり、この島国で暮らせない程まで大きくなっていった。

 生まれ故郷である島国で噂が広まっては、島国で生きていけない。島国の父は殺されたも同然だった。

 そのきっかけを作った私が、社会的に父を殺した。



──
主観とは、実に脆いものである。
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