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一章
三十三 アリーズ
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「さてマロンとやら。」
コツリ、コツリと足音をわざと立てながらマロンに近づく。目を瞑っていても我輩がマロンとやらの元へ行ったのが分かるように。一歩一歩踏みしめながら進み、マロンとやらの真横に立つ。するとマロンとやらはゆっくりとこちらを向く。
「アリーズ、サン? どうかしたの?」
「単刀直入に聞く。お前は何者だ?」
マロンとやらを見下ろしながら質問をする。
その質問にマロンとやらは首を傾げて数秒考え、その後ポツリと呟く。
「……何者でも、ない。」
それがどのような意味合いを持つのか。マロンとやらの一挙手一投足をじっくり観察して様子を窺うことにする。
「というと?」
「私には何もない。だから何者でもない。」
「ふぅん。じゃあ聞き方を変える。何故見ず知らずの人間にホイホイついていこうと思った?」
「うーん……何故、か……」
我輩らは外で襲名した名前は使わない。だからこそ見ず知らずの人間にどうしてついていこうと思ったのか。それを聞けばマロンとやらの何かが分かる気がした。
「殺気を感じなかったから。だからついてきた。」
その答えに我輩は眉をひそめる。このマロンとやらは……本当に一般人なのか? この平和な時代、普通に暮らしていて殺気を気にする場面など無いに等しい。それなのに殺気を感じなかったからついてきた、と。そうか。
チャキッ……
マロンとやらの額に銃口を突きつけてみる。が、マロンとやらに動じる様子は無い。
「これ何?」
「銃。お前、余裕だね。」
「へぇ、銃……か。」
銃を突きつけられても尚余裕を見せるマロン。殺気が無ければ銃口を突きつけられても動じないのか。やっぱりこのマロンとやらは普通の人間では……
シュッ……
「アリーズ、やめてくれない? ポラリスに一番近い存在を害すなんて、ボクが許さないよ?」
ポラリスに対して一番執着を見せるキャンサーが、我輩の首に大きな鋏を突きつける。というか我輩の首を鋏で軽く挟んでいる、と言った方が正しいか。その鋏を閉じれば我輩の首は物理的に飛ぶだろう。
だが、これは我輩ら十二星座の存続に大きく関わる事柄。どこの誰だか知らない奴にポラリスになって貰っては困る。我輩ら十二星座に害なす恐れも出てくるからだ。
「キャンサー、十二星座間での対立はご法度だろう?」
「アリーズが先にマロンに銃口を突きつけたんデショ?」
地を這うような声を上げるキャンサー。相当怒っていることが分かる。
ピリッと我輩とキャンサーの間の空気が張り付いた。
コツリ、コツリと足音をわざと立てながらマロンに近づく。目を瞑っていても我輩がマロンとやらの元へ行ったのが分かるように。一歩一歩踏みしめながら進み、マロンとやらの真横に立つ。するとマロンとやらはゆっくりとこちらを向く。
「アリーズ、サン? どうかしたの?」
「単刀直入に聞く。お前は何者だ?」
マロンとやらを見下ろしながら質問をする。
その質問にマロンとやらは首を傾げて数秒考え、その後ポツリと呟く。
「……何者でも、ない。」
それがどのような意味合いを持つのか。マロンとやらの一挙手一投足をじっくり観察して様子を窺うことにする。
「というと?」
「私には何もない。だから何者でもない。」
「ふぅん。じゃあ聞き方を変える。何故見ず知らずの人間にホイホイついていこうと思った?」
「うーん……何故、か……」
我輩らは外で襲名した名前は使わない。だからこそ見ず知らずの人間にどうしてついていこうと思ったのか。それを聞けばマロンとやらの何かが分かる気がした。
「殺気を感じなかったから。だからついてきた。」
その答えに我輩は眉をひそめる。このマロンとやらは……本当に一般人なのか? この平和な時代、普通に暮らしていて殺気を気にする場面など無いに等しい。それなのに殺気を感じなかったからついてきた、と。そうか。
チャキッ……
マロンとやらの額に銃口を突きつけてみる。が、マロンとやらに動じる様子は無い。
「これ何?」
「銃。お前、余裕だね。」
「へぇ、銃……か。」
銃を突きつけられても尚余裕を見せるマロン。殺気が無ければ銃口を突きつけられても動じないのか。やっぱりこのマロンとやらは普通の人間では……
シュッ……
「アリーズ、やめてくれない? ポラリスに一番近い存在を害すなんて、ボクが許さないよ?」
ポラリスに対して一番執着を見せるキャンサーが、我輩の首に大きな鋏を突きつける。というか我輩の首を鋏で軽く挟んでいる、と言った方が正しいか。その鋏を閉じれば我輩の首は物理的に飛ぶだろう。
だが、これは我輩ら十二星座の存続に大きく関わる事柄。どこの誰だか知らない奴にポラリスになって貰っては困る。我輩ら十二星座に害なす恐れも出てくるからだ。
「キャンサー、十二星座間での対立はご法度だろう?」
「アリーズが先にマロンに銃口を突きつけたんデショ?」
地を這うような声を上げるキャンサー。相当怒っていることが分かる。
ピリッと我輩とキャンサーの間の空気が張り付いた。
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