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40 豊永 ひまり(3)
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※暗いの注意
※ 他作品の独白の章が始まりました。(宣伝)
─────
次に気がついた時には、私は歩道橋を一人で歩いていました。通学路でしたからね。
あれ、これは前世の時の私……。では今までのマリアルモンテ・ヒダンの記憶がもしかして白昼夢だったのでしょうか……?
「陽だまりさん?」
「え? ……あ、──さん!」
私の口は勝手に動きます。この人のこと、私は知らないのに。
「奇遇ですね。途中まで一緒に歩いてもいいですか?」
「もちろん。」
見知らぬその人と二人並んでお喋りしながら歩き、後は歩道橋を下るだけ。そんな時、この方はニヤリと笑いました。
「──さん……?」
何故そのような表情をするのか不思議で、私はポケラっとしてしまいました。
ドン、
一瞬だけ殺気を感じたと思ったら、時すでに遅し。この方に背中を押されていました。
ここは階段。押されればどうなるかなど、小さな子でも分かるでしょう。
ガラガラと階段から落ち、そのまま意識を失ったようです。
クラインさんに突き落とされた白昼夢を見ていたのは、この出来事のせいでしょうか。
そこで場面は切り替わり、次は学校にいました。階段から落ちたのは事故と処理され、私は記憶を失ってしまっていました。
桑さんと名乗る友達は、あんなことがあった後で陽だまりが心配だからと、どこに行くもずっと連れ添ってくれました。
そんな日常が普通になってから幾ばくかして。桑さんは私をとある一室に連れて行きました。
そこは誰かのお家らしい場所で。勝手に入ってもいいのかと心配しましたが、桑さんが大丈夫だと言ったのでそれを信じることにしました。
靴を脱ぎ、桑さんに引っ張られてリビングらしき場所にやってきました。ソファに座ってて、と言われたのでその通りに。桑さんはまた違う部屋に入っていってしまいました。
数秒で戻ってきた桑さんは、誰かを連れて出てきました。
その人は知らない人なはずなのに、ひまりの心臓はドクンドクンと嫌な音を立てます。
「ねえ陽だまり、この人は記憶をなくす前にお世話になっ……」
「あ……ああ……」
桑さんの話はちっとも耳に入ってこない。頭が痛い、息が吸えない、心臓の音が煩い……
笑顔のことなんて、この時頭には一ミリもありませんでした。
走馬灯のように私は思い出してしまいました。桑さんに連れられて行ったあの場所のこと、そこで出会ったこの人に階段から突き落とされて……
「テラー、さん……!」
ニヤリ、あの時と同じ笑みを浮かべたテラーさんは、その手に包丁を持っていました。
「ああ、思い出してしまいましたか……」
「え! 陽だまり思い出したの!?」
「ああ、ああ、あの人に……私は……突き落とされて……!」
「え……? テラーさんに……?」
「ああ、そこも思い出してしまったのですね。それなら仕方ありません、死んでもらいましょうか。」
桑さんもこの異様な空気に気付いたらしいです。ガチガチと体を震えさせていました。
「ああ……あああ……!」
私が最期目に映したのは、包丁の輝きと私の身から出た赤でした。
※ 他作品の独白の章が始まりました。(宣伝)
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次に気がついた時には、私は歩道橋を一人で歩いていました。通学路でしたからね。
あれ、これは前世の時の私……。では今までのマリアルモンテ・ヒダンの記憶がもしかして白昼夢だったのでしょうか……?
「陽だまりさん?」
「え? ……あ、──さん!」
私の口は勝手に動きます。この人のこと、私は知らないのに。
「奇遇ですね。途中まで一緒に歩いてもいいですか?」
「もちろん。」
見知らぬその人と二人並んでお喋りしながら歩き、後は歩道橋を下るだけ。そんな時、この方はニヤリと笑いました。
「──さん……?」
何故そのような表情をするのか不思議で、私はポケラっとしてしまいました。
ドン、
一瞬だけ殺気を感じたと思ったら、時すでに遅し。この方に背中を押されていました。
ここは階段。押されればどうなるかなど、小さな子でも分かるでしょう。
ガラガラと階段から落ち、そのまま意識を失ったようです。
クラインさんに突き落とされた白昼夢を見ていたのは、この出来事のせいでしょうか。
そこで場面は切り替わり、次は学校にいました。階段から落ちたのは事故と処理され、私は記憶を失ってしまっていました。
桑さんと名乗る友達は、あんなことがあった後で陽だまりが心配だからと、どこに行くもずっと連れ添ってくれました。
そんな日常が普通になってから幾ばくかして。桑さんは私をとある一室に連れて行きました。
そこは誰かのお家らしい場所で。勝手に入ってもいいのかと心配しましたが、桑さんが大丈夫だと言ったのでそれを信じることにしました。
靴を脱ぎ、桑さんに引っ張られてリビングらしき場所にやってきました。ソファに座ってて、と言われたのでその通りに。桑さんはまた違う部屋に入っていってしまいました。
数秒で戻ってきた桑さんは、誰かを連れて出てきました。
その人は知らない人なはずなのに、ひまりの心臓はドクンドクンと嫌な音を立てます。
「ねえ陽だまり、この人は記憶をなくす前にお世話になっ……」
「あ……ああ……」
桑さんの話はちっとも耳に入ってこない。頭が痛い、息が吸えない、心臓の音が煩い……
笑顔のことなんて、この時頭には一ミリもありませんでした。
走馬灯のように私は思い出してしまいました。桑さんに連れられて行ったあの場所のこと、そこで出会ったこの人に階段から突き落とされて……
「テラー、さん……!」
ニヤリ、あの時と同じ笑みを浮かべたテラーさんは、その手に包丁を持っていました。
「ああ、思い出してしまいましたか……」
「え! 陽だまり思い出したの!?」
「ああ、ああ、あの人に……私は……突き落とされて……!」
「え……? テラーさんに……?」
「ああ、そこも思い出してしまったのですね。それなら仕方ありません、死んでもらいましょうか。」
桑さんもこの異様な空気に気付いたらしいです。ガチガチと体を震えさせていました。
「ああ……あああ……!」
私が最期目に映したのは、包丁の輝きと私の身から出た赤でした。
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