××の十二星座

君影 ルナ

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一章

三十五 カプリコーン

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「き、キャンサーとアリーズはととと取り敢えず武器を仕舞って……」

 おどおどしながらもヴァーゴがアリーズとキャンサーを窘める。他の人が皆傍観に徹している様子を見たが故の行動らしい。誰も止めに入らなければ血祭りになっただろうから、と。

 一番仲裁に適さなそうな印象だが……はてどうなることやら。

「ボクはアリーズが武器を仕舞ったら下げる。」
「我輩は十二星座の為を思ってこうしているんだけど?」

 しかしヴァーゴの勇気虚しく、引く気は無い二人。それを見たヴァーゴは溜息を一つついた後スッと体勢を整える。先程までのおどおどはどこいった、と言われそうな程自信に満ち溢れた構えは……

「じ、じゃあ、拙が力づくで止める。」

 あー、ヴァーゴは暴力で解決しようとする系の人だったのか。話し合いで解決するタイプの人だと思ってたのに。

 そうなると俺が割って入らなければならなくなる……かもしれない。面倒だけど。途轍もなく面倒だけど。

 ピリッと空気がひりつく。いつ喧嘩が始まるか分かったもんじゃない。あー、俺、三人相手で止められるかなー……



 最初に仕掛けたのは誰だったか。同時だったかもしれない。三人が三人、お互いに武器を向けたその一瞬。

「ぐっ!」
「うっ!」
「っ!」

 アリーズ、キャンサー、ヴァーゴがその場に崩れ落ちる。な、何があったんだ……?



 その答えはすぐ出た。

「喧嘩両成敗っ!」

 三人の間でポーズを決めたのはマロンだった。バンザーイと両手を広げてドヤ顔をしている。

 そう、マロンが音もなく三人のお腹に一撃ずつ入れたらしいのだ。らしい、というのも、俺の位置からでもマロンの様子はずっと見えていたはずなのに、マロンが席を立ってからの気配を全く感じず、いつの間にか急にアリーズ達三人が倒れたように見えたから。……そんなことが現実的にあり得るのか?

 それも倒したのが十二星座という最強集団に属する三人。特に素手で戦うヴァーゴまでもその餌食になっているというのだから、マロンの強さというか……そんなものが感じられた。

「ご馳走様デシタ! さ、全員揃ったんでしょ? ここに来た目的をさっさと果たして私は街で暮らす準備しないと!」

 マロンはもう街で暮らす算段を立てているらしいが、一つでも属性魔法を扱えるなら学園に通わなければならないことをマロンは理解しているのだろうか。

 ……いや、この感じだと分かってないな。

 ま、まあ、取り敢えず鑑定し終えてからこれからの話をすれば良いと思う。

「さ、さーて、皆も集まったし、マロンの鑑定に行かないかい? 話とか諸々はそれからってことで……」
「自分は異論はないな。」
「わ、我輩は……ぐっ、まだ、認めてはいないっ……!」
「はいはい、それも鑑定終わってからまた話し合おうよ。ね? ……ね?」

 俺としてはまず鑑定をサッサと終わらせて、マロンがポラリス候補になり得るかどうかを知りたい。

 一応サジタリアスの提案通り全員揃ったのだから、まあ、アリーズ達がずっと寝っ転がっているようなら置いていっても良いだろう。
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