怨念がおんねん〜事例 壱【完】〜

君影 ルナ

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事例 壱 『コウシュ村』

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「ええと、あれは一週間ほど前のことです。」

 牧村さんはそう言い置いてから、事情を話してくれた。

 一週間前、同じ大学のオカルトサークルに所属している浅川という男が最近流行りの首吊り病に罹って死んだ。

 そしてその後すぐに浅川の親友、これまた同サークルメンバーの安芸もオカシクなっていった。そしてつられるように自分も寝るたびに悪夢を見るようになった、とのこと。

「ただ単に身近な人間が死んだストレスじゃないのか?」

「こら先生! 言い方!」

「どう、なのでしょうか……でも、浅川くんが首吊り病に罹って亡くなってから、安芸くんも私と同じような悪夢を見るとか、行かなきゃってうわ言を呟くようになったり、とにかくおかしくなっていたんです。だからもしかしたら次は私なのかもって思ったら怖くて、夢も怖くて、もう一睡もできなくて……」

 そこまで言い切って、牧村さんは体を震わせ涙をボロボロ溢した。相当怖い思いをしているのだろうことは容易く想像できた。

「フム、首吊り病、か。……ジョシュアベ。」

「ハイハイ。首吊り病ってのはですねぇ、まだ感染経路だったりなんなり全てが謎の流行り病のことです。何故かそれに罹患した人は皆首吊り自殺するんですって。……ってか、ちょっとでもニュース見れば今どこでもやってますよ。この世間知らずめ。」

 先生のあまりの箱入り娘──あれ、この人、性別どっちだ?──具合に、嫌味が言葉に漏れてしまった。

「それはすみませんデシター。……フゥン、そうか。おい、お前。」

「は、はいっ!」

「ちょっと動くなよ。」

 急に真剣な表情へと変わった先生は、ローテーブルを足蹴りにして──あっ、お行儀悪いっ!──乗り越えて牧村さんの方に歩みを進めた。

【……怨念が、おんねん。】

 そしてそう呟き、フッとナニカを振り払うように手を右から左へ動かした。

 え、先生、牧村さんにナニカが憑いてたの? え、僕には何も視えなかったんだけど。

 と言うのも、あの巫山戯た呟き『怨念がおんねん』は先生が祓う時に用いる文言なのだ。

 本人曰く呟かなくても祓えるらしいけど、面白いから呟くようにしているらしい。天才の考えることはつくづく理解できないと思うのはこういうところだろう。

 ……ああ、話が逸れた。つまり何が言いたいかと言うと、多少視える僕にすら認識できなかったナニカがいたから、先生は今そのナニカを祓ったんだろう。

 だが僕には何も視えなかったんだから、今何が起こったか分からないということ。

 ほら、牧村さんなんて僕よりも何が起こったか分からずポカンと口を開けて呆けてるじゃん。先生、ホウレンソウ、大事よ。

「肩が……重かったんですね。少し楽になりました。」

「フム……だがこれでは祓いきれない、か。」

「……ハァ!? 先生、何言ってんの!?」

 敬語口調が崩れるほど驚くのも無理はない。だってこの人は何もかにもテキトーだが、祓うことに関して言えば天才も天才。これまで僕と仕事をしてきて一度も祓いきれないことは無かった。

 そんな先生が、祓いきれない……?

 そんな危機的状況に僕は冷や汗が滲み、しかし先生はどこ吹く風。スンと澄ました顔で思案していた。
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