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事例 壱 『コウシュ村』
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それ以降にも浅川母が話してくれたことをまとめると、
・死ぬ前日、急に聞いたこともない『コウシュ村』とやらに行くと言い出した
・どこにあるのか分からないけど行かなきゃと急いていた
・その日の夜半、能面のような顔で帰ってきた
・そのまま亡き者に
ということらしい。
まだ安芸くんの家に突撃していないからなんとも言えないが、新情報『コウシュ村』は何か関わりがありそう……?
いや、憶測だけで判断してはいけないからな。手帳にメモを取り、浅川母に感謝の言葉を送ってから浅川家を後にする。
「さて、と。次は安芸家に行くか。」
地図を頼りに、足を進めていく。
…………
安芸くんはどうやら一人暮らしらしく、その住処のアパートを訪ねてみた。が、ウンともスンとも言わず。
本人がいなければ話を聞くこともできなくて、それならと隣人の部屋のインターホンを鳴らしてみる。
「あ、いきなりすみません。お隣に住む安芸くんについてお話を伺いたいのですが……」
「あ、はい。それくらい良いっすよ。と言っても話せるくらいのモノは無いんすけど。」
「それでも構いません。」
そう前置きしてから隣人が話してくれたことと言えば。どうも一昨日から安芸くんの部屋から物音がしないらしい、ということ。
最後に見たのは三日前。フラフラと覚束無い足取りで安芸くんが歩いていたのを見て、心配で声をかけたところ『コウシュ村に行かなきゃ』とうわ言を呟いていた、と。
ここでもコウシュ村、か。どんな漢字を書くのかは分からないが、まずこの村が首吊り病に何かしらの関連があると見て良い……のだろうか?
まあ、二人分の情報でしかないから確かなことは言えないが、心に留めておこうと思う。
「お話、ありがとうございました。」
「ああ、いいよいいよ。」
隣人さんにお礼を伝えてから、一度事務所に帰るか、と歩き始めると、フッと普通の公園が視界に入ってきた。
僕は無意識的に惹かれるようにフラッとそこに立ち寄り、これまた無意識的にベンチに座っていた。
まさか僕が用もなくこんな場所に立ち寄るなんて。自分の行動に自分自身が一番驚いていると、突如として不穏な音が耳を叩く。
ギィ……グゥッ……
紐が軋むような、喉が閉まるような音にナニカを感じ取った僕ははじき出されたように立ち上がり、それの元へと駆ける。
確か右の方から聞こえた。それだけを頼りにキョロキョロと辺りを見回す。そんなに遠くはないはずだ。どこだ、どこだ。
「っ……!」
遠くないだろう、という憶測は正しかったようで、公園を囲うように植えられている木に、それはあった。
僕はそれを見つけた瞬間いつも持ち歩いているサバイバルナイフを懐から取り出して、ロープをギリギリと削っていく。
間に合え、間に合え、と気は急いて仕方がないが、手は確実にロープを切っていく。
「よし切った!」
バツンと切れたロープと共に、ドサッと重いものが地面に落ちる音がした。重いもの、つまり人間の首元を触り、脈を確かめる。
「脈は……ある、けど」
とにかく救急車を呼んで、そして、そして……
僕は慣れたように手を動かしていく。
……
どうやらあの人は一命を取り留めたらしい。その知らせを看護師から聞いて僕はホッと胸を撫で下ろした。
「あの患者さん、最近流行っている首吊り病だったみたいなの。でもあなたのおかげで生き延びた。首吊り病に罹った人間が死なずに済んだ初めての症例ね。これはすごいことだわ!」
罹患者は必ず死ぬと言われていたのを阻止した。それは希望の光となる、とも看護師さんは言っていた。
己の直感が正しかったのだと言われたようで、僕は誇らしく思えた。
・死ぬ前日、急に聞いたこともない『コウシュ村』とやらに行くと言い出した
・どこにあるのか分からないけど行かなきゃと急いていた
・その日の夜半、能面のような顔で帰ってきた
・そのまま亡き者に
ということらしい。
まだ安芸くんの家に突撃していないからなんとも言えないが、新情報『コウシュ村』は何か関わりがありそう……?
いや、憶測だけで判断してはいけないからな。手帳にメモを取り、浅川母に感謝の言葉を送ってから浅川家を後にする。
「さて、と。次は安芸家に行くか。」
地図を頼りに、足を進めていく。
…………
安芸くんはどうやら一人暮らしらしく、その住処のアパートを訪ねてみた。が、ウンともスンとも言わず。
本人がいなければ話を聞くこともできなくて、それならと隣人の部屋のインターホンを鳴らしてみる。
「あ、いきなりすみません。お隣に住む安芸くんについてお話を伺いたいのですが……」
「あ、はい。それくらい良いっすよ。と言っても話せるくらいのモノは無いんすけど。」
「それでも構いません。」
そう前置きしてから隣人が話してくれたことと言えば。どうも一昨日から安芸くんの部屋から物音がしないらしい、ということ。
最後に見たのは三日前。フラフラと覚束無い足取りで安芸くんが歩いていたのを見て、心配で声をかけたところ『コウシュ村に行かなきゃ』とうわ言を呟いていた、と。
ここでもコウシュ村、か。どんな漢字を書くのかは分からないが、まずこの村が首吊り病に何かしらの関連があると見て良い……のだろうか?
まあ、二人分の情報でしかないから確かなことは言えないが、心に留めておこうと思う。
「お話、ありがとうございました。」
「ああ、いいよいいよ。」
隣人さんにお礼を伝えてから、一度事務所に帰るか、と歩き始めると、フッと普通の公園が視界に入ってきた。
僕は無意識的に惹かれるようにフラッとそこに立ち寄り、これまた無意識的にベンチに座っていた。
まさか僕が用もなくこんな場所に立ち寄るなんて。自分の行動に自分自身が一番驚いていると、突如として不穏な音が耳を叩く。
ギィ……グゥッ……
紐が軋むような、喉が閉まるような音にナニカを感じ取った僕ははじき出されたように立ち上がり、それの元へと駆ける。
確か右の方から聞こえた。それだけを頼りにキョロキョロと辺りを見回す。そんなに遠くはないはずだ。どこだ、どこだ。
「っ……!」
遠くないだろう、という憶測は正しかったようで、公園を囲うように植えられている木に、それはあった。
僕はそれを見つけた瞬間いつも持ち歩いているサバイバルナイフを懐から取り出して、ロープをギリギリと削っていく。
間に合え、間に合え、と気は急いて仕方がないが、手は確実にロープを切っていく。
「よし切った!」
バツンと切れたロープと共に、ドサッと重いものが地面に落ちる音がした。重いもの、つまり人間の首元を触り、脈を確かめる。
「脈は……ある、けど」
とにかく救急車を呼んで、そして、そして……
僕は慣れたように手を動かしていく。
……
どうやらあの人は一命を取り留めたらしい。その知らせを看護師から聞いて僕はホッと胸を撫で下ろした。
「あの患者さん、最近流行っている首吊り病だったみたいなの。でもあなたのおかげで生き延びた。首吊り病に罹った人間が死なずに済んだ初めての症例ね。これはすごいことだわ!」
罹患者は必ず死ぬと言われていたのを阻止した。それは希望の光となる、とも看護師さんは言っていた。
己の直感が正しかったのだと言われたようで、僕は誇らしく思えた。
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