××の十二星座

君影 ルナ

文字の大きさ
上 下
44 / 122
一章

三十一 アリーズ

しおりを挟む
 我輩とトーラスは期限ギリギリまで捜索し、急いで城に帰ってきた。しかしやはり目的の人物は見つからなかった。

 焦燥感だけが我輩の中に積もっていくが、それを表に出さずに早足で城の中を歩く。

「アリーズちゃん、皆はもう帰ってきているかしら?」
「……さあ? 流石に我輩でも未来を見ることは出来ないからなんとも言えないかな。」
「あらそう? アリーズちゃんはいつも先々を見据えているイメージだったから分かるかと思ったわ。」

「それはちゃんと情報があった上での推察だからね。情報が一欠片も無い者に対して予測は不可能だよ。」
「そう……」

 トーラスは溜息をついて落ち込んだようだった。それを横目で見ながら我輩は言葉を続ける。

「でもトーラス。一ついいかい?」
「何かしら?」
「我輩は第六感を信じるタイプでね。なんとなく今回見つかったような気がするんだよ。」
「あら!」

 トーラスは嬉しそうに破顔する。まあ、我輩の第六感故に確信はないが。

 でもまあ、ポラリスたり得る人物(全属性持ち)が見つかったとしても、慎重に見極めなければならない。これは他の皆は苦手だろうからこそ我輩が。第六感などというものは一先ず置いておいて。

 猫を被っているならそれを剥がして、笑顔の仮面を付けているならそれも剥がして、剥がして剥がして剥がして……

 そうして残ったその人の本音、本性を見極めなければ。これは十二星座の存続、延いてはこの世界の存続に関わるのだから。

 気を引き締めて城の会議室に入る。

「二人ともお帰り~」

 会議室にいたのはカプリコーンだけだった。他はまだ帰ってきていないのだろうか。

「カプリコーンか。ならサジタリアスも帰っているね。」
「まあね。君達が最後だよ。」
「あらあら皆早いわねぇ~!」
「と言ってもスコーピオ達とキャンサー達の組も今日の朝戻ってきたところだから二人がすごく遅かったわけじゃないよ。」
「それなら良かったわ。」

「でもカプリコーン。君達は一番遠い島国に行ったはずだろう? 何故我輩らよりも早く帰って来れた?」

 最もな質問を投げかけると、カプリコーンはすんなり答えてくれた。

「ああ、それなんだけど、ポラリスになり得る可能性がある人物を見つけてね。」
「へぇ、ということは全属性持ち?」
「まだ分からない。全員集まってから鑑定しに行った方が良いかなって思ってね。」

 まだ分からない、とはどういうことだろうか。もしかして鑑定を受ける年齢よりも下の者……? 幼子でも連れてきたというのか?

 もしそうなら親御さんは連れて行くことに賛成したというのか?

「カプリコーンちゃん、まだ分からないってどういうことかしら?」
「あー、俺も詳しくは知らないけど、学校にも行っていなかったから鑑定のしようがなかったって。」
「あら……」

 明らかに訳ありであると言わんばかりな理由。やはり我輩が見極めなければ。そのポラリス候補が我輩らの敵か味方かを。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...