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事例 壱 『コウシュ村』
弍拾肆
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部屋を出るタイミングで鳴らされたソレは、まるで俺が贄だと言わんばかりの内容で。
いや、でもそんなはずはない。だって僕はこの村に全く関係のない、普通の大学生なんだから。
そう言いたくても、しかしこの状況がそれを許してくれないらしい。
『ァア、二工、ニえ、に、ニニ二ニニ二ニ……』
部屋を出ると真っ暗な廊下が、そして左側からはそんな不穏な声が聞こえてくる。
人間のものとは思えないソレに、俺は咄嗟に声とは反対の方向、右に走る。
「ァァアアァ、二え、ニ工、アアァ……」
俺は走っている。それも結構全力で。確かに体力は無い方だが、それでも遅すぎるわけではないはず。
それなのに、背後の声を振り切ることが叶わない。ずっと同じ距離感で贄贄と囁かれる。
「階段っ!」
とにかくこの建物にいてはいけない。そう直感した僕は下へ、一階へと向かう。
「っ!」
しかし、一階分、つまり三階(仮)に降り立ったところで、下に向かう階段からこちらに向かって上ってくるナニカの存在に気がついた。
ヒタ……ヒタ……と聞こえてはいけない類いの足音が聞こえたのだ。
(仕方ないっ)
階段を降りるのを諦め、三階(仮)を走ることにした。もしかしたら別のところから降りられるかもしれないから、と。
全然この建物を把握していない中でのソレは、一種の賭けのようなものにすら感じた。
タタタっと残り少ない体力を振り絞って、上がった息をどうにか宥めながら、命第一を掲げてとにかく走る、走る、走る。
しかし体力は減る一方。どうにか息を整えたいと適当な部屋に転げ入り、ちょうどいい具合に備え付けられたロッカーに入ることにした。
息を殺しつつ呼吸を整える、という相当大変なコトを成しつつ、ドアに付いているサッシから部屋の中を窺う。
ヒタ……ヒタ……ニエ……
ヒタ……ニエ……ヒタ……
階段を上がってきた足音と、背後から聞こえた声が重なって部屋に響く。姿はよく見ないと察知できないようだから、敢えて『見ない』選択をとった。ほら、姿を見て恐怖で声を上げたり失神してもいけないから。
ビビリ、舐めんな。
そう心を強く持ち、早く出ていけと願うのだった。
いや、でもそんなはずはない。だって僕はこの村に全く関係のない、普通の大学生なんだから。
そう言いたくても、しかしこの状況がそれを許してくれないらしい。
『ァア、二工、ニえ、に、ニニ二ニニ二ニ……』
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「ァァアアァ、二え、ニ工、アアァ……」
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「っ!」
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ヒタ……ヒタ……と聞こえてはいけない類いの足音が聞こえたのだ。
(仕方ないっ)
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息を殺しつつ呼吸を整える、という相当大変なコトを成しつつ、ドアに付いているサッシから部屋の中を窺う。
ヒタ……ヒタ……ニエ……
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