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44 マリーの独白(最終話)

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 私は今世でも前世でも、周りの人間から『陽だまりのような癒し』という位置づけをされていた。

 もちろんそれは悪いことでもない。皆さんから好かれ、争い事も私の周りでは少ない方。平和、とはまさにこのことなのではないかと思う。



 しかしその反面で、私の『イメージ像』が一人歩きしていく。


「陽だまりのような癒し的存在」


 そのイメージ像に私自身が縛られて、失望されたくないとイメージ像通りに振舞ってしまう。

 そしてそのことでまたイメージ像は勝手にどこかへ歩いていく。その繰り返し。







 本当の私は顔を出すことなく、ずぶずぶと沼の底に堕ちていく。表面だけが良い、薄っぺらい人間になってしまったと自分でも思ってしまう。


 自分の首だけがギリギリと締まっていく。

 沼の底に堕ちていく。




 苦しい

 辛い

 心から笑えない











『誰か助けて……』





















 そんなこと、何度思ったか。誰にも相談など出来ないし、失望されたらと考えるとそんなことも出来ず。一人部屋の中で泣いたこともあった。
















 だから前世でも今世でも私は独りなのだと思っていた。本当の私が顔を出したらきっと失望される。それだけは怖くて避けたかった。それなのに……

「貴方だけは……繕わない私を見ても傍にいてくれました……」

 そのことが私にとってどれくらい救われたか、ラル様は分かっているのだろうか。

 笑顔のまま一粒の涙が零れ落ちた。

「もちろんだ。笑顔のひまりも、そうじゃないひまりも、愛しくて仕方ないからな。」

 ふっとラル様の口元が緩む。それを見てまた一粒涙は零れた。


「だからもう、これは必要ないな? 私といる時はこんなもの要らない。」
「え?」

 そう言ってラル様は私の顔に貼り付いているものを剥がす。


 カラン……



 私の笑顔という仮面はラル様が外し、そしてそれはそのまま地面に落ちていったのでした。


end
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