笑顔の仮面は外れない〜陽光の私と月光の貴方〜 【完結】

君影 ルナ

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37 ヒダマリ

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 ラル様に涙を見せてしまって数日が経ちました。あれからラル様と顔を合わせることはなく、私は今、次に会った時どんな顔でいればいいか悩んでいます。あ、もちろん笑顔は健在ですよ。

 本当どうしましょう。笑顔以外の表情を他人に見せてしまったのはラル様が初めてなので、どうすればいいか分からないのです。

 第二図書館にもあれ以来行き辛く、どうしようかと学園内を彷徨っています。あの場所にはエウロパ先生がいますからね。

「ちょっと悪役令嬢!」
「はい。」

 ラル様のことを考えていると、あの子の声が。ああ、こちらの問題も解決していないのでした。はあ、胃に穴が開きそうです。

「あんたのせいで月光様から余計避けられるようになっちゃったじゃん! どうしてくれるのさ!」
「私に言われても……」

 クラインさんの言動にも問題がありそうですが、それを指摘すると多分文句が三倍になって私に返ってくるのでしょう。ああ、どうすれば。

「取り敢えずマナーを学ぶことをお勧めします。」

 やんわりと言ってみますが……

「はあ? あたしはヒロインなのよ! この世界の中心はあたし。だからそんな面倒くさいことなんてやらなくてもハッピーエンドは待っていてくれるの!」

 ああ、この方には何を言っても無駄なのだと理解しました。さて、どう

「陽だまり様を侮辱するのはあなたですの?」
「私達が黙っているとお思い?」

 周りで傍観していた皆様が私の前に立ちはだかり、クラインさんを責め立て始めました。

 ああ、これはいけません。平和的に行きましょう。

「皆様、私の問題です。大丈夫ですから、その辺で……」
「いいえ、陽だまり様! 一度この方にはキツく言っておかないといけませんわ!」

「ちょっと! だからこいつは陽だまりなんかじゃないって言っているでしょ! 陽だまりは、陽だまりは……」
「クラインさん、その話を詳しく教えてくださいませんか?」

 クラインさんが私を目の敵にする理由の一つが、多分私が『陽だまり』と呼ばれているからなのではないでしょうか。

 そう思ってクラインさんに聞きますが、しかしクラインさんはキッと私を睨むだけで、その場を離れていってしまいました。

「ふん、私達の陽だまり様を侮辱する者は誰として許しませんわ!」
「そうですよ!」

 ああ、前世の時はここまで周りの方々は攻撃的ではありませんでした。どうコントロールしていけばいいでしょう。

「皆様、ありがとうございます。ですが私は大丈夫ですよ。怒っていませんから。」
「まあ! なんとお優しいんですの!」
「それでこそ陽だまり様ですわ!」
「あ、あはは……」

 愛想笑いしか出来ませんでした。
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