××の十二星座

君影 ルナ

文字の大きさ
上 下
25 / 122
一章

十二

しおりを挟む
 ふ、船デカくない? 気配察知してみたけど、相当大きな船だということが分かった。船のエンジン音も辺り一面に響く程。豪華客船? とかいうやつではなかろうか。見てないから詳しくは分からないけれども。

 ……私場違い過ぎるよね? 降りてもいいかな?

「ほらマロン、行こ?」

 私がそんな風に萎縮しているとリコに右手を取られる。ついでに背中も押される。どうしよう、退路を断たれた。これじゃあ逃げられない。

「さ、荷物を部屋に置いたらまずは朝食だね。マロン、何食べたい?」
「いや、私は部屋に残るから皆で行ってきて」
「ん?」

 リコの顔は相変わらず見えていないので表情を読み取れないが、その一文字だけでも充分な威圧を感じた。ぐっ、とその威圧に私は耐え、それでも何か言葉にしようと奮闘する。

「あ、の……私場違いな気がするから、部屋にい……」
「ああ、気にしなくて良いよ。レストランは個室だからさ。」
「え、と……そういうわけでは……」

 どうしよう。こんな無一文の貧乏人である私がいていい場所ではないことは分かりきっている。きっとあの貧乏人はなんだと他の乗客に陰口を言われるに違いない!(途轍もない偏見である。)

 それに、譲歩して船に乗ったとして、ご飯はちょっと……ね。だからそれを回避しようと頑張るのだ!






「うぅ……」

 頑張ったよ。私頑張ったよ。うん、そこは誇っていいと思う!

 私、船に乗らないように頑張って足を突っ張って行かないアピールをしたというのに! それなのにリコに手を取られたままズルズルと船に乗らされてしまったのだ。リコは思ったより力があったらしい。誤算だ!

「何を心配しているのかは分からんが、それは杞憂だ。」
「そうですよ。しかし……マロンさんは何が気がかりだったのでしょうか?」
「だ、だって……!」

 かくかくしかじか。私がこの船に対して場違いすぎるのでは、と主な不安を伝えてみた。もしかしたら違う小さな船に変えてくれるかもしれないと淡い期待を持って。すると……

「ぷっ、あはははは!」

 リコの特大の笑い声が聞こえてきた。え、私笑われてるの? 何故? なんか面白いこと言ったっけ?

「そ、そうか……ぶっ、マロンはそ、そんなことを……考えて……ぶふっ……いたとは……」

 昨日からずっと不機嫌そうな声だったジーが吹き出した! と感動する間もなく私の頭をぐしゃぐしゃとかき回される。誰だ誰だ。誰が私の頭をぐしゃぐしゃにしている。もしかしてジー?

「まあ、今の髪の毛具合ならそう思われても仕方ないかもな。」
「ジーがマロンの髪をぐちゃぐちゃにしたのにそう言う?」
「ふん、弄りがいがあるのが悪い。」

 やっぱりジーが私の頭をぐしゃぐしゃにかき回したらしい。多分私の髪の毛はいつも以上にボッサボサだろう。

 というか待って。ジー、私のこと弄りがいがあるって言ったよね? どういうこと? 私、こんなにもしっかり者なのに?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...